名作「東京物語」を観て・・・

「カワマタ・キネマサロン」(このシリーズは「文化・芸能」の項に収めてあります)の4月例会(4月29日実施)で上映されたのは、小津安二郎監督の「東京物語」(1953年=昭28=制作・公開、松竹配給)でした。

「東京物語」といえば小津映画の代表作と評価されています。「晩春」(1949年=昭24)「麦秋」(1951年=昭26)と並ぶ、小津監督の戦後3部作の中の最高作とも・・・。同作品は、国際的にも高い評価を得ており、資料には1958年、ロンドン映画祭で「第1回サザーランド杯」を受賞した、とありました。

今回、このサロンで上映された作品は、2011年にデジタル・リマスターによる修復・リプリントが行われた最新のものとなりました。作品の撮影助手を務めた川又昂氏が監修にあたったこの修復作業は、2011年4月、NHKのBSプレミアムで放送された「デジタル・リマスターでよみがえる名作“東京物語~復活への情熱”」でご存知の方もいると思いますが、この日、出席した川又氏は「私にとっては“国宝級”の作品との思いがあるから熱が入りました」と名カメラマンらしい、復刻にかけた“熱さ”を語っていました。

修復されたフィルムは、モノクロ映画にとっては“命”ともなる画質の明暗(陰影)や音などが細部にわたって調整され、すべてがクリアなものとなっていました。それだけで修復作業の大変さがしのばれたものでした。

物語は尾道(広島市)に住む平山周吉(笠智衆)とその妻とみ(東山千栄子)の老夫婦が、東京に住む子供たちに20年ぶりに会うために上京するところから始まります。

途中、大阪に住む三男の敬三(大坂志郎)に会い、長旅を経て東京に着いた2人は、自宅で医院を営む長男・幸一(山村聡)の家に落ち着き、そこには美容院を経営する長女・金子志げ(杉村春子)も駆けつけ、よくいらっしゃいました、遠路はるばる大変だったでしょう、お疲れだったでしょう、など、ひと通りの歓待がなされますが、お決まりの挨拶が終わればもう、たいして話も続かず、それぞれが日常の、いつもの慌しさの中に放り込まれていきます。

現代社会が抱える問題点をいち早く示唆

幸一が案内役となって予定された東京見物も、出発直前に急患が入り、キャンセルされてしまいます。2階に追いやられる形となった老夫婦は、親でありながら、久々に訪ねた子供の家に居場所はなく、ああ、とうとう宿無しになってしもうた、とその違和感に呆然(ぼうぜん)としてしまうのでした。

大型連休となったGWの期間中、親を交えて家族が集まる、あるいは田舎から親が出てくる、といった機会も数多く、あることでしょう。そうしたことを思いながら、エエッ! と気がついたことは、昭和28年に制作・公開された「東京物語」というこの映画は、親と子供のつながり、希薄になりつつある家族の絆、核家族化、孤独死を含む老いと死、など、高齢化が急速に進む現代社会が抱える問題点をすべて、この時代に示唆しているのでは? ということでした。

私自身を振り返ってみると、昭和19年生まれの私は、映画が公開された昭和28年時、まだ小学生でした。その当時、私の家には、母の母、つまり私の祖母が時折、訪れては長逗留していくのが常でした。

祖母は子供たちの家を転々としているようでしたが、私の家にいるときは、まったく家族同様、私自身も祖母の叱らない優しさに、おばあちゃん、おばあちゃん、と甘えていたことが記憶に残っています。

が、こうした老夫婦の心にある、あって当然の子供との絆が、戦後社会の中、気がついてみれば、次第に喪失してしまっているさまは、私の祖母に置き換えて見ても、あるいは・・・というところが思い出され、昔のことながら身につまされる思いがしたものでした。

結局、東京での老夫婦は、戦死した次男・昌二の嫁、未亡人の平山紀子(原節子)だけが見せてくれた優しさ、温かさに救われる形で尾道に帰っていきます。直後に急逝した妻・とみの形見の時計を、笠“周吉”が子供たちではなく原“紀子”に手渡し、晴れ晴れとした顔を見せるのが印象的でした。

周吉と紀子に通じ合った共感は、戦後の変わり行く家族関係の中、やがて来るだろう不安社会、不信社会を一人で乗り切っていくことへの厳しさと寂しさだったのでしょうか。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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