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歌舞伎十八番「外郎売」あれこれ

一人で大笑いしてしまった話です。

東京都・小池百合子知事が、GWの大型連休を前に「ステイホーム週間」を強く宣言した4月25日の土曜日のこと。CATVの日本映画専門チャンネルが、以前に放送されたテレビドラマ「まだ結婚できない男」を「週末“イッキミ(見)”ドラマ」として初回から最終回まで、それこそ一気に放送してくれており、主演の阿部寛演じる偏屈で皮肉屋の建築家・桑野信介が面白過ぎて腰を据えて観(み)てしまいました。

大笑いしてしまったのは、こんな場面でした。

マンションに住む桑野“阿部寛”信介の部屋の隣人、女優のタマゴ・戸波早紀(深川麻衣)がある日、信介に台詞の稽古の相手を頼みます。

あわてた信介は、いったん部屋に戻り、そこで始めたのが「外郎売(ういろううり)」の口上、あの長台詞だったのです。

この「外郎売」は市川家(成田屋)の七代目・團十郎が“家の芸”として選定した「勧進帳」(かんじんちょう)や「暫」(しばらく)などを「歌舞伎十八番」とした演目の一つです。

見どころ・聞きどころは「拙者親方と申すは、お立会の中(うち)に、ご存知のお方もござりましょうが、お江戸を発(た)って二十里上方…」で始まる、途中で難解な早口言葉も加わってくる、だいたい8分前後もかかる口上、長台詞です。

知る人ぞ知る…というか、演劇関係者やアナウンサー、声優など言葉・声を仕事とする方々は、ほとんどが、発声練習の教科書にもなっているこの難関突破に汗を流したことと思います。

私も、まあ大きな声では言えませんが、茅ケ崎市(神奈川県)を拠点に活動を展開させている茅ヶ崎市民劇団「湘南座」の一員として末席を汚していますが、稽古のときはだいたい、この「外郎売」を読むことから始まります。

流暢だった俳優・阿部寛の口上

声の出し具合とか滑舌とか、あるいは腹式呼吸の具合などを、これでつかんでいくわけですが、テレビの中でそれを桑野“阿部寛”信介にやらせたことが、脚本家のマニアックなイタズラ? 的で面白く、思わず腹を抱えてしまったわけでした。阿部寛はさすが、流暢で上手かったですね。

が、しかし、ですよ。この「外郎売」を全部読み切ることの難しさ、加えて最後は暗記するまでに至らなければならないのですから大変ですよ。しかも「湘南座」の座長によれば「こんなことは出来て当たり前!」というわけです。

ちなみに途中に出てくる早口言葉では-。

「(略)来るわ来るわ何が来る。高野の山のおけら小僧。狸百匹、箸百膳、天目百杯、棒八百本。武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三(み)ぶぐばぐ。菊、栗、きく、くり、三(み)菊栗、合わせて菊、栗、六(む)菊栗…(略)」

といった言葉が延々と続くのですね。

昨年のことでした。私たちが汗を流しながら稽古を繰り返しているとき、東京・歌舞伎座で開催された「七月大歌舞伎」(7月4日初日)で市川海老蔵(十三代目・市川團十郎白猿を襲名予定)の長男・堀越勸玄(かんげん)クン(八代目・市川新之助を襲名予定)が、わずか6歳にして約4分の短縮版をつっかえることなくやり遂げたのですね。
(注=襲名の「予定」は新型コロナウイルスの感染拡大のため襲名及び襲名披露興行が延期されているため)

それを聞いた座長が「6歳が出来てキミたちが出来ないのか。ああ、情けない…」と言いました。

が、これには劇団仲間、論議を生みました。

〈6歳が(出来た)…だから(年上の)オレたちも出来て当たり前だろう〉

〈6歳だから(出来た)…だからオレたちの固くなった頭では無理だろう〉

…といったやりとりです。

「が」と「だから」の違いが、思わぬところで浮き彫りにされ、このときは一同、それぞれに思い当たるフシがある胸中を受け止めていましたっけ。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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