悲喜こもごもの有明での世界戦5連発

東京・有明コロシアムを舞台に5月20日の土曜日、翌21の日曜日と2夜連続で行われたプロボクシングの世界戦5連発-。

私も連日、足を運びましたが、ボクシングの取材というものは、試合を含めて周辺に漂う緊張感に記者も巻き込まれ、やはり2日連続というのは結構、体にこたえますね。

今回は特に2012年ロンドン五輪ボクシング(ミドル級)金メダリスト・村田諒太(31=帝拳)が臨んだWBA世界ミドル級王座決定戦で不可解判定による敗戦! という出来ごとがあり、それが記者たちをグッタリさせていました。

何しろ、村田が勝てば“歴史的出来ごと”ということで、新聞各社は試合の途中、村田有利の情勢に“こりゃ、勝つぞ!”と紙面大展開の準備を開始・・・が、最後の最後に予想外のどんでん返しとなってしまったのですから皆、ガックリです。

2夜目の21日、プレスルームの雰囲気は、どこか沈んでいて元気がなく、いつもは記者連中の雑談でにぎやかな声も聞かれず、静かな中に疲労感だけが漂っている感じでした。

村田の結末に関しては、ボクシング・ファンの皆さん、思い出しませんか? そうです。逆パターンですが、2006年8月2日、神奈川・横浜アリーナで行われたファン・ランダエタ(ベネズエラ)vs亀田興毅(当時19=協栄)のWBA世界ライトフライ級王座決定戦です。

亀田興とダブるエンダム勝利の不可解判定

この試合、初回に亀田がダウンを喫し、その後の反撃もポイントが奪えない状態ながら、出された判定は、亀田が新王者となる不可解判定の勝利を得ました。

ジャッジの採点は、1人が115-112でランダエタを支持、2人が114-113、115-113で亀田を支持した2-1の微妙判定。まあ、この採点は少差ということでまだ、救いもありましたが、今回のようにエンダムを支持した2人の採点が116-111、115-112、村田を指示した1人の採点が117-110とともに大差となっていては、いったいWBAのジャッジはどこを見ているの? どういう教育を受けているの? とあきれてしまいます。

今回の不可解判定に対して、WBAのヒルベルト・メンドサ会長が、自身がつけた117-110で村田勝利の採点表を公表して謝罪、ダイレクト・リマッチ(直接再戦)を行うよう指示を出しましたが、まったくWBAは何をやっているんだ! 命がけでリングに上がっている選手がかわいそうだろ、と非難したくなってしまいます。

まあ、そんなことがあって、何かの文句ではありませんが「事件は常に現場で起きる」ことが実感されます。

激闘王のIBF世界ライトフライ級王者・八重樫東(大橋)が、何もしないまま、1回に3度のダウンを喫し、わずか2分45秒でTKO負けしてしまったことも、拭い切れない重い雰囲気に輪をかけてしまいましたが、そんな暗雲を吹き飛ばしてくれたのが、やはり、WBO世界スーパーフライ級王者、日本のエース・井上尚弥(24=大橋)の進化し続ける強さでした。

相手がランク2位の指名挑戦者リカルド・ロドリゲス(米国)であっても、もはや、井上の敵ではなく3回、左2発でケリをつけ、5度目の防衛に成功。秋に予定される米進出に向けて弾みとなる勝利を挙げました。

東京・有明の熱い2日間。世界戦5試合の結果は〈3勝2敗〉となりました。

その中で村田が、今後に向けてどんな決断を下すのか、それだけが気になるところです。
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歴史的勝利へカギ握る左ボディー

いよいよ“そのとき”が来ましたね~。

果たして歴史的快挙は達成されるのでしょうか。

5月20日の土曜日夜、東京・有明コロシアムで開催されるプロボクシングのトリプル世界戦-。メーンのWBA世界ミドル級王座決定戦で同級1位(暫定王者)のアッサン・エンダム(33=フランス)と激突する同級2位で2012年ロンドン五輪ボクシング(ミドル級)金メダリスト・村田諒太(31=帝拳)です。

2013年4月のプロデビュー戦から約4年。プロ13戦目での世界挑戦。村田が五輪金メダリストだけに、この年月については「やっと来たか」「長かったのでは?」などの声が聞かれていましたが、元世界王者で帝拳プロモーション代表の浜田剛史氏は「遅くはないですね。むしろベストの期間。20代の選手だったら5年はかけたいところです」と話しました。

世界のミドル級は、とにかく層が厚い、強豪が顔をそろえている、だから五輪金メダリストといえど日本人選手がこの渦の中に入っていくことは難しい、と言われます。

浜田氏は「タイトルマッチで勝つ勝たないより、それ以前にタイトルマッチにたどり着くこと自体が難しい」と言います。

その意味で、村田がその機会を得たことは、運にも恵まれた、と言えるのでしょうか。

その運を生かせるかどうか-。

日本人選手がミドル級に挑む難しさ

相手のエンダムは過去、暫定を含めて3度の世界王者経験がある、侮れない選手です。

村田陣営や記者の視線を浴びて行った公開練習でも、隠すことは一切せず、こういう練習を行ってきたんだろうな、という内容を堂々と見せていました。

スピードがあり、フットワークがあり、手数もあり、前進してプレッシャーをかけてくるだろう村田の戦い方を予測して、下がりながらのアッパー、ショート連打、ロープを背にして体の入れ替え、などを重点的に練習していました。

エンダムが言います。

〈ありとあらゆるトレーニングをしてきたよ。村田も私を想定したパートナーと練習してきただろうが、私と同等のパートナーは見つからなかったのではないかな。なぜならエンダムは一人だけだからね〉

このエンダムに対して村田の戦法は、浜田氏によると、序盤はポイントを取られてもいいから、まず相手のスピードに慣れること、スピードに慣れた中盤以降は距離を詰めて攻め込みたい、そしてロープに詰めて打ち合うことが出来れば面白くなる・・・と概略、こんな戦略でした。

そこでカギを握るのが、相手の動きを止める〈左ボディー〉と当たれば倒れる〈切り札の右〉となりますね。

まあ、ボクシングは何が起きるか分からず、勝負は終わってみなければ、といったところですが・・・。

日本人選手のミドル級世界挑戦は過去、5人が7試合を行っていますが、1995年12月に竹原慎二(沖)が戴冠後、翌1996年6月の初防衛戦で敗れ、それ以降は5連敗と日本人選手にとっては遠いタイトルとなっています。

五輪金メダリストの村田が、プロの世界でも頂点に立てば、日本人初の歴史的快挙となります。

さて・・・結果はどう出ることでしょうか。

村田の相手・エンダムはどうだ?

2012年ロンドン五輪ボクシング(ミドル級)金メダリスト・村田諒太(31=帝拳)が、プロボクシングWBA世界ミドル級王座決定戦(5月20日=東京・有明コロシアム)で激突する同級1位のアッサン・エンダム(33=フランス)はどうでしょうか。

公開練習が行われる5月15日午後1時-。帝拳ジム(本田明彦会長=東京・新宿区神楽坂)に足を運びました。

エンダムは、2日前の5月13日に来日。日曜日の5月14日は時差ボケの解消に務め、この日の練習前の会見では「(時差ボケは)もう心配ない。いいコンディションで来ているよ」と穏やかな笑顔で話しました。

ちょっと驚いたのは、受け答えをちゃんと英語で話し、紳士的な態度を終始、崩さなかったことです。生まれ故郷のカメルーンでは「貧しくて楽な生活ではなかった」と振り返り、それが「自分の今の強さを生んでいるよ」と話しましたが、そうした中でしっかりと自分を律する生活を保っていたのだろうことがうかがえる対応を見せました。

公開された練習は、トレーナーとのミット打ちが中心でしたが、接近して細かい連打、あるいは後退しながらのショート連打、が目を引きました。

視察していた元世界王者の浜田剛史氏(帝拳プロモーション代表)に聞いてみました。

-村田が前に出てくることを想定しての練習でしょうか?

浜田氏「ウ~ン、それもあるかもしれませんが、だいたい、いつも、あんな感じの練習のようですよ」

KO負けしないやっかいな相手

村田陣営は、エンダムをスピード、フットワーク、一発より連打の選手、と受け止めており、浜田氏は、序盤に多少、ポイントを取られてもいいから、スピードに慣れること、中盤以降、プレッシャーをかけて自分の距離をつくり、ボディー打ちで動きを止めたい、序盤に懸かるウエートは大きいですね、としています。

まあ、そうはいっても、なかなか作戦通りにはいかないのがボクシングです。

村田の印象を聞かれたエンダムは、前の試合を観たが、前に出てくるタイプで右パンチが強いね、すべて対応はできてるよ、と余裕を見せていました。

エンダムは、37戦35勝(21KO)2敗の戦績ですが、KO負けがない選手です。

浜田氏が面白いことを言いました。

〈エンダムは、パンチを受けて、ムリせずにすぐに倒れる選手なんですよね。普通は倒れまいと頑張って立ち、次々に打たれてダメージを受けますが、すぐ倒れるから最小限のダメージしか受けず、回復も早い。それがKO負けのない理由です〉

なるほど。初黒星を喫したときの試合は、6度も倒されながらKOされず、判定負けに持ち込んだことが話題となっていましたっけ・・・。

エンダムが言いました。

〈いい試合になると思うよ。彼(村田)と私の試合だからね。ただ、私がリオ五輪に出たとか、彼がロンドン五輪に出たとか、金メダルを獲ったこと、とかはリスペクトするが、それらはすべて過去のことだ。今度の試合がどうかということ。今、対戦することが重要だと思っているよ〉

さすがに元WBO世界同級王者。言葉に重みがあります。

来日のとき、そしてこの日も「私が倒れるときは死ぬとき」と繰り返しましたが、まあ、全体的な印象としては、自信満々の様子。当たり前のことですが、楽な相手ではないなァ、ということでした。

“モンスター”のV5戦にも注目!

5月20日(土曜日)&21日(日曜日)の2日間で計6試合の世界戦(いずれも東京・有明コロシアム)を行うプロボクシング界ですが、そんな中、WBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(24=大橋)の5度目の防衛戦もまた、見逃せないタイトルマッチのひとつでしょう。

初夏というより、何かもう真夏の暑さとなった5月12日午後2時-。

井上が公開練習を行う大橋ジム(大橋秀行会長=神奈川県横浜市西区)に足を運びました。

窓を締め切ったジム内は、入ったとたんに汗がにじみ、次第に流れ出すほどの暑さです。その中で「あと4キロ」という井上が、汗出しのウインドブレーカーを着込んで軽快な動きを見せていました。

現在のスーパーフライ級(リミット52・16キロ)では減量がきつくなり、ぼちぼち1階級上のバンタム級(リミット53・52キロ)に上げる時期が近づいているようですが、その分、パワフルでパンチ力が相当アップしていることを感じさせます。

その証拠にミット打ちの相手を務めていたトレーナーの父親・真吾さんの右手首には包帯が巻かれ「使いものにならなくなりました」(真吾さん)と苦笑い。代わってミット打ちの相手は、弟の元東洋太平洋スーパーフライ級王者・拓真が務めていました。

パワーアップに関して井上は、合宿の成果、を口にしました。

試合の1カ月前となる4月17日、井上は静岡・熱海でミニ合宿をスタートさせました。1カ月前の合宿は“異例”ともいえましたが、そこで重点的に行った下半身強化や体幹を鍛える基礎的なトレーニングが、全体的なパワーアップを生んでいる、とのことでした。

今秋米進出・・・ロマゴンの動向は?

今回の5度目の防衛戦の相手は、同級2位のリカルド・ロドリゲス(米国)ですが、年内にWBC世界同級王者の“ロマゴン”ことローマン・ゴンザレス(ニカラグア=帝拳)と戦える可能性があった矢先、ロマゴンの敗戦で大目標が消えてしまい、井上のモチベーションはどうなのだろうか、と思い、大橋会長に聞いてみました。

-「まさか、ロマゴンが負けるとは思いませんでしたが、目標を失った井上君の気持ちはどうでしょうか?」

大橋会長「やっぱり最初はね。びつくりしました。でも今はもう、気持ちを切り替えていますよ」

-「団体が多くなり、王者も増え、ただ防衛戦をすればいい、という時代ではなくなっていますね。内容が問われ、相手選びが難しくなったのでは?」

大橋会長「確かに難しくなりましたね。まあ、今回の相手はランク2位の選手で指名防衛戦ですから、安易な相手ではないのですが、ロマゴンなど求める目標が高くなってきていますからね。そのあたりがファンの皆さんにとっては、どうなんでしょうか」

実は・・・といって大橋会長は、IBF世界同級王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)と統一戦を行う交渉が“あと一歩”まで行きながら流れてしまったことを明かし、井上の強さを含めて、だんだん相手探しが難航しつつある現状を示してくれました。

-ところで“前王者”となったロマゴンが、井上に挑戦したいと言って来たらどうしますか?

大橋会長「そりゃ、大歓迎ですよ。文句なし! に受けますよ

井上陣営には、今秋9月に米国で試合をしないか、とのオファーが届いており、米進出を視野に入れています。そこでロマゴンが絡んできたりすると、井上を取り巻く今後の展開が一気に風雲急を告げそうです。

まずは目の前の敵、ロドリゲスを文句なしに片づけて「次!」といきたいところですね。

プロの世界でも“金”に届くか?

プロボクシングのトリプル世界戦(5月20日=東京・有明コロシアム)-。

メーンのWBA世界ミドル級王座決定戦に臨む2012年ロンドン五輪ボクシング(ミドル級)金メダリストでWBA同級2位・村田諒太(31=帝拳)の仕上がり具合はどうだろうか? と気になります。

・・・ということで5月9日午後1時、所属する帝拳ジム(本田明彦会長=東京・新宿区神楽坂)で行われた公開スパーを見てきました。

さすがですね~。五輪金メダリストの世界挑戦。それもミドル級という重いクラスの世界殴り込みとあってジム内は新聞、雑誌、テレビなど各メディア関係者約80人が集まり、体が汗ばむほどの熱気に包まれました。

軽い準備運動の後、スパーリングの前に村田は浜田剛史氏(帝拳プロモーション代表)と並び、報道陣と一問一答。浜田代表の「最高の仕上がりができている」との報告を受けて村田も「いいコンディションで来ています。いいときも悪いときもあったが、最終的には順調! といえます」と頼もしいコメントを口にしました。

その後、スパーリング・バートナーのパトリック・デイ(米国)と2Rのスパーを公開。トレーナーとのミット打ちなどを消化して一段落すると、報道陣の囲み取材も受け、そうしたことを面倒がらず、嫌がらず、ニコやかにやっている姿が印象的でした。

決戦まで2週間を切ったこの時期、減量も含めて一般的にはナーバスになるときです。大勢の報道陣に囲まれての取材など、できれば避けたいところだと思います。しかし、村田は表向き、まったく苦にしない様子でこなしているんですね。これは凄いことです。

そうした出来事に接するにつけ、村田という男は、常につきまとっているはずの「重圧」をどう受け止めているのだろうか、と考えてしまいます。

五輪金メダリストという肩書を背負ってのプロ入り。デビュー戦でいきなり組まれた東洋太平洋ミドル級王者との対戦(2回TKO勝利)。いつ世界に挑むんだ、という周囲の注目を浴びながら、負けられない一戦一戦を乗り切って12連勝。

「ここまで“最高の仕上がり”です」

浜田代表といろいろ話しているとき、試合の際の村田の入場する姿が話題となりました。

浜田代表が言います。

〈試合を待つ控室での緊張が、そこを出て歩いてリングに上がる直前にピークに達するんですね。でも、村田はたいてい、そこでファンに笑顔を見せているでしょ。それは私の時代には考えられなかったことです〉

そういえば私も、帝拳ジムのマネジャーを長い間務める長野ハルさんから、選手はね、あそこで一番、緊張するから、言葉をかけるときなど気をつけて下さいね、と言われたことを覚えています。

WOWOWのボクシング番組「エキサイトマッチ」にときどき、ゲスト解説者として登場する村田ですが、彼のコメントを聞いていると、冷静な分析力に秀でているなァ、という感想を持ちます。

その分析力は自分自身にも向けられ、これは私の想像ですが、重圧で緊張している自分を第三者の目で見ているもう一人の自分がいて、第三者の自分は、緊張している自分を、お前、何やってんだよ、とからかい、そうした状況を楽しんでいるのではないか、と思います。

村田がもし、そういうことができているとしたら、アッサン・エンダム(33=フランス)との王座決定戦は面白いことになりそうですね。

エンダムはスビートの選手ですが、戦う村田を第三者の村田が、おいおい、そうじゃないだろ、まずボディーで動きを止めろよ、などと冷静な指示を与えることになるかもしれません。

そういえば公開した2Rのスパーでは、足を使ったパートナーのデイを追いかけ、後半は一気に距離を詰め、左ボディー、KOパンチの右を叩き込む姿が光っていました。第三者の村田が指示を出したのかもしれませんね。

果たして歴史的な快挙は達成されるのか?

5月20日は、こちらのほうが緊張しまくってしまいそうな気配です。
プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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