魅せてくれたレジェンドの復帰戦

3階級制覇を達成したプロボクシングのWBC世界スーパーバンタム級王者・長谷川穂積(34=真正)が感慨深げに言いました。

〈やっぱりね、大勢のお客さんに見られて戦うことは、まだやれるなら、簡単に辞められないことなんですよね〉

長谷川より3歳年上のマニー・パッキャオ(37=フィリピン)の引退宣言撤回、7カ月ぶりの復帰戦-。

試合を中継する「WOWOW」(10月6日午前10時~)のゲスト解説を務めた長谷川は、自身の気持ちを交えながら、パッキャオの正直な胸の内を代弁してくれました。

10月5日(日本時間同6日)に米ネバダ州ラスベガスのトーマス&マックセンターで行われた王者ジェシー・バルガス(27=米国)vs挑戦者パッキャオのWBO世界ウエルター級タイトルマッチ。超満員1万6000人の観衆を集めた中で元6階級制覇王者は、リングに向かうときから笑顔を見せ、試合をすることが本当に楽しくて仕方がない、といった気持ちを全身に漂わせていました。

パッキャオは、今年4月のティモシー・ブラッドリー(米国)とのラバーマッチ=判定勝ち=を最後に現役引退を表明しました。試合後の、まだやれるのでは? の質問に〈フィジカルは続けられる。だが、フィリピン国民のために辞める〉と語りました。

実際、これまでも下院議員としての政治活動と二足のワラジを続けてきましたが、ラストマッチ後の5月に上院議員に当選してからというもの多忙を極め、復帰を宣言しても、殺人的スケジュールに追われ、この試合も議会が終了する時期に組んでもらった、などという経緯があったほどと言われています。

注目の復帰戦は、パッキャオのスピードは鈍っていないか、鋭く踏み込んでの左は維持されているか、というところにありました。

いきなり王座獲得が巻き起こす波紋は?

相手の王者バルガスは、身長・リーチともパッキャオより10センチ上回っており、大きい相手に慣れているとはいえ、パッキャオには、どう懐に飛び込むか、の鋭い動きが求められる試合でした。

序盤の主導権争い-。

パッキャオは、上体を振って中へ飛び込む態勢で前進、プレッシャーをかけます。バルガスは、距離の長いジャブで応じますが、2回にジャブの打ち終わりに左を合わせられ、ストンといった感じで腰を落として尻もちをつき、ダウンを喫してしまいます。

このダウンにさほど、肉体的なダメージはなかったものの、精神的なダメージがないわけはなく、以後は全体的にパッキャオのペースで試合が進められ、そのプレッシャーにバルガスは、カウンターのチャンスをうかがう、受け身の戦いを余儀なくされてしまっていました。

パッキャオの復帰の決断には、もちろん長谷川が指摘したような要素が根底にあるにしても、表向きは、行政でもボクシングでも、両面から国民に勇気を与えたい、というところにありました。

だから、この復帰戦には、観(み)る側に“何か”を期待させるものがあったと思います。

結果は、パッキャオが攻め、バルガスが守る、という展開で判定に持ち込まれ、3人のジャッジは、1人が114-113、2人が118-109、でパッキャオを支持、3-0勝利となりました。

試合後にパッキャオは、もっとできたかもしれないが慎重に戦った、と言い、バルガスは、パッキャオのスピードに舌を巻き、私の戦いのクオリティーを上げる試合、とレジェンドの勝利を称えました。

パッキャオには、負けられない試合、まず勝つこと、が義務付けられ、そのために無理は避けたい、危険は冒さない試合運びが優先されたのでしょう。

観る側が期待した衝撃的なKOシーンなどは見られなかったものの、フルラウンド動き続けた37歳のスタミナとか、最後まで衰えなかったスピードとか、やはり〈Manny is Back〉のインパクトはありました。

パッキャオの復帰、いきなりの戴冠でまたまた、中量級戦線に刺激的な波紋が広がりそうです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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