記憶力が生む状況に対応する強さ

将棋の史上最年少棋士・中学3年生の藤井聡太四段(15)が出現したことにより、知人・友人と交わす会話の中にこのところ、将棋の話題が増えています。

私自身は、そちらのジャンルに疎(うと)いこともあって、この中学生が、恐らく何手も先を読みながら駒を動かすのだろう頭の構造がどうなっているのか、にわかに見当もつかず、ただただ、恐るべき今どきの“スーパー中学生!”だなァ、と脱帽するばかりです。

そんな矢先、知人と雑談している際にやはり、将棋の話題、藤井四段の話となりました。

知人が言います。

〈彼に限らず、一線級の棋士は皆、そうなんだろうけど、何時間にも及ぶ対局にあって、始まりから終わりまで、自分が動かした駒はすべて、頭の中に入っているんだそうだね〉

まあ、一線級の棋士なら、それくらいのことは出来ているのではないか、と思いますが、もし、それが、以前の対局にまでさかのぼって記憶されているとしたら、これは凄いことでしょうし、そうした記憶力が、さまざまな構築力を生み、対応の強さにもつながっているのだろうな、と思います。

一線級の棋士の優れた記憶力を聞いて、フッと思い出されたのがゴルフの青木功プロ(現・JGTO会長)でした。

プロゴルフのトーナメントを取材するとき、選手たちは広いゴルフ場のあちこちでプレーしているため、記者が一人の選手について回るということが出来ません。

そのため、上位で回ってきた選手は、プレスルームに来てもらい、自分のプレーを振り返って話してもらうことになります。

例えば、1番はティーショットが右のラフに入ってしまって、ラフが思ったより深く、食われてしまいショート、そこから寄らずにボギーだった、などという具合に18番まで・・・です。

一打に一手に一撃に込めた目的意識

これを「ホール・バイ・ホール」と言いますが、面白いもので、この説明が苦手の人が結構いて、途中、え~っと・・・あそこ・・・どうしたんだっけ、などと詰まったりして、思い出すのに苦労したりします。

この「ホール・バイ・ホール」を滑らかに、常に絶“口”調といった感じで話してくれるのが青木プロでした。私が接したプロゴルファーの中で青木プロほど、18ホールで自らがやったことのすべてを鮮明に把握している選手は、そうそういなかったですね。

取り囲んだ記者連中に向かって「オメーら、見てなくちゃダメだろ。しっかり歩いて仕事しろよ」など辛らつな“青木節”を放ちながら、1番から18番までのブレーの解説が始まります。

それは、まさに微に入り細に渡って・・・で、芝の一本一本の状態まで記憶に残しているのですからたいしたものです。

そうした青木プロに接して思うことは、名手というものはやはり、1番から始まる18ホールの戦いで、この1打をどうしたいのか、という目的があって打ち、漠然とした無目的な1打はないのですね。無目的な1打は、ともすれば忘れてしまいがちでしょう。

そうした1打の積み重ねが、キャリアとして記憶に刻み込まれ、状況に対応する強さを生んでいるのでしょうね。

まだ15歳の中学生・藤井四段が、どれだけのものを積み重ねているのか、それは分かりませんが、やはり、記憶力というのは、欠かせない武器になっているのではないでしょうか。

プロボクシングの元世界王者・浜田剛史氏と話していたとき、面白い話が出ました。

〈試合が近づくと、だいたい寝る前などに相手の戦い方を想定して頭の中で展開を組み立てるんですけどね。1R、2R・・・相手がこうきたら、こうかわしてこうする、と進んで途中、なぜか手がスムーズに出なくなるときがあるんですよ。不思議なもので、こんなとき、実際の試合でその場面、打ち込まれています〉

浜田氏のこの話も興味深いものがあります。

青木プロの1打に、藤井四段の一手に、もちろん無目的なものはなく、それは浜田氏の1撃にも当てはまり、無目的になってしまうと反撃を受ける、ということなのでしょうね。

勝負事は、まぐれでは勝てない、と言われるのは、ある意味、戦う面々のこうした下準備の上に成り立っているからなのでしょうか、とも思いますね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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