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熾(し)烈な戦いの裏にあるもの

4月8日付の新聞各紙に“ちよっといい話”が掲載されていました。

韓国の「2008平昌記念財団」が4月7日、昨年2月に開催された平昌冬季五輪のスピードスケート女子500メートルで優勝を争った1位・小平奈緒(32)と2位・李相花(イ・サンファ=30)に「韓日友情賞」を授与した、という記事です。

この出来事は、4月8日朝のテレビの情報番組でも報じられていましたが、平昌記念財団の、五輪の遺産を後世に伝える、という活動趣旨に合ったものと判断されたとのことでした。

あのシーンは今なお、観(み)る側の記憶に多かれ少なかれ、感動的な場面として刻まれていることと思います。

スピードスケート女子500メートルのメダル争い-。

李よりひと組早くスタートした小平が36秒94の五輪新でトップに立ちました。それを追った最終組の李は、しかし、37秒33で小平に届かず2位・・・。

李は2010年バンクーバー、2014年ソチと五輪2連勝を達成。この地元開催の五輪には3連覇が懸かっており、その期待で会場には“イ・サンファ・コール”が渦巻く中でのレースでした。

レース後、韓国国旗を手にリンクでむせび泣く李。そのとき、日章旗を肩にかけた小平が近寄り、いたわるように李の肩を抱き、声をかけました。

「チャレッソ(韓国語で『よく頑張ったね』の意)」

お互いに尊敬すればこそ・・・

地元開催の五輪、のしかかる重圧・・・ともに切磋琢磨し続けた好敵手同士。李がいたから小平がいて、小平がいたから李がいる・・・李の胸中など、それはバンクーバー、ソチともメダルに届かなかった小平には手に取るように分かっていたのでしょう。

続けた言葉が「私はずっとリスペクトしているよ」-。

いいですねェ。韓国が選んだ「韓日友情賞」にふさわしいフェアプレー精神、ラグビーで言う“ノーサイド”です。スポーツには常にこういう感動が表裏一体的にあり、私などは長い記者生活の中で結構多くそういう場面に接しながら、すぐウエット状態になってウルウルしてしまいます。

比較はちょっと難しいかもしれませんが、かつて総合格闘技リング「PRIDE」が人気絶頂だった2000年代、グレイシー・ハンターとして名を馳せた桜庭和志の前にブラジルのヴァンダレイ・シウバが立ち塞がりました。

シウバは“戦慄のひざ小僧”という異名を持つ打撃のファイター。初戦で桜庭はボコボコニされて負け、2度目、3度目も惨敗を喫し、ミドル級の王座交代を余儀なくされました。

それにしても非情すぎるシウバの打撃。私はシウバに聞きました。

-なぜそこまで非情に殴れるのですか?

シウバが答えます。

〈私はサクラバの強さに憧れ、彼を尊敬しながらここまで来た。リスペクト出来ない相手は殴れない。それは単なるケンカだからね。だからサクラバには本気で立ち向かう〉

なるほど・・・とは思えませんが、そういうものなのでしょう。格闘技の世界に身を置くファイターたちは、お互いに認め合い、リスペクトし合い、だから戦いに“容赦”が入り込む余地がないのですね。そして・・・終わればノーサイドです。

授与式で小平は「思いがけず大きな注目を浴びたが、私たちにとってあの情景は特別なものではなく、ごく自然なものだった」とクールに話したそうです。

だから・・・この2人はまた、ともに負けられないライバルとして、氷上で容赦のない火花を散らし合うことでしょう。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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