「雪辱」か「リベンジ」か?

新しい言葉の出現は当初、その使われ方に新鮮さを感じたり、あるいはまた、ちょっとね~と違和感を感じたり、とさまざまでも、ときの流れとともに、次第にそれが普通に、当たり前のように、慣れ親しんでいくものなのですね。

文化庁が9月21日に発表した平成27年度の「国語に関する世論調査」の中で〈「リベンジ」という言葉の使われ方が「雪辱」を上回った〉という一つの結果を出していました。

〈リベンジ(revenge)〉=「復讐 仕返し」(三省堂編「カタカナ語辞典」)

調査は、同義語の漢字とカタカナの表現で〈どちらを主に使うか〉を、全国の16歳以上の男女を無作為に抽出、個別面接を行ったもので、その割合は「リベンジ61・4%」「雪辱21・4%」となった、とのことでした。

確かに昨今、リベンジの意味を聞かれて「雪辱」とか「復讐」などの言葉がすぐに出てこないほど、カタカナのほうがより多く、普通に話されたり、書かれたりしています。

この項目には「運動選手」と「アスリート」ではどちら? の質問もあり、これもやはり、カタカナ優位で「運動選手33・3%」「アスリート46・0%」となっていました。

スポーツの各ジャンルで「リベンジ」という言葉が市民権を持ち、違和感なく使われるようになって以降、私たち書き手の立場からすれば、使い方に気をつけたい意識はあります。例えば高校野球などの場合、復讐など(個人的な恨みも含み)の意味合いを色濃く持つリベンジより、悔しさを晴らす、あるいは、借りを返す、という意味合いの雪辱のほうが、使い方としてはスポーツ的でいいのでは? という気がします。

調査では「同義語の漢字とカタカナ」としていますが、実際は言葉が漂わせるものに結構な差があり、単純に、カタカナのほうが今ふうでカッコいい、といったところでは収まらないものがあります。運動選手とアスリートも、そのあたりは、同じようでも微妙に違いはあり、何が何でもアスリート、という使い方には注意したいですね。

・・・ところで「リベンジ」という言葉が、新聞各紙に掲載されるようになったのは、1999年(平11)の「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれたことが大きなきっかけとなりました。

市民権を得た「リベンジ」優位の裏に・・・

この年、プロ野球・西武の松坂大輔投手が、ロッテの黒木知宏投手と投げ合って敗れ、次の対戦で雪辱、松坂の口から「リベンジ」の言葉が出て一気に広まったのです。

私にとって、リベンジという言葉が身近になったのは、立ち技打撃系格闘技として人気を誇った「K-1」が使ったことにありました。

1993年に誕生したK-1は、以後、シリーズ化されていく中で格闘家たちの間に数々の因縁が生まれます。

初めて「リベンジ」のタイトルが付けられた大会が行われたのが1994年9月の「K-1 REVENGE」(神奈川・横浜アリーナ)でしたが、これは、今は亡きアンディ・フグさんのために用意された舞台でした。

同年4月に「GP決勝戦」が開催され、優勝候補に挙げられたGP初参戦のフグさんは、1回戦で総合格闘家のパトリック・スミスと対戦、何と1回19秒でまさかのKO負けを喫してしまったのです。

その借りを何とかしなければ先に進まない! と開催された、それから5カ月後のリベンジマッチ。フグさんがスミス戦で雪辱を果たした(1回56秒KO勝ち)ことはいうまでもありません。

発足当初のK-1からスタートしたリベンジという言葉が、じわじわと芽を出し始め、松坂が格闘技好きでK-1ファンだったかどうかは知りませんが、プロ野球の場で飛び出して脚光を浴び、ついには市民権を持つに至ります。

こうなると「雪辱」という日本語はスミに追いやられて忘れられ、すべてが「リベンジ」一色に染められていきます。

「国語に関する世論調査」はまた、若者言葉などでも代表的な「ら抜き言葉」の使用頻度が増え、本来の使い方の割合を上回ったことも報告しています。

つまり-。

「見られた」(44・6%)→「見れた」(48・4%)
「出られる」(44・3%)→「出れる」(45・1%)

-といった具合です。

若い年齢層が普通に、日常的に使い、使われ方が当たり前になるかもしれない「ら抜き言葉」は、いつの日か正誤の立場を変えてしまうことになるのでしょうか。

そのあたり、ちょっと気になることではありますね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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