強さを支える卓越した自己操縦術

プロボクシングWBA世界ミドル級王者・村田諒太(32=帝拳)の、卓越した〈自己操縦術〉に触れてみたいと思います。

村田が初防衛戦(4月15日=神奈川・横浜アリーナ)に成功して以降、ボクシング好きの友人たちを含めて、この話題が出るたびに多く聞かれたのが「もっとジャブを打てば、もっと早い回に倒せたのでは?」という声であり、その背景にあったものを考えてみようか、と思ったからです。

まあ、ファンというものは、勝てば勝ったで、ああしてくれれば・・・こうしてくれれば・・・などとあれこれ、求めるものがどんどんふくれあがるもののようで、求められる選手も、大変だなァ、というものを感じます。

初防衛戦というメンタル的に難しい戦いの中、8回TKO勝利は、状況を考えれば“よくやった”“上出来だった”と受け止めるべきでしょうが、そうであっても村田自身、その内面には、ファンが求めるもの同様の、もっと早い回に・・・という“はやる気持ち”はあったようです。

ボクシング好きの友人たちの要求に対しては、そういうけどねェ、あの舞台にあって〈早い回に・・・という“はやる気持ち”を抑えられたことこそに村田の強さがあった〉と思うよ、と言っておきましょうか。

なぜなら試合後の会見で、記者の質問に対して、村田はこんな言葉を口にしていました。

-もうちょっと早いラウンドで倒せたのでは?

村田「無理して行けば、という話だと思うんですけど、ボクは無理して行くのがいいことだと思わないし、ベストを尽くして、その結果が8ラウンドだったということです」

ウ~ン、なるほど。村田が挑戦者エマヌエーレ・ブランダムラ(イタリア)を倒すまでの7ラウンド、計21分間は、はやる気持ちをどう抑えるか、を念頭に置いた〈卓越した自己操縦術〉の元で戦われた、ということなのですね。

考えてみれば、村田の強さは、どんな場面でも〈自分をコントロールできる〉というところにある、ということなのでしょうね。

村田が示す夢を現実に・・・

王座を獲った後の初防衛戦は、王座を獲ることよりも難しい、と言われます。

なぜか? それは、王座を獲ったことによって取り巻く環境が変わり、それまでは自分のための戦いだったものが、あるいは人のために戦わなくてはならなくなるようにもなり、そこに邪念というか、余計な考えが入り込むから、というのが一般的な解釈となっています。

戦前、それを聞かれた村田はこう答えています。

村田「王者となって、その強さを見せつけようとする過剰な意識にあると思いますね。だから、プレッシャーをかけて距離を詰めていくのがボクのスタイルで、それを変えることはありませんが、気持ちが前のめりになることは避けたい。ある程度の距離を保ちながらプレッシャーをかける、ということですね」

試合はまさに、その通りの展開でしたね。

ジャブは出さなかったわけではなく、むしろ、出せば効果的に命中していましたが、意図的に手数を抑えて前進に重点を置いたということでしょう。速い動きで連打するブランダムラに先手を取られると厄介、ということを承知した村田の戦法だった、といえるでしょうか。

村田という男は、とことん“分析マニア”です。

相手のいいところ、悪いところ、自分のいいところ、さらに悪いところまで、徹底的に“趣味的”に分析・研究するようなボクサーです。

常に考えて臨み、そうして戦う自分をまた、冷静に分析しながら、第三者的に見ているもう一人の自分がいます。

だから重圧を感じる試合でも、緊張している自分を、もう一人の自分が“なに緊張しているの?”と笑って眺めているから、表向きは緊張を楽しんでいるように見える、というのが村田という選手なのですね。

村田の強さは、この自己操縦術に尽きますね。

計算通りに気持ちを抑え、相手を寄せ付けなかった初防衛戦での凄さを考えると、この選手はひょっとすると、日本人選手には遠い階級だった世界のミドル級で勝ち続けるのではないかと思ってしまいます。

次戦以降が楽しみになりましたね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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