無限に続く精進の中身

神様は人を楽に流させない、常に何かに立ち向かうように・・・と、仕向けているのでしょうか。多くの人たちに接し、話を聞いていると、概して人は、不思議なことですが、昔は苦手だったのに、ということを今、職業としていたり、取り組んだりしていることが多いようです。

例えば知り合いのテレビ局のアナウンサーは、小さいときはとにかく人見知りが激しく、家に人が集まるときなどは、柱の後ろに隠れて出て行けない、人前でしゃべることなどとんでもない、といったタイプだったそうです、と言うし、また同じようにシャイで人前に出るとモジモジしていた友人は今、車の敏腕セールスマンとして生き馬の目を抜く戦場で活躍しています。

振り返って見れば、私なども、どちらかと言えば、人見知りをするタイプだったのですが、なぜか無差別に人に会っては話を聞く新聞記者という職業に就いてしまいました。

なぜだろうねェ、不思議なものだねェ、やっぱり神様の意地悪な仕業なのかねェ、などと考えているとき、ああ、そういえば、あのボクサーも神様に動かされているかもネ、とWBA世界スーパーバンタム級王者となった下田昭文(26=帝拳)の顔が浮かんできました。

下田は今年1月31日、WBA世界スーパーバンタム級王者・李冽理(28=横浜光)を判定に下して新王者となりました。

礼儀正しく優等生がそろう帝拳勢の中では一風、変わった“雑草”タイプの下田です。しかも、入門時は茶髪&ピアスの“やんちゃ系”だったそうです。

スーパーバンタム級の日本王者時代にこんなことがありました。07年4月に王座獲得。その後の8月、大事な初防衛戦のときです。無敗の挑戦者・塩谷悠(川島)に判定勝ちした下田でしたが、手数の少なさを含めた、その試合の内容の悪さにこう言いました。

「なんかモー、手ェ出すの、面倒くさいとか思っちゃってェ。暑いしィ・・・」

今日も明日も、そしてまた、あさっても・・・

まあ、暑い夏場のボクシングの試合などは、やる方もさぞ、大変だろうことはお察しします。しかし、まあ、ボクサーが手を出さなくて何を出す? ということもあり、こうまで正直にダレた気持ち? を公にされてしまうと、多くの人が「下田は辰吉型の天才」と高い評価を出すのも分かるような気がします。ノーガードのままステップワーク、ボディーワークでパンチをかわすスタイルもさることながら、天才は得てして、自分の気持ちに正直なもの、なのだそうですから・・・。

さて、本題です。こんな下田に訪れた転機は08年10月、日本バンタム級王座の4度目の防衛戦に負傷判定で敗れ、さらに09年2月、ホセ・アルボレダ(パナマ)との再起戦に負傷判定引き分けと勝てなかったことでした。

ここから下田の気持ちが変わりました。いや、あるいは神様が例の意地悪を施し? て変えたのかもしれません。

飛行機嫌いの下田は、とにかく海外がイヤで西岡や粟生(あおう)らとの海外トレーニングを徹底して避けていましたが一転、それに取り組み、かつては天才肌らしく、もっとも嫌っていた“努力”にも取り組み始めました。東洋太平洋王座→世界王座奪取への道は、嫌いなこと、苦手なことをやらざるを得なくなったことの成果だったでしょう。

そして注目の世界王座の初防衛戦、下田は同級1位のリコ・ラモス(米国)との指名試合を、何とアトランティックシティ(米ニュージャージー州)で行う可能性が濃くなりました。日本人世界王者の海外での防衛戦は、1985年にWBC世界スーパーフライ級王者・渡辺二郎(大阪帝拳)が韓国で、09年5月にWBC世界スーパーバンタム級王者・西岡利晃(帝拳)がメキシコで行い、それぞれ防衛に成功していますが、下田のようにいきなり、プレッシャーのかかる初防衛戦を海外で行うというのは異例のことです。

これもまた海外嫌いの下田に神様が課した試練なのでしょう。

そうです。人生は最後まで挑戦なのです。それも汗を流してやってきたことに「ああ、結局オレの人生は、自分が苦手なことにチャレンジし続けてきたんだなァ」と気付くのは、ようやく、ひと通りの人生を終えてホッとひと息ついたときなのでしょうね。

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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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