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「自粛」の形

懐かしき高校時代の同級生6人による一泊小旅行が企画され、幹事役から連絡が入ってきたのが2月下旬のことでした。期日は4月14日~15日の2日間。時期的には桜の満開か散り際のいい季節でもあり、全員が異論なく即決でしたが、その後の3月11日、日本はとんでもない出来事に見舞われてしまいました。

直後から世の中は、一斉に自粛ムード。例年ならライトアップされてにぎわう上野公園のお花見も、節電にご協力を! で元気なく、街の飲み処(どころ)も、計画停電が夜にぶつかれば、カウンターにロウソクを立てての営業と苦戦を強いられました。いえいえこんなこと、被災地の方々のご苦労を考えれば、些細(ささい)なこと、当たり前のこと、と皆が口をそろえて・・・。

沈痛の社会情勢を背景に我らが一泊小旅行の幹事役も「決行か自粛か」と頭を痛める日々が続いたようです。4月7日、携帯に入ってきたメールはこんな具合でした。

自粛か決行かの迷い

「今回の大災害は、時間の経過とともに被害甚大であったことが知らされてきました。被災地の方々のご心痛を考えますと、なかなか浮かれた気分になれないのが現状です。飲食店をはじめ観光地などは客足が遠のき、苦しんでいるようです。さて、こんな中での我らが一泊小旅行ですが、微力ながら消費のお手伝いができれば・・・との思いで実施をいたします。(中略)もし、各種信条(心情)から不参加の方はご連絡を・・・」

被災地から遠く離れて無事だった人々が、震災前に計画していたことなどを含めて何かをしようとしたとき皆、こんな気持ちを持ったことと思います。自粛ムードがそこかしこに飛び火しつつも、一方、自粛による閉塞感も危惧され、普通に・・・といつもの活動が促され、そうであっても軽薄に浮かれきれない、という自戒が心を覆っている、というのが正直なところではなかったでしょうか。

実施された我らが一泊小旅行の行く先は「湯河原温泉」(神奈川県足柄下郡湯河原町=JR東海道本線「湯河原」駅下車)です。隣に熱海と箱根を持つ湯河原は、東京の奥座敷、あるいは相模の小京都、などと呼ばれ、古い歴史を持ち、昔ながらの情緒を残す温泉地です。

そして、とりわけ私たちのお気に入りは、ここには「文士の宿」が数多くあることで事実、島崎藤村、国木田独歩、夏目漱石、与謝野晶子らが立ち寄ったり、逗留して執筆活動に励んだりした跡が、そこかしこに残されていることでした。

行動が自粛の気持ちを強くする

とはいえ、我らの短い旅は、花を愛(め)でることより団子、です。旅館での夕食を「他の客の手前もあり・・・」という幹事役の“厳命”もあり、静かに自粛気味に楽しんだ後は、部屋に戻ってさあ、酒盛り、いつものように各人、言いたい放題の丁々発止の時間が延々と展開されました。

国難的状況を引き起こした今回の大震災に際し、無事だった地域の人たちの自粛の気持ちは、確かに大事なことと思います。友人の一人は、浜通り(福島県)で苦戦を余儀なくされている人々の悲痛な声は他人事とは思えない、と言いました。そういう言葉に誰かが続き、また誰かが続き、次第に“思う心”の輪が広がって行きます。それはまた、思い切って行動したことにより、自粛の気持ちが一層、強くなっていることを感じさせました。

思うに今回の大震災への自粛は、行動を控える、中止する、などということではなく、まず被災地(者)を思う心を強くすること、その上でできる範囲のことを実行すること、なのではないか、とつくづく感じます。なぜなら、そう考えれば一時、パニック状態ともなった、人々の我欲による“買い占め”などは、起こらないで済んだことだろう、と思うからです。

毎年恒例のイベントなどは今後、節電問題などさまざまな社会的制限により、実施が危ぶまれる状態となることでしょう。が、自粛を前面に出して中止としてしまうか、あるいは制限の中で最善を尽くすか、の議論となったとき、私は極力、後者を選択してもらいたいと思います。

なぜなら、思い切って実行を決断したとき、被災地(者)を思う心は、中止のときより一層、強くなるだろうと思うからです。

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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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