映画「太陽がいっぱい」を観に行く

1960年(昭35)というと、日本は“高度経済成長期”の始まりに当たり、世の中には転換期特有の過激な出来事が多発した時代でした。

60年安保闘争の激化で当時、デモ隊に加わっていた東大生の樺美智子さんが死亡した事件。高度経済成長の象徴として石炭から石油へと変わる“エネルギー革命”を背景とした炭鉱業界の合理化(北九州の三井三池炭鉱の労働争議)。さらには社会党の浅沼稲次郎委員長の右翼少年による刺殺事件などなど・・・。

ちなみに私の1960年は16歳の高校生でした。仲間には横須賀の軍港に石を投げに行ったヤツもいて、この時代の高校生活3年間は結構、多感に揺れ動いたことを記憶しています。

前置きが少々、硬くなりましたが、1960年に焦点を当てたのは、ルネ・クレマン監督の仏・伊合作映画「太陽がいっぱい」が同年に公開されたからです。

かつての名画を上映してくれている「午前10時の映画祭」は、映画好きの友人Oクンともども、いい映画を見逃したくないネ、と常に上映作品をチェックしているのですが、オッ、今「太陽がいっぱい」をやっているぞ、行こうか、ということで5月4日、上映館に足を運びました。

この映画は、言うまでもなくアラン・ドロンの魅力が詰まった作品です。始まる前、ロビーで雑談していた高齢の女性グループは、その話の内容から、アラン・ドロンがお目当てのようでした。

確かに1957年、22歳でデビューした当時は、甘いマスクの好青年役をあてがわれ、ハンサムの代名詞のような存在でしたが、25歳で臨んだ「太陽がいっぱい」の、貧しく孤独で内面に黒い野心を秘めたトム・リプリー役で見せた“翳(かげ)りのある美貌”は、アラン・ドロンの新しい魅力として観る側をホレボレさせてくれました。

スクリーンに映し出された青年2人は、1人が富豪の息子フィリップ・グリンリーフ(モーリス・ロネ)と、もう一人が貧しく孤独な青年トム・リプレー(アラン・ドロン)です。

アラン・ドロンに溢れる悪の魅力

リプレーは、グリンリーフの父親から息子のフィリップを、謝礼金付きでアメリカに連れ戻すように依頼されていますが、フィリップにその意志はなく、リプレーに対しては、金目当てだろ、と常に“上から目線”の物言い、行動で、リプレーの内面にくすぶる怒りが、次第にどす黒い渦に変わっていきます。

ある日、フィリップの恋人マルジュ・デュヴァル(マリー・ラフォレ)を加えた3人でヨットに乗り、フィリップとマルジェが船上で交わす傍若無人な態度にリプレーの怒りが爆発、フィリップをナイフで刺し殺し、錨とともに死体を布で巻いて海に投げ捨ててしまいます。

そこから、フィリップになりすますためのリプレーのさまざまな工作~例えばパスポートの偽造やサインを模倣するための練習、またフィリップの友人フレディ・マイルズ(ビル・カーンズ)が不審をかぎつけたところで撲殺してしまう第2の殺人などが、スリリングに緊迫感を持って描かれます。

このあたりの作業をクールにテキパキとこなすリプレー、いやアラン・ドロンには“悪の魅力”が溢れ、観る側の心をもせかせてしまうところがありました。

やがてリプレーはマルジュと恋仲になり、自殺したことになっているフィリップの、全財産をマルジュに贈るという遺言状を偽造してマルジュに送り、それを受け取ったマルジュは、例のヨットを売却するために陸に上げたところ、布に包まれたフィリップの遺体がロープでつながれたまま一緒に陸に上がってきてしまった、という結末です。

要所で流れるニーノ・ロータのあの名曲「太陽がいっぱい」の哀愁のある旋律が、大仕事を終えて一人、浜辺で「太陽がいっぱいだな。最高の気分さ」と完全犯罪に酔いしれるリプレーを包みつつ、刑事たちの包囲網もまた、リプレーを包んでくるのでした。

振り返ってみて高校生のころ、この映画をライブで観たかどうかは記憶にありません。が、どこかで数回は観ている記憶はあります。しかし、あの旋律、哀愁に満ちた「太陽がいっぱい」が、いつまでも鮮明に記憶に残っているのは、あの当時、私たち高校生の間ではギターが流行(はや)り、私もその一人として夢中になっていた時代があったのですね。

今も書棚の隅に埃まみれになって保存されいるギター用の楽譜は、数冊の中に「鉄道員」や「夜霧のしのび逢い」などがあり「太陽がいっぱい」もありました。

それらの懐かしさ・・・対照的に長い年月を経た今なお、上映時間118分が短く感じられたほどの、この映画の面白さ-。

やはり名作だね、よかったねェ、と友人0クンと昼のビールで乾杯! となりました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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