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さよなら! もう見られない“神の左”

力なくリングを下りる男の両目には涙があふれていました。

その背に会場を埋めた8500人観衆(主催者発表)がねぎらいの言葉を投げかけます。・・・渦巻く“慎介コール”-。

リング下でその光景を見ていた私は、伝わってくるその男の辛さをビシビシと感じ、こちらも思わず、目頭を熱くしてしまいました。

3月1日夜、東京・両国国技館で開催されたプロボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ、王者ルイス・ネリ(23=メキシコ)との再戦に臨んだ前王者・山中慎介(35=帝拳)です。

ネリを“王者”と書きましたが、試合前日(2月28日)の計量でウエートを落とせず王座剥奪の失態。この段階で肩書きは“前王者”となりました。と同時に山中も“前王者”から“元王者”に・・・。

この肩書き変更の裏には、単に「前だ」「元だ」ということ以前に多くの問題が含まれていました。

まず、ネリには山中との初戦(2017年8月15日=4回TKO勝ち)後、ドーピング疑惑が勃発し、それを受けて今回の再戦が指示されました。

その経緯から何が何でも“正々堂々”が求められた再戦。そこで体重を落とせずに(1・3キロ増)王座剥奪の失態。試合でのウエートは58・0キロまでの増量が認められましたが、当日計量後のネリは、体重を60・1キロに増やしています。

ちなみに山中は、59・2キロ-。正々堂々とは言い難い“不公平”です。

敗戦の山中が引退を表明

それ以上に山中は、この再戦にボクサー人生のすべてを懸けてきており、ネリの失態に怒りを爆発させるとともに最も大事なモチベーションの低下を引き起こしてしまいます。

山中が勝てば王者に復帰できるにしても、前王者とこの試合を戦うつもりなどない、との失望-。それは試合にモロに出てしまいました。

振り返ってみましょう。

スタートの山中は、右ジャブで距離を取り、左を放ついつもの展開。ネリが出てきたときも腰を落として迎撃の態勢を取っています。

これは初戦での4回、ネリのプレッシャーに棒立ちとなり、対応できなかったことを反省してのものでした。

が、山中は1回、ネリのカウンターの右ジャブを受け、思わず両手をついてしまいます。レフェリーは「スリップ」としましたが、意外にこれが効いており、その後の連打でダウンを喫し、2回にはネリの連打を受けて3度のダウンを喫し、2回1分3秒TKO負けとなってしまいました。

リング下で試合を見守っていた元世界王者の浜田剛史氏(帝拳代表)が言いました。

あんなスリップなどいつもはしないですよ。この試合にすべてを懸け、自分を高みに追い込んできた矢先のネリの失態にモチベーションを失い、築き上げたすべてが崩れ、緊張感の欠如が、山中らしからぬ展開にしてしまっていましたね

それにしても・・・プロボクサーの内面は怖いものですね。モチベーションを失ったとき、山中ほどの名ボクサーでも、まったく戦えなくなってしまうのですから・・・観る側にしてみても、残念、悔しい、の言葉しか出てきません。

具志堅用高の持つ13試合連続防衛の日本記録に“あと1”までに迫りながら、ネリに阻まれた男は、ついにこの試合を最後に現役を引退することを表明しました。

最後の試合がなぜ、こんなことになってしまったのか、これは単にネリ個人の怠慢だけでなく、ボクシング界全体の問題としてとらえなければ、また同じことを繰り返すことになってしまいますね。

早急にルール改正などが必要のように思われます。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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