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勝負の世界に生きるということは・・・

3月1日夜、東京・両国国技館で開催されたプロボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ-。

元王者の山中慎介(35=帝拳)は、体重増で王座を剥奪される失態で“前”王者となったルイス・ネリ(23=メメキシコ)に敗れた後、控室で今後を聞かれ「もちろん、これが最後です。これで終わりです」と言いました。

これより前の2017年8月15日、京都・島津アリーナ京都で王者・山中の13度目の防衛戦が行われ、このとき挑戦者のネリに4回TKO負けを喫し、王座を奪われました。

敗戦から一夜明けた8月16日、記者会見の席で山中は「進退については、まだ結論が出せないのでもう少し、考えさせて下さい」と話しています。

この「進退保留」から「これで終わりです」までの約7カ月間をNHK総合テレビのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル~仕事の流儀」が追跡しており、興味深く観(み)させてもらいました。

3月5日午後9時25分から放送された「再戦へ 秘めた決意~プロボクサー・山中慎介」がそれです。

現役続行か、もう引退か、逡巡する山中のもとに8月下旬、ネリの薬物疑惑が届けられます。禁止薬物の「シルバテロール」に陽性反応を示したというドーピング違反疑惑です。これに関しては、意図的だったとする証拠が不十分のため、ネリへのペナルティは回避され、WBCは再戦を指示するに至りました。

山中はこれを受け、再戦に向けて立ち上がります。

番組内で山中は、再起の理由を問われ、こう答えていました。

〈ネリとは一度戦い、KO負けしている、という意識がボクの中にはあります。相手にドーピンク違反が発覚し、ルール違反の勝利じゃないか、と言われても、ボクにとっては、負けは負け、なんです。(再起の理由は)戦いたい相手がいる、ただそれだけです

そこから山中は、自分の戦い方を変えるための練習に取り組みます。

相手には負けたが自分には勝てた

これまでの山中は、離れて距離を取り、鋭く速い踏み込みで“神の左”を叩き込んでいきます。この踏み込みと伸びる左に相手は、来ると分かっていてよけ切れずに浴びてしまう、というのがKOパターン。

この戦い方を変えて山中は、接近戦を想定した踏み込みなしのショートを練習の主題として取り組んでいました。

好戦的なネリは初戦、滑り出しから前に出て攻め続け、勝負が決まった4回は、接近戦でロープに詰め、連打を叩き込んでいます。

これに対する対応-。

相手が出来たとき腰を落とし、防御を固めて接近戦に立ち向かうという、これまでにないニュー山中づくりの完成を目指す日々です。

インタビューに山中が答えます。

〈これまでは、勝ってきたから、自分のスタイルを貫き通すことを変えなかった。しかし、今は“とこかを変える”必要があるのでは、という考えですかね〉

“どこかを変える”は、技術的なものばかりではなく、例えば周囲のアドバイスを素直に聞くようになったこと、などにも表れます。そのひとつには元3階級制覇王者・長谷川穂積(真正=引退)に“仮想ネリ”を依頼してスパーリングを行ったことも加わりました。

山中は、長谷川に「気づいたことがあったらどんどん言ってください」という言葉も口にしています。

プロ30戦目の初黒星。具志堅用高氏の持つ世界王座13試合連続防衛の日本記録に迫りながらの敗戦。その悔しさの中で山中は、それを超えるさまざまなことを得ていたようでした。

やがて再戦の日。ネリの度重なる失態。山中の2回TKO負け。

試合後、取り囲んだ記者の前で口にした「これで終わりです」の真意をテレビは突っ込み、山中はこう答えました。

〈相手には負けたけど、自分には・・・勝てた、と思いますから〉

一時代を築いた名王者の「流儀」は、凛としており、画面なの中でいつもの柔和な笑顔を見せていました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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