限界説吹き飛ばす圧勝復活劇

観(み)る側というものは、常に勝手なものです。

記者などは、勝手の際たるもので、勝利を期待する一方、その裏には、負けるときはどんな負け方をするだろうか、という期待? もあり、そんな理不尽な目で展開を見ることがクセになってしまっています。

7月15日にマレーシアの首都クアラルンプール(アシアタ・アリーナ)で行われたプロボクシングWBA世界ウエルター級タイトルマッチ。(試合は7月15日午前11時からWOWOWが生中継)。同級王者ルーカス・マティセ(35=アルゼンチン)に挑戦した元6階級制覇王者マニー・パッキャオ(39=フィリピン)についても、まさにそんな目が纏(まつ)わりついていました。

昨年7月2日、ブリスベン(オーストラリア)で開催されたWBO世界ウエルター級タイトルマッチで同級王者のパッキャオは、母国オーストラリアの同級1位ジェフ・ホーンの挑戦を受け、完全アウエーの中で判定負け(0-3)を喫しました。

今回のマティセ戦は、以来1年ぶりとなりましたが、パッキャオの周辺には、煩雑を極めて練習もままならない状況を強いられる上院議員としての活動があり、加えて年末には40歳となる(1978年12月17日生まれ)年齢的なものもあり、スーパースターの名声は失わないにしても、引退の2文字は試合ごとについて回る情勢にありました。

2016年4月には一度、引退を表明している(4カ月後の8月に撤回)だけになおさらです。

それが・・・凄い試合を見せてくれましたね。

マティセは今年1月27日にWBA世界ウエルター級王座決定戦に勝ち、WBC世界スーパーライト級王座に続き2階級制覇を達成。82パーセントという高いKO率を武器に新王者としての勢いがあります。

パッキャオの有利は動かせないにしても、ひょっとしたら“かなりヤバい”の見方も少なからずありました。

そんな中でパッキャオは、どんな戦い方をしたでしょうか。ちょっと振り返ってみます。

9年14試合ぶりに挙げたTKO勝利

試合開始のゴングが鳴った直後から、パッキャオの先手を取った攻めの姿勢が目を引きます。調子がよさそう。

サウスポーの右ジャブから左、のパターンで“圧”をかけ、マティセはいきなり、後退せざるを得ない苦しさに追い込まれました。

戦前の予想は、体格とパワーに勝るマティセの“圧”に、パッキャオは横への動きを強くするのでは? などがありましたが、まったく逆のパターンとなり、主導権を握ったパッキャオの攻めが続きます。

3回、右から攻め込み、それに続く突き上げる左アッパーが命中してマティセはダウン。5回には、右フックがテンプルをとらえ、マティセは2度目のダウンを喫しました。

いやはや・・・これはもう、引退を囁かれるような選手の動きではありません。試合を中継するWOWOWの解説を務めた元世界王者の浜田剛史氏(帝拳代表)は、こう評価しました。

〈2人とも正面からぶつかるタイプなのでKO決着は予想していた。が、一方、勝者と敗者が逆の結果もあると思っていた。パッキャオはそうしたものを覆し、やりたいことが全部やれていましたね〉

ゲストで招かれた元WBC世界バンタム級王者・山中慎介氏も「あれほど動けるとは・・・。しっかりトレーニングを積んできている。絶好調でしたね」と感心していました。

決着は7回でした。反撃のきっかけをつかめずに戸惑うマティセにパッキャオは、容赦なく左アッパーを見舞い、7回2分43秒、TKO勝利に結びつけました。

パッキャオのKO勝利は、2009年11月14日のミゲール・コット(プエルトリコ)戦=12回TKO勝ち=以来、9年14試合ぶり。近年、KO勝ちが影を潜めていたことも、限界→引退、の色を濃くしていましたが、このマティセ戦は、そんな印象を払拭する圧勝復活劇となりました。

試合直後のインタビューでパッキャオは、まず「この勝利をフィリピン国民に捧げたい」と語り、その後「チームが私を支えてくれた。戦略通りに戦えた。KO勝ちはボーナスみたいなもの」と続けました。

負ければ引退の可能性もあった中、会場を埋めた1万6000人観衆(主催者発表)を熱狂の渦に巻き込む、これだけの試合を“魅せた”パッキャオは、やはりスーパースター、フィリピンの英雄でした。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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