長谷川に見た“思いの深さ”

「きれいなボクシング、出来へんかったけど・・・。こんなん見せてしまってスンマセン」

試合後、長谷川穂積(29=真正)はリング上からファンにこう挨拶しました。

11月26日夜、愛知・名古屋(日本ガイシホール)で行われたプロボクシングのWBC世界フェザー級王座決定戦です。同級2位のファン・カルロス・ブルゴス(22=メキシコ)と壮絶な打ち合いを繰り広げた末に判定勝ち。WBC世界バンタム級王座に続き、日本初の“飛び級”で2階級制覇を成し遂げた長谷川の顔は、激闘を物語ってハレ上がっていました。

では、長谷川が「こんなん・・・」と言った試合は、どんな内容だったのでしょうか。会場に足を運んだ方、あるいは26日午後7時、試合を中継した日本テレビにチャンネルを合わせた方、多くの人たちがいたと思いますが、12ラウンドを通して私を含め、ほとんどの方が「こりゃ、ヤベーぞ」と“トイレ・タイム”も持てずに試合に見入ったのではないでしょうか。

確かに公開採点では4回、8回とも長谷川がリードをしていました。が、リング上で長谷川がしていることといえば、初回から延々、足を止めた真っ向勝負の打ち合いなのです。テレビの解説を務めた元世界王者・浜田剛史氏も思わず「足を使わないと危ないですよ。横の動き。もっと動いて出入りを!」と声を荒げてしまう危険な展開でした。

見せつけた魂の“殴り合い”

バンタム級(リミット53・52キロ)から1階級飛び越してフェザー級(リミット57・15キロ)の戦い。体重とは別に体格的にもひと回り大きい相手に長谷川は当初、足とスピードを生かした“パッキャオ的戦法”を展開させるだろうことが予想されていました。しかし、それは覆され、再三命中させる左フックも、これまでのバンタム級なら倒れていても、この相手は倒れてくれません。戦いの中に2階級アップの現実をひしひしと感じつつ、それでも長谷川は危険な打ち合いを選択。左アッパーでグラつきながらも、一歩も引かず、力勝負を続けました。

それが長谷川の「こんなん・・・」でしたが、そこに見る側が感じ取ったものは、長谷川の“思いの深さ”だったでしょうか。試合のひと月前、10月24日にがんの病状を悪化させた母親が他界し、この日は遺影となってリング下で見守っています。

「ここで負けるわけにはいかない。絶対に勝たなければいけない」の“思い”があったでしょう。あるいは、フェザー級の戦い、足を使えばもっと楽にはなったでしょうが、このクラスへの「名刺代わりの力勝負」をあえてやり通さざるを得ない“思い”もまた、あったことでしょう。

再起戦で戴冠ということを含め、いろいろな意味でボクシング人生最大の関門だったろうこの試合から一夜明けた27日、長谷川は会見でこう話しました。

「重圧もあった。気持ちも入り、強く見せる戦いをしてしまった」

そしてこの関門を突破した長谷川を次に待ち受けるのが、元WBO世界バンタム級王者でWBC世界フェザー級3位のジョニー・ゴンサレス(29=メキシコ)との指名試合です。王者に休息はなく、バンタム級のV10王者・長谷川が、さらなる進化を見せてくれることを祈ろうではないですか。



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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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