山中に“想定外”の秘策あり!

記者の質問-。

-王者になって(環境が)変わりましたか?

「そうだね。(2階建ての)家と車を買ったよ。経済的レベルが上がったかな」

-どんな車を?

「(米高級車の)シボレー・タホ」

-今回また勝ったらどうしますか?

「家をもう一軒、買おうかな」

何とも景気のいい話ですが、この男、プロボクシングWBC世界バンタム級王者・ルイス・ネリ(23=メキシコ)です。

前WBC世界バンタム級王者・山中慎介(35=帝拳)との再戦(3月1日=東京・両国国技館)を前に2月22日午後、ネリが帝拳ジム(本田明彦会長=東京・新宿区神楽坂)で練習を公開するというので足を運びました。

練習前に行われた記者会見でのやりとりが、これ、ですが、王者となったネリは、まさに鼻高々、23歳の若さもあって、自信の塊のようになって日本に戻ってきました。

昨年8月の王者・山中の13度目の防衛戦。無敗のチャレンジャー、ネリは勢いに乗って攻め込み、4回、猛攻を仕掛けました。

山中はロープに詰まって防戦一方となり、ここでトレーナーがタオルを投げ入れるとともにリング内に入り、レフェリーが試合を止めて、山中の4回TKO負けとなりました。

再戦に向けてのネリは、この4回の攻防がまだ、頭の中に鮮明に残っているようです。

豪語のネリは自信のKO宣言

-山中の弱点は?

ネリ「山中は質のいいボクサーだが、いくつか弱点はある。プレッシャーに弱いのが、そのひとつかな」

初戦での4回、ネリの前進に山中が棒立ちとなり、その圧力に「(山中は)何もできなかった」(ネリ)ことがこのコメントを生み、ネリを勢いづかせています。

まあ、ネリがその部分に優位を求めるのは、別に問題はありません。が、再戦に向けて山中陣営に話を聞くと浜田剛史氏(帝拳代表)は、その点はしっかり反省しつつ、なぜそうなったかを分析、ネリが同じ攻め方をしてきても、それを想定内として対応する戦法はすでに出来上がっている、と話していました。

とすると・・・今回の山中は、激しい打ち合いを覚悟しているのかも知れません。ネリは恐らく序盤から飛び出してくるだろうし、受けて立つ山中は、あるいは頭を付けて打ち合うインファイトも辞さず、の構えでいるのかもしれませんよ。

“面白い”といっては、新旧王者2人に申し訳ありませんが、お互い、手の内を知り尽くした再戦という難しい戦いにあって、何をどうするか、はまず、相手がエッ、こんなはずじゃなかった、と戸惑うような戦い方をすることでしょう。

ネリが、山中の印象を「確かに左は強い。油断しないようにしないと・・・。でも、右は強くなかった」と話していましたが、山中陣営は、そうしたイメージに当てはまらないような戦いを目論んでいるのではないか、という感じを浜田氏との雑談の中で感じました。

ネリが言いました。

〈判定までは行かないだろう。KO決着になるだろうね。1回でも10回でも12回でも、勝つのはオレ。オレは全力で勝ちに行くよ〉

まあ、ネリの豪語は、とりあえず聞いておきましょう。今は王者なのですからね。

それにしても、ネリ陣営は今回、総勢13人の大軍団で来日しました。

王者の勢いを誇示している感じですが、対する山中陣営は、もう少しの間“我慢”といったところです。
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“遠回りの男”に戴冠させたい

プロボクシング界の目下の注目は、3月1日(東京・両国国技館)に行われるWBC世界バンタム級タイトルマッチですね。

現王者ルイス・ネリ(23=メキシコ)vs前王者・山中慎介(35=帝拳)の再戦。山中から王座を奪って山中との初防衛戦に臨むネリは2月20日に来日し、両陣営間に臨戦態勢の緊迫ムードが漂ってきました。

この大一番の前日、2月28日に東京・後楽園ホールで開催される世界戦が、王者ダニエル・ローマン(27=米国)vs松本亮(23=大橋)のWBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチです。

松本は、2011年12月31日のプロデビューから7年目、23戦目にして初めて世界に挑む“遠回りしてきた男”です。

2016年5月8日、ビクトル・ウリエル・ロペス(メキシコ)と対戦し、プロ18戦目で初黒星(5回TKO負け)を喫しました。

長身から繰り出す強打を武器にそれまでの17戦、無敗(15KO)の快進撃を続けてきただけに“まさか”の敗戦-。

敗因は、高校(横浜高)時代に手術した副甲状腺亢進(こうしん)症の再発による体調不良だったといいます。

無理を続けた結果の不運。敗戦後に入退院を繰り返し、同年9月に手術を受けて2016年12月30日の再起戦にこぎつけています。

長身から繰り出す強打が武器

このときの相手が、初黒星を喫したロペス。今度は松本が6回TKO勝ちで雪辱しています。

松本は2014年12月30日、東洋太平洋(OPBF)王座を獲得していますが、このときのウエートがスーパーフライ級(リミット52・16キロ)でした。

その後、体重が増えてバンタム級(リミット53・52キロ)での世界挑戦も練られたようですが、甲状腺関連の手術によってホルモンが操作され、さらに体が成長(現在は身長1メートル73)したことで、OPBF王座獲得時より、2階級上のスーパーバンタム級(リミット55・34キロ)に落ち着いた、という経緯がありました。

ウエートの増減は、一般的にスピードとパンチ力に微妙に関わってきます。つまり、体重が増えれば、パンチ力はアップするが、スビートが落ちる。減ればその逆、ということですね。

王者のローマンは、2017年9月、WBA世界バンタム級王者・久保隼(真正)に挑戦、9回TKO勝利で新王者となっています。今回は初防衛戦-。

このときのローマンには、一撃の威力は感じられなかったものの、前進しながら入り込み、連続攻撃で追い込んでいく攻め方が印象的でした。

敗れた久保陣営は、距離を取れなかったことに悔いを残していましたが、今回の松本も、中に入りたいローマンをどう阻止するか、距離を取りながらどう一発を叩き込むか、の戦い方が勝敗の分かれ目となりそうです。

それができればパンチ力は上。“イケメン”松本の、これまでの遠回りが報われそうです。

スーパーバンタム級は、IBF王者・岩佐亮佑(28=セレス)が3月1日、山中の舞台で初防衛戦を行います。

「点」と「点」が、いつか「線」で結ばれることになるだろう、この世界の宿命を背景にどちらも負けられない戦いとなりそうです。

“神の左”の復活劇を観たい

平昌冬季五輪のフィギュアスケート男子で五輪2連覇を遂げた羽生結弦(23=ANA)の凄まじいばかりの復活劇を観ていてふと、頭の片隅をよぎった選手がいました。

プロボクシングの前WBC世界バンタム級王者・山中慎介(35=帝拳)です。

王座を奪われた同級王者ルイス・ネリ(23=メキシコ)との再戦が3月1日(東京・両国国技館)に迫り、過去12度の防衛に成功した“ゴッドレフト”は、果たして羽生のように完全復活を告げる勝利を飾ることができるだろうか、と-。

昨夏の“まさか”が思い出されます。

2017年8月15日の悪夢-。

島津アリーナ京都で無敗の挑戦者(同級1位)ネリを迎え撃った王者・山中は、4回TKO負けを喫して13度目の王座防衛に失敗しました。

山中は4回、若さで勢いに乗るネリの猛攻を受け、防戦一方になったところで自陣コーナーからタオルが投げ込まれると同時にトレーナーがリング内に飛び込み、レフェリーが試合を止めた、という敗戦・・・。

まだやれたかどうか、セコンドの判断は早すぎたかどうか、などの「?」が残り、その意味では後味の悪い結末となりましたが、負けは負けと認めざるを得ません。

こういうときは、何かといろいろなことが起きるものです。ネリのほうも同年7月にメキシコで受けた抜き打ち検査で筋肉増強と減量に効果がある禁止薬物のジルパテロールに陽性反応を示していたことが明らかになりました。

3月1日に迫った因縁の再戦

ネリの王座剥奪とか山中とのタイトルマッチは無効とか、いろいろ取り沙汰されましたが、調査の結果としてWBCは、ネリに対しては、意図的な摂取が証明されなかったことでペナルティは科さず、しかし、疑惑は残る、ということで再戦へと至りました。

再戦に対して山中への見方は、前回の試合がああいう不本意な終わり方をしたのだから、今回は勝つだろう、というのが結構、多いと思います。

例えば“KOダイナマイト”内山高志(ワタナベ=引退)とジェスレル・コラレス(バナマ)との再戦がそうでした。

WBA世界スーパーフェザー級王者・内山は、12度目の防衛戦(2016年4月27日=東京・大田区体育館)でコラレスに思いもかけない2回KO負けを喫しました。

まったく内山らしからぬ敗戦に2017年大みそかに行われた再戦に対して、周囲は内山の勝利を確信していましたが、結果は判定負けでした。

お互いに手の内を知り、初戦以上に研究し尽くして対戦する再戦は、思うほど簡単ではありません。紙一重の力量なら、初戦で負けたほうに“負”の心理が働きます。

踏み込みを欠き、あと一歩が出なかった内山の戦いには、それが感じられたものでした。

山中も・・・などとは言いません。

が、しかし、です。過去の例を見ても、王座から陥落させられた相手との再戦で雪辱した世界王者(日本のジム所属)は、輪島功一と徳山昌守の2人しかいないのです。

35歳のチャレンジャーとなった山中が、羽生のように立ち上がってほしい、とは誰もが願うことですが、果たして結果は・・・。

技の緩急、メリハリ、切れ味の良さ、などが羽生の凄さだったと思いますが、山中にもそれを期待したいですね。

152秒で決めた15試合連続KO勝利

ドドッと攻め込んだ。1回残り40秒-。

踏み込んで左のボディー、さらに上への左アッパー。左2発で体を浮かせると、すかさず右ストレートをボディーに突き刺した。

凄い攻撃でした。たまらず挑戦者は両ひざをついてダウン。苦しげにマウスピースを吐き出したところでレフェリーは10カウントを数えました。

プロボクシングWBC世界フライ級王者・比嘉大吾(22=白井・具志堅)のV2戦は、アッという間の速攻勝負、1回2分32秒、開始わずか152秒のKO勝利となりました。

立春の日の2月4日夜、出身地・沖縄での試合(沖縄県立武道館)-。

沖縄での世界戦は過去、3試合行われていますが、日本勢は勝利なしの全滅。その3試合目、1981年3月8日、WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高(協栄)=当時=が、14度目の防衛戦に敗れてから、実に37年を経て、師匠の口惜しさを愛弟子の比嘉か晴らす、というドラマチックな勝利を挙げました。

その勝利はまた、格別のものです。

2014年6月のプロデビュー戦から15試合連続KO勝利。これは沖縄の先輩、元世界王者の浜田剛史氏(帝拳代表)らが持つ日本記録に並ぶものになりました。

以前、連続KO勝ちについて浜田氏に聞いたことがあります。

そのとき、浜田氏はこう答えました。

比嘉は本物~記録保持者の浜田剛史氏

〈連続KO勝利の記録をつくることは、そう難しいことではありません。そういう相手を選べばいいだけのことですからね〉

そういう言葉を聞くと、デビュー当初の亀田興毅などが思い出され、確かに“KOをセット”とした戦闘スタイルでKO勝利の山を築いて観客を沸かせていたものですが、凄ェ~な、と言われたそれは、やがて、オイオイ、どんな相手とやっているの? となり、最後は〈つくられたドラマ〉じゃないか、に変わってきてしまったことは周知のことです。

浜田氏は今回、試合を中継したフジテレビの解説者として現地で試合を観(み)ていますが、比嘉を「ホンモノ」と評したのは、やはり、強い相手に打ち勝ってきたこと、その内容に価値あり、としたからでした。

確かに挑戦者のモイセス・フエンデス(30=メキシコ)は過去、ミニマム級で正規王者、ライトフライ級で暫定王者、と2階級を制覇しており、王者経験者であれば“そういう相手”というわけにはいかなかったことでしょう。

沖縄での世界戦で日本勢が全滅している重圧。連続KO勝利の日本記録に並ぶという重圧。そんなWプレッシャーを比嘉は、わずか1回で打破してしまったのですから、やはり“新時代の星”として、この若者は、それに見合うものを持っているのでしょうね。

この試合の取材に当たったスポニチ本紙の担当記者は、試合前日、比嘉の面白いコメントを報じてくれていました。

KOで勝てば特別な王者になれる。KOできなければ普通の王者。負ければただの人」-。

今、確実に比嘉は〈特別な王者〉となり、次戦の3度目となる防衛戦以降が注目される選手となりました。

浜田氏は、15試合連続KO勝利の日本記録を1980年(昭55)2月から1986年(昭61)4月にかけて達成していますが、比嘉は実に30年以上も前のこの記録に並んだことになります。

この記録に関しては、止まっていた時計を動かした若者の勢い-。

それがこの先、どれだけの数字を上積みしていくことになるのか。記録の更新を含めて比嘉への注目度は、これからどんどん増していくことになるでしょうね。

故郷・沖縄に渦巻くか~比嘉旋風

観(み)る側をそのたびに“退屈させる”ボクサーがフロイド・メイウェザー(米国)でした。

2015年9月12日、5階級制覇王者のメイウェザーは、これがラストマッチ、とWBA&WBC世界ウエルター級王座統一戦に臨み、WBA世界同級暫定王者アンドレ・ベルト(米国)を判定で下し、49戦全勝(26KO)の戦績で現役を引退しました。

このとき、最後だから何かをやってくれるだろう、と期待して観戦したファンは、メイウェザーが主導権を得た5回以降、ガードを下げてフットワークだけで相手をおちょくったり、10回には何かを大声でしゃべったり、舌を出したりする態度に、最後までそれか、と会場はブーイングに包まれたものでした。

だから、その後の2017年8月26日、米ネバダ州ラスベガスの「T-モバイル・アリーナ」で、総合格闘技リング「UFC」の世界ライト級王者コナー・マクレガー(アイルランド)とボクシング・ルールで最後の最後“50戦目”を戦ったとき(メイウェザーの10回TKO勝ち)も、何を目的に・・・という批判的な目が集まり、そんな中でも、倒して終われたことは、やはり、最後にひと花、の気持ちがあったのかもしれません。

ちょっと前置きが長くなりましたが、メイウェザーを持ち出したのは、やはり、ボクシングの魅力は、殴り合い、倒し倒され、が原点にあってこそのものだろ、ということが言いたかったからです。

15試合連続KO勝利を懸けて・・・

そして・・・今、その魅力的な“倒す”ボクシングで、ファン以外の人たちも「ヒガ」の名前を普通に口に出すようになり、面白いね、次が見たくなるボクシングだよね、と大きな期待を集めているのが、WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(22=白井・具志堅)です。

比嘉は2月4日、故郷(沖縄県浦添市出身)に帰り、沖縄県立武道館(那覇市)で同級9位のモイセス・フエンデス(30=メキシコ)と2度目の防衛戦を行います。

目下、プロデビューから14連続KO勝利を続行中の比嘉は、この2度目の防衛戦に元世界王者・浜田剛史氏(帝拳代表)らが持つ15連続KO勝利の日本記録を懸けます。

王座を奪った2017年5月のファン・エルナンデス(メキシコ)戦、初防衛に成功した同年10月のトマ・マソン(フランス)戦・・・比嘉の試合を観た人たちは、そろって“すゲエ~な”と口をそろえます。

直近のマソン戦を振り返ってみると-。

比嘉の目的は、ただひたすら“倒すぞ”のみ。その分かりやすさがファンを惹きつけます。

滑り出しは、マノンの高いガードを崩せず、攻めあぐむ場面もありましたが、ジャブでプレッシャーをかけ、左のボディーで追い詰め、次第にアッパーの3連発、4連発の猛攻で倒しのモードに突入していきます。最後は7回、左の強烈なジャブが右目を直撃。マノンはひざをつき、立ち上がったものの、ドクターストップがかかり、7回TKO勝ちを収めました。

今回の2度目の防衛戦の相手フエンデスは、これまでにWBO世界ミニマム級王座、WBO世界ライトフライ級暫定王座の2階級を制しており、3階級制覇を狙う試合です。

まあ、厄介な相手でしょうが、比嘉に懸かる期待は、15連続KO勝利で日本タイ記録達成、そして次は新記録へ、となり、ここで負けるわけにはいかない試合となります。

故郷・沖縄のファンにどんな試合を見せるか-。

比嘉の試合は、誰かサンみたいに観るものを退屈させることなく、今度も、少しも目を離せない、席を外させない、ものとなりそうです。
プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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