続・「人類最強」から「霊長類最強」へ

カナダからの朗報は、吉田沙保里(29=ALSOK)の優勝でした。

レスリング女子の「世界選手権」(9月27日=日本時間同28日=開幕、カナダ・ストラスコナカウンティ)第2日に登場した55キロ級の吉田は、準決勝でてこずったものの、そこまでの3試合をすべてフォール勝ちの快進撃を続け、ヘレン・マルーリス(米国)と対戦した決勝でも、相手を寄せつけずフォール勝ち、同大会史上初の10連覇を達成しました。

これにより吉田は、アテネ(04年)北京(08年)に続くロンドン(12年)の五輪3連覇と合わせて世界大会計13連覇を達成。注目されていた男子のグレコローマン・スタイル130キロ級の“霊長類最強戦士”アレクサンドル・カレリン(ロシア=引退)が保持していた世界大会計12連覇の記録を抜き、男女を通じて世界ナンバーワン・レスラーの輝かしい称号を獲得しました。

吉田の快挙を報じる9月30日付のスポニチ本紙に掲載された「独占手記」にこんな記述がありました。

〈(略)・・・“カレリン超え”という言葉は3年ほど前に教えてもらったんですが、私のモチベーションでした。・・・(略)〉

勝ち続ける吉田にとって“内面の課題”は、何といっても、前向きのモチベーションをどう維持し続けるか、ということでしょう。

だから08年1月、中国・太原で開かれた国別対抗戦「女子W杯」で敗れ、連勝を「119」でストップさせられたとき、吉田はこう言っていました。

〈連勝の数字というものは、常に頭の中にあり、意識していました〉

つまり、それを意識して続けることへの気概がモチベーションとなり、次の活力につながっていく、ということでしょう。だから、吉田にとっての連勝は、単純に「いつかは負けるものだから・・・」という慰めでは収まらないものがあり、この敗戦で号泣した吉田は、帰国した成田空港でも涙にまみれていたものでした。

驚異的な「55キロ級」の維持

そうした“心のコントロール”とともに、常に感心させられることは“体のコントロール”-そう、体重の永久的維持です。

吉田のクラス「55キロ級」がいつから続けられているのか、資料をひもとくと、2002年の全日本選手権以降は、すべてこのウエートでした。1982年10月5日生まれ。あと5日で30歳となる女性アスリートの長年にわたり変わらない体重の維持は、まさに“奇跡的”ともいえる出来事ではないでしょうか。

この「世界選手権」の公式計量は「54・9キロ」だったと伝えられました。これは栄和人監督によると「過去最高の重さ」なのだそうです。

吉田のウエートは日ごろ、55キロを超えることがなく、だいたい世界大会での計量は「平均53キロ」を行ったり来たり、くらいだそうです。従ってウエート制のあるスポーツにつきものの、苦しい減量、というものはなく、その点は“体質的な利”といえそうですが、それでもロンドン五輪での優勝からわずか1カ月余、祝勝会なども数多くあった中での体重維持はやはり、厳しい自己管理なくして成り立たないものではないでしょうか。

カレリン超えを果たして、さあ、これから! ですが、吉田は今度はモチベーションをどこに設定することでしょうか。スポニチ本紙に寄せた手記では「この記録を節目として、少し休みたいなぁ、と思っています」と記述しています。

視線の先に次のリオ五輪がどれくらいの輪郭で見えていることでしょうか。吉田のことです。やがてそれは、動かしがたい確固たるモチベーションとして、吉田の心にハッキリとした輪郭を描いて来ることでしょう。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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