平昌五輪~期待に応えることの難しさ

テレビの画面にクギ付けになりました。

2月18日の日曜日夜。午後9時25分-。

スタートから100メートル。思わず声が出てしまいます。行け! 頑張れ!

平昌五輪スピードスケート女子500メートルの小平奈緒(31=相沢病院)の激走です。

同走の今季W杯ランキング3位のエルバノバ(チェコ)とデッドヒート(エルバノバは37秒34で3位)の末、後半の強さに凄味を見せてゴール。ただ一人、37秒台を切る36秒94の五輪新記録を樹立して金メダルを獲得しました。

両手のガッツポーズ、こみ上げる感涙をこらえているような表情・・・同種目で日本勢女子が金メダルを獲得するのは史上初という快挙。小平を追うカメラが映し出す映像の中でひときわ、観(み)る側の胸を熱くさせたのが、地元・韓国の李相花(29)との抱擁だったのではないでしょうか。

2010年バンクーバー、2014年ソチと五輪2連覇を成し遂げている李は、韓国では「氷上の女帝」の異名を持ち、3連覇の偉業達成に向けた韓国民の期待、思い重圧をズシリと両肩に背負っての出撃でした。

小平の直後、大声援の中、レースに臨んだ李は、コーナーでふくらむなどわずかなタイムロスがあって小平に及ばず、37秒33で2位となりました。涙を拭う李に小平が近づき、肩を抱いて言葉を投げかけます。李のスタート時、日本の観客に向けて“静かに”と唇に指を立てた姿も印象的でした。

ともに背負った重圧の中で・・・

後のインタビューでこの場面の出来事を聞かれ、小平は「『たくさんの重圧の中でよくやったね。あなたをリスペクトしているよ』と言いました」と答えました。

ともに国民の期待を背負い、重圧と闘う日々を送り、さらに上へと精進してきたからこそ、分かり合える、涙の意味、抱擁の意味、だったでしょうか。

両国の国旗を翻しながら2人並んでのウイニングランに「金」と「銀」を超えたアスリートの友情が漂い、それらを含めてやはり〈五輪という場は凄いな〉と感じたものでした。

例えば、プロスポーツにあって“スーパースター”の条件は、複数ある中の一つに〈観客が“してもらいたいな”と思ったことをやってのけること〉というのがあります。

今回の小平には、バンクーバー、ソチで果たせなかったことへの雪辱があり、ただでさえ周囲の期待という重圧がある中、余計なことは排除したかったはずだったでしょうが、あえて日本選手団の主将を引き受けています。

重責を請け負ったなぜ? を追い求めるなら、小平には“皆が望むなら”があり、そしてやはり、ソチ後の4年間、スケート大国オランダへの単身留学など苦闘の中でつかんだ「自信」と「強さ」が、それを引き受けさせたのかもしれません。

小平の「金」とライバル・李の「銀」-。

観客が“してもらいたいな”と思ったことを“やってのけた”小平と“やれなかった”李。

やってのけてもやれなくとも、期待に応えるということがいかに難しいかを、日韓2人の第一人者が示してくれた歴史的レースでした。
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平昌五輪~挫折を乗り越えての栄光

痛恨のミス、敗北、後悔、挫折・・・。

こうした“負”の出来ごとを経験してこそ、人は成長し、やがて栄光にたどり着くのでしょうね。

悔しさをバネとした飛躍です。

熱戦を展開させている平昌冬季五輪の第4日(2月12日)までにメダルを獲得した日本勢3選手を観(み)ていて、つくづくそれを感じました。

スピードスケート女子1500メートルで銀メダルを獲得した高木美帆(23=日体大助手)、ノルディツクスキー・ジャンプ女子ノーマルヒルで銅メダルを獲得した高梨沙羅(21=クラレ)、そしてフリースタイルスキー男子モーグルで銅メダルを獲得した原大智(20=日大)らの〈栄光への軌跡〉です。

“天才少女”と注目された高木美は、中学3年生で2010年バンクーバー五輪に出場し惨敗。雪辱を期した4年後の2014年ソチ五輪では、レース以前に代表に選ばれなかったという、最大の屈辱を味わわされています。

ソチ五輪前まではW杯シリーズの転戦で“絶対女王”的な強さを発揮していた高梨は、ソチ五輪で金確実と言われながら失速、メダルに届かない4位となってしまいました。

原も、同年齢の堀島行真(20=中京大)が2017年世界選手権で優勝、今季のW杯でも初優勝を飾り、W杯通算8度の表彰台経験を持つ遠藤尚(27=忍建設)、また世界選手権では2009年銀、2011年銅の実績を持つ西伸幸(32=マンマーノフーズ)の中に入って、やはり“第4の男”“陰の男”として見られていた悔しさがありました。

それぞれが3人3様の屈辱から立ち上がり、その雪辱を期した平昌五輪-。

高木美と高梨の両天才のコメントを聞いていると、ある共通点があることに気づきます。

自信を確信できるまでに・・・

高木美が8年間、高梨が4年間、ともに精進を重ね、汗と努力の日々を過ごしてきたことは、いまさら言うまでもないことです。

高木美が言いました。

〈(それらを経てつかんだことは)自分への自信でしょうね。自分が出せれば結果はついてくる、というような自信ですか〉

ソチでの失敗を踏まえて高梨も同様のことを口にしていました。

〈どんな舞台でも、いつもの自分が出せるような精神状態をつくっておきたい〉

いずれも口で言うのは簡単~行うは難し~でしょう。

銅メダルを決めた最後(2本目)のジャンプ。K点超えの103・5メートルを飛んだ後の両拳を突き上げてのガッツポーズは、ソチではできなかったそれが、4年後にやっとできたことの表れだったのでしょう。

高梨は「今回は、最後の最後で自分を信じて飛べました。自分を信じて飛べれば、ソチのときもよかったのかなと思う」と振り返っていました。

“陰の男”原は、メダル候補の堀島、遠藤が転倒して敗退し、西も低迷する中、会心の滑りでメダルを獲得。縮めていた体をやっと伸ばし、大きく胸を張ることが出来ました。

挫折から立ち上がり、メダルを手にした3人は、それぞれの涙を流し、それは観(み)ているこちらにも伝わり、ついウルウルしてしまいそうな感動がありました。

・・・が、それぞれは、早くも次に目を向けます。

特に高木美と高梨は〈メダルを獲れたことは嬉しい。が、金に届かなかったことが悔しい〉と口を揃えました。

高木美が続けます。

五輪での借りは五輪で返すしかない。悔しさは五輪の舞台での結果でしか晴らせないのだから・・・

一線級のアスリートたちの常に“前を向く”思考には、ただただ頭が下がるばかりです。

平昌五輪~競技の時間設定に疑問符

2月10日夜-。

高木美帆(23=日体大助手)が出場した平昌冬季五輪のスピードスケート女子3000メートルをテレビの「NHK総合」で観(み)ていました。

午後8時開始。全12組、計24人が出場し、11組の高木美の出走時間は午後8時50分。高木美は5位となり、強国のオランダ勢が金・銀・銅独占の結果となりました。

メダル争いが佳境に入る韓国時間(日本時間も同)の午後9時近くは、オランダ時間の午後1時近く。欧州で人気のスピードスケートを見やすい時間に合わせたことが読み取れる時間設定です。

“レジェンド”葛西紀明(45=土屋ホーム)らが出場した同日午後9時35分開始のジャンプ・男子個人ノーマルヒルは、進行が極度にもたついているのがテレビの画面からも伝わってきました。

周辺に強風が吹きまくっているために中断、また中断の連続。スタートゲートで待機する選手の苛立ち、その付近で順番を待つ選手たちの、毛布にくるまって寒さをしのいでいる姿・・・。屋外競技の常とはいえ、今回の環境は過酷過ぎます。

夜に吹く寒風と寒さは分かっているのに何故この時間に?

これも欧州の時間帯は、正午過ぎから夕刻にかけて、と見やすい時間に合わせていることが分かります。

競技終了が深夜なんて!

この競技が終了したのが、2月11日の午前零時20分ごろ。2月12日付のスポニチ本紙は、案の定、社会面でこの問題に触れ、葛西の「こんなの中止でしょ、と心の隅で文句を言いながら寒さに耐えた」という言葉を引用して、競技の実施時間に疑問符を投げかけ、運営の不手際を指摘していました。

昨今の“商業五輪”の背景に〈巨額の放映権料〉が屋台骨として重きを占めていることは周知のことです。

それにより、スビートスケートやジャンプが欧州時間に合わされ、米国で人気のフィギュアスケートなどは、午前10時開始と米国東部時間午後8時とゴールデンタイムに合わされています。

韓国と日本は時差がありません。それだけに平昌冬季五輪の苦慮が、そのまま2020年東京夏季五輪にはね返ってくることも考えられます。

いい舞台が設定されて、いい観客が見守り、そこで選手たちがいいプレーをすることが、白熱した戦いをつくり上げます。

それが開催国とIOC(国際オリンピック委員会)の基本的な役目というものでしょう。

ジャンプ・男子個人ノーマルヒルのように、競技を終えたのが深夜となり、観客が不在となるようなセッティングでは、いいプレーを目指す選手たちの気持ちに水を差すことになってしまいます。

2月12日の第4日は、高梨沙羅(21=クラレ)や伊藤有希(23=土屋ホーム)ら日本勢4人が出場するノルディックスキー・ジャンプ女子が行われます。

開始時間は、やはり遅く午後9時50分。条件は皆、同じとはいえ、強風と厳寒の夜の屋外競技で本来の力が損なわれないようにしたいものです。

感動が観たい~始まった平昌冬季五輪

いよいよ始まりましたね。

2月9日夜、平昌五輪スタジアムで開会式が行われた平昌(韓国)冬季五輪です。

政治色の濃さはさておき、また昨今、傾向が強過ぎる、メダル至上主義の五輪、にも同調しかねます。

テレビで開会式を見ながら友人との五輪談義-。

-五輪の何が観(み)たい?

友人が答えました。

やっぱり感動かな。勝ち負けより、選手が精いっぱい戦う姿。感動をありがとう、という試合を観たいね

その通りですね。4年に1度の五輪は、やはり、選手にとって4年間の精進の集大成になるわけですから、純粋さを妨げるものは排除したいですね。

ところで・・・これは吉兆でしょうか。

2月10日-。

この日は1998年長野五輪のスピードスケート男子500メートルで清水宏保(43)が優勝。日本のスピードスケート選手として史上初となる金メダルを獲得した記念日にあたります。

吉兆となるか? 2月10日の快挙

同五輪では、スビートスケート女子500メートルでも、清水に続けとばかり、岡崎朋美が銅メダルを獲得しています。

清水や岡崎の活躍を吉兆としたい2月10日、平昌五輪第2日のスビートスケート陣は、同日夜に行われる女子3000メートルに中・長距離のエース・高木美帆(23=日体大助手)が出陣します。日本勢がまだメダルを獲ったことがないこの種目で高木美がどんな滑走を見せてくれるか楽しみですね。

(2月10日21時45分追記=高木美の3000メートルは4分1秒35で5位。惜しくもメダルには届きませんでした)

高木美が中・長距離のエースなら、短距離のエースは、何といっても絶好調をキープしている小平奈緒(31=相沢病院)ですね。

“絶対的”優勝候補に挙げられている500メートルは第10日の2月18日に、優勝を含む上位が予想される1000メートルは第6日の2月14日に行われます。本人が「500メートルへの打診かな」という、経験が少ない1500メートルは第4日の2月12日です。

小平という選手は、本当に凄いですね。

平昌入り後、2月7日に本番会場の江陵オーバルで行われたスピードスケートのタイムトライアルで、低地自己ベストを更新する500メートル37秒05をマークしたことが伝えられました。

小平は昨年2月、同リンクで行われた世界距離別選手権で、五輪2連覇中の李相花(韓国)に0秒35差をつける37秒13で優勝していますが、今回のトライアルでそのタイムを0秒08縮めています。

エッ? アッ! そういえばこの好タイムでの優勝も2月10日の出来事でした。

小平は、今季のW杯第2戦となるノルウェー大会で37秒07という低地世界最高記録をマークしていますが、それをも縮める記録。私たちにはピンとこないところもありますが、低地での37秒台というのは、もはや“神がかり”的なのだそうですよ。

頼もしいことですね。

20年前に清水が風穴をあけたスビートスケート陣が今、女子を中心に続々と世界のトップに上り詰めようとしています。

感動的なシーンが、あちこちで観られるようなレースを期待したいものですね。

スポ根? 近年は科学的方法が主流です

このところ・・・高校時代の同級生Kクンとの交流が復活、時折り、食事などをしながらのひとときを楽しんでいます。

高校時代のKクンは、水泳部で活躍していましたが、社会に出てからは家具を中心とするデザインに携わり、もともと絵が好きでね、とフリーになった今は、趣味で色鉛筆画などをうまく描き上げる、ユニークなクリエイターです。

先日のこと-。

鎌倉在住のKクンが、ときどき使わせてもらっている店なんだ、という「お好み焼き」の老舗名店に出向きました。

美味いお好み焼きを楽しみ、ビールで喉をうるおし、雑談を交わしているとき、私の小欄「一喜一憂」の話題となりました。

Kクンが言います。

〈結構、楽しみながら読ませてもらっているよ。いろいろな刺激や考えるヒントなど、たくさんの材料を頂戴している〉

こういう話を聞くと私もつい、嬉しくなり、顔が緩んでしまうのですが、そこは同期のよしみ、注文も忘れません。

だけどね・・・Kクンが続けました。

「一喜一憂」を長く続けていくためにひと言-。古き時代のスポ根もよろしいですが、近年は体にやさしい科学的方法がお勧めのようですよ

さすがです。ズバッと核心をついてくる男ですね~Kクンは・・・。

実はこのところ、私も“その変化”に気づきながら、なかなかとらえ切れず、スポーツ各分野のさまざまな局面で起きる出来ごとにうまく対応できず、悩んでしまっていたのです。

スポーツ科学が勝負を分ける時代に

皆が皆、そうだとは言いませんが、概して私たちの年代は、汗と涙のスポ根こそが一番! と「根性論」を教えられ、あるいは自身、そう思い、炎天下で水飲むな、と歯を食いしばってきた世代です。

それが・・・例えば新春の風物詩「箱根駅伝」-。

だから、私たちの世代は、各区間20キロを超す長丁場の戦いの中、タスキを肩に掛けた途端、母校ため、仲間のため、と「私」を捨てて歯を食いしばる若者の姿に感動し、ブレーキなどが起きようものなら、ここで頑張らずにどこで頑張る! など観(み)る側がスポ根丸出しとなってしまうわけです。

が・・・今年ほどそれがもう、過去のものなのだなァ、と感じたことはありません。

往路を制した東洋大に対し、青学大の原晋監督(50)は、沈着冷静、復路の滑り出し、山下りの6区で抜き去る、30秒差をつければ、7区で優勝が決まる、と言い切り、実際、選手たちはその通りのことをスイスイと苦もなく(ホント、苦もなく、のように見えます)やってのけてしまったです。

この展開を、スポ根世代は、でき過ぎだよな、ちょっとつまんネ~な、と思い、若い人たちは、これこそデータを重視した科学的思考、科学的トレーニングの勝利、新時代の箱根駅伝、と賛辞を送ります。

最初のテーマに戻って・・・不謹慎かもしれませんが、Kクンが言う「古き時代のスポ根」で育った記者は、こういうスマート極まる箱根駅伝は書きたくネ~よ、となってしまうのです。

私が書く小欄のスポーツ・コラムに対しては以前、やはり目を通して頂いている友人のM女史から「全体的に硬いよ。スポーツの結果をあれこれ分析するのもいいけど、私はもっと軟らかいほうがいいな」との指摘を受けたことがありました。

確かにスポ根の代表格でもあったボクシングさえ、近年は、打たれずに打つ、科学的根拠に裏打ちされた攻防一体のきれいなスタイルが主流になってきており、私自身、もう視点を変えなくてはいけないところに来ているような気がします。

いよいよ始まる平昌冬季五輪、さらに2020年東京五輪-。

経験豊富なベテラン選手が、勢いで攻める若い選手に敗れるなどの出来ごと~例えば卓球の張本智和の躍進など~は、当たり前のように起こり、彼らが確実に時代を変えて行くことになるのでしょうね。
プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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