“いぶし銀”の輝きを放った解説

ズバッと歯切れがよく、ときには厳しく、ときには苦労人らしく優しく包み込み、聞き応えのある解説でした。

USLPGAツアー「ISPSハンダ女子オーストラリア・オープン」(2月19日最終日、オーストラリア・アデレード=ロイヤルアデレードGC)を生中継したWOWOWで解説を務めた森口祐子プロ(61)です。

例えば-。

最終日、逆転優勝した張ハナ(韓国)と同組で回った野村敏京(24=フリー)が、2人ともまだ、首位に2~3打差の圏内にいるにもかかわらず、途中、おしゃぺりしながらラウンドしているのを指摘して・・・。

〈仲がいいのはいいけれど、ゴルフは微妙ですからね、そうすることによって(リズムが)崩れる要素もある。私の時代は、そういう時代だったこともありますが、仲がいい悪いではなく、競り合う相手とは話しませんでしたね〉

森口プロが、岡本綾子、大迫たつ子、台湾の涂阿玉らと激しく競り合っていた1980年代前半、私はスポニチ本紙のゴルフ担当記者をしていましたが、このころ、20代の森口プロは、キュートな顔立ちに似合わず、凄かったものです。

泣く子も黙る岐阜関の井上清次(故人)門下生。心身を厳しく鍛えられた森口プロのゴルフは、持ち前の負けじ魂もあったでしょうが、コースをねじ伏せて戦いを挑む激しさがありました。若いころを振り返って森口プロは「昔はね、365日、自分の日でなくちゃ嫌だったものよ」と話しています。

一転、ルーキーの畑中奈紗(18=森ビル)には、母親のような温かい目を向けます。

プロ・デビュー戦となった1月下旬の開幕戦で予選落ち。第2戦の今大会、予選は通過しましたが、第3日に6オーバーの79(パー73)を叩いて(通算2オーバー)崩れます。それでも最終日に2アンダーと巻き返し、通算スコアをイーブンに戻しました。

〈やっぱりプロですからね。オーバーパーは避けたい。4日間、トータルでイーブンは最低条件だと思います。その意味でよかった。彼女の攻撃的なゴルフは、アメリカで通用すると思いますよ〉

経験に裏付けられた言葉の重さ

さらに-。

〈リラックスしている状態なら、どんなスコアでも出せる連中が集まっているのが、米国のツアーですね。重圧がかかって急激に心拍数が上がったときにどういうプレーが出来るか、それが勝負の分かれ目となります〉

前年のこの大会でツアー初優勝を飾り、今年は前年優勝者としてプレッシャーがかかった野村にも言えることですが、大事な場面でどう肩の力を抜けるか-。

〈肩の力を抜くって、言葉は分かりやすいけど、実際は難しいですよね。私は(力を)入れるだけ入れて、その後にフッと抜ける感じを体に覚えさせようとしていました〉

最終日に最終組で回れることは〈本当に誇らしいことなんです。半面、最終組で優勝できず、主役で最後の18番に戻ってこられなかったときは、寂しいものです〉

最終組で回ったリゼット・サラス(米国)やスー・オー(オーストラリア)は、特にオーは地元だけに寂しさは大きかったことと思います。

一方、17番(パー5)のイーグルで逆転優勝を決めた張ハナに向けては-。

〈優勝したときってね、ああ、我慢のしがいがあったなァ、とつくづく思う瞬間なんですね〉

そういえば張ハナも、前半アウトは1ボギーのみで我慢の展開でした。

28歳で結婚した森口プロは、その後、出産、産休、ツアー復帰を繰り返し、家庭に入ることに悩んだり、また、内臓疾患で入院したりした時期もありました。

年齢を重ねて今、ゴルフっていろいろな意味で自分が試されるゲーム、と思い、コースと対話する柔軟性も身につけました。だから、聞く側も、彼女の数々の経験が解説に生かされているなァ、言葉に重さがある、と思います。

同一大会連覇を逃がした野村は残念でしたが、それに代わって森口プロの解説が“いぶし銀”の輝きを放っていました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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