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「霊長類最強女子」の引退に思うこと

“現役引退”は長い人生、誰にも訪れる“区切りのとき”です。

特に第一線で活躍するスポーツ選手たちにとって、いつかは必ず自分で自分に下さなくてはならない“引き際の決断”は、避けては通れない難題ですね。

1月8日午後、自身のツイッターで現役引退を表明したレスリング女子の“最強戦士”吉田沙保里(36=至学館大職)の決断については、銀メダルに終わった2016年リオデジャネイロ五輪後の動向から、ひょっとしたらこのまま・・・の予感もありました。

動向とは、しばらく休養、その後に選手兼任の日本代表コーチをこなしていたこと、などですが、新年を迎え、2020年東京五輪も来夏に迫ったことから、ここまで来たなら、もうひと踏ん張り、そこを区切りにしてもらいたかったなァ、というのが、私の個人的な見方であり、多くの方々も、もったいない、せめて東京五輪まで、というのが正直なところではなかったでしょうか。

レスリング男子の元全日本覇者である父親・栄勝さん(故人)の指導で3歳からレスリングを始めて33年間。吉田は五輪3連覇、五輪を含む世界大会16連覇、さらに国民栄誉賞受賞など、数々の偉業を成し遂げました。

が、私が最も記憶に残しているのは、北京五輪イヤーに入った2008年1月、中国・太源で開かれた国別対抗戦「女子W杯」(日本は3位)でのショッキングな敗戦です。

同大会1次リーグ第2試合の対バンデュセン(米国)戦-。

吉田は攻めまくりながらも相手のタックル返しに微妙なポイントを奪われ涙を飲みました。

ここまで続けていた連勝は「119」でストップ。大会を終えて帰国した吉田は、成田空港でも泣き崩れ、敗戦に対する衝撃度の大きさを伺わせました。

涙がいつまでも止まらない吉田の口惜しさは、連勝が途絶えたこともあったでしょうが、何よりも無名のバンデュセンが放った返し技、吉田を研究し尽くしたタックル返しにより、吉田の連勝街道を支え続けた父親直伝の“魂のタックル”を返されたことにあったことと思います。

「栄枯盛衰世の習い」

負けた内容の重さに、吉田はこれからどうするのだろうか、という不安を感じさせましたが、当初、出場を回避していた同年3月開催の「アジア選手権」(韓国・済州島)に緊急参戦、優勝を飾りました。

この大会の取材に当たったスポニチ本紙の担当記者は、吉田の状況をこう語ってくれたものでした。

〈極度の緊張に包まれ、大会中まで続いた神経性胃炎で発熱が収まらない状態でした。試合は1、2回戦の段階では、腰が引けてしまい、タックルにいく距離が取れずにいた、と話していました。あの吉田がですよ〉

連勝を続けることで培った強さ。その一方、敗戦の痛手を克服して得た強さ。それにより吉田は「霊長類最強女子」の称号を手にしたのでしょうね。

余談になりますが「霊長類最強男子」は、グレコローマン・スタイル130キロ級で無敵を誇ったアレクサンドル・カレリン(ロシア)でした。

もう、古い話になりますが、私がカレリンと対面、取材に当たったのは、1999年2月のことでした。前田日明(当時リングス社長)の引退試合(神奈川・横浜アリーナ)に臨むために来日。「ゴリラより強い」と言われていた男は、書物を数冊抱えて成田空港に降り立ち、試合直前の練習の際にも詩集と小説に目を通すことを欠かさず、物静かで学者然としていました。

前田戦で観客を驚かせた、抱え上げて垂直落下式に肩から落とす得意技「カレリンズ・リフト(俵返し)」が、2000年シドニー五輪で影を潜めて敗退。五輪4連覇の野望がここで潰(つい)えました。

1987年から2000年まで13年間、国際大会で無敗。その間に世界選手権9連覇、五輪3連覇を達成。こんな破格の強者にも「栄枯盛衰世の習い」があり、ひと区切りをつけなくてはならないときが必ず来るものなのですね。

カレリンもまた、五輪4連覇ならずの銀メダルが“引き際の決断”を後押しするものになりました。

吉田は1月10日に記者会見を開く予定でいます。今後に関して口を開いてくれると思いますが、2020年東京五輪に向けて、後進の育成に携わるようなポジションにいてもらいたいと思いますね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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