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微笑ましい“引き売り”風景

夕方になると豆腐屋さんのラッパが住宅街に鳴り響いていたのは、そう、私が確か、小学生のころでしたから、昭和30年代だったでしょうか。

覚えている方もいることでしょう。あの「プーパァプー」という独特の響き。記憶を手繰(たぐ)ると豆腐屋さんのラッパは、遊んでいる子供たちに“もう、うちに帰る時間だよ~”と夕方の時間を告げているようでもあり、もちろん、台所の母親に“あっ、通り過ぎちゃう、早く追っかけて買ってきて!”とシリを叩かれる、本来の役割もあって、のどかでした。

そんな風景が消えて久しい昨今、私が住む神奈川県藤沢市に“引き売り”スタイルの豆腐屋さんが現れたのは、今夏前のころからだったと思います。リヤカーを自転車で引き、風にはためく幟(のぼり)には「野口屋」の文字が染め抜かれています。

以前の時代、豆腐を入れた箱を荷台に乗せた自転車でラッパを吹いていたのは、たいてい豆腐店のオヤジさんでしたが、年月を経て再登場の今回は、若者であることが特徴です。それもやたらに元気がいい若者ぞろいで、私が出会った数人は、いずれもニコニコと笑顔を絶やさず、すれ違う人たちに大きな声で「コンニチハ~!」と声を掛けているのが印象的でした。

ある日、道端で休憩中の売り手(この彼は25歳でした)に声を掛けてみました。

「豆腐の引き売り、珍しいね。売れ行きはどうなの?」という私の問いかけに「最初は“何やってるの?”という感じでしたけどね・・・。でも、最近はやってる内容が分かってきたのか、声を掛けられる回数が多くなりましたね」と売り手の彼は笑顔を見せました。

人々が求める“昭和”への愛着

自転車でリヤカーを引くという“今ふう”ではないスタイルと売り手の明るさについ、声を掛けてみたくなり、雑談を続けながら“ではひとつ”と買ってしまうのが、この引き売りの良さでしょうか。つまるところ、このスタイルは、昭和30年代の風景、昭和レトロそのものなのです。

では、どこの会社が・・・と「豆腐 野口屋」で検索すると、いきなり「食~べるも~の(ターベルモーノ)」が出てくるのも、人を食った、というか、面白い話です。「株式会社ターベルモーノ」は03に設立された会社(本社・東京=野口博明社長)の社名であり、ざる、絹、木綿など各種豆腐を中心として湯葉や油揚げなど野口屋ブランドの食品の製造・販売を行っているのだそうです。

車を使わず自転車&リヤカーによる無公害販売、売り手の笑顔がつなぐ地域の人々とのコミュニケーション、そこで売る商品が豆腐類という健康食品・・・。そこに創業者・野口社長の、今の時代に求めたいもの、目指したいもの、が浮かび上がって来るようですが、つい微笑ましさを感じてしまう“引き売り”の風景を見るにつけ、結局、人々が求めたいものは、時代がどう変わろうと、こうした触れ合いによる安らぎなのかなァ、と感じられてなりません。

「ターベルモーノ」のホームページの中で野口社長はこう話していました。

〈「食べるもの」は命をつなぐ薬。一人でも多くの人々の健康や幸せに貢献できるような商売を目指しています。豆腐という日本人にとってかけがえのない「食材」を通して、また、販売スタイルにこだわった引き売りの「ふれあい」を大切にしながら、お客様に喜んでもらうことが当社の方針です〉

豆腐店のオヤジに代わって今、笑顔でリヤカーを引く若者たちの頑張りが、あるいは地域に住む高齢者の“縁づくり”に一役買い、街に活気を与えることになるなら、この試みは意義があります。





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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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