採点競技につきものの悲喜だが・・・

スポーツの世界(・・・に限ったことではありませんが)勝者がいればまた、敗者がいることは当たり前のことでしょう。

とともに1990年2月10日、東京ドームで行われた対ジェームス・ダグラス戦でKO負けしたプロボクシング統一世界ヘビー級王者(当時)マイク・タイソン(米国)の世紀の大番狂わせや、レスリング女子・吉田沙保里(29=ALSOK)の連勝がストップする痛恨の黒星などの例を持ち出すまでもなく、常勝や無敵はあり得ず、必ずいつか負ける日が来ることも“想定内”としておくべきことでしょう。

その瞬間、私はそんな「無常の風」(この世のあらゆるものは生滅し、永遠に変わらないものはない、という仏教思想)的なことを頭の中に思い浮かべていました。現地時間6月9日(日本時間同10日)に米ネバダ州ラスベガスの「MGMグランド・ガーデン・アリーナ」で行われたプロボクシングWBO世界ウエルター級タイトルマッチでのマニー・パッキャオ(33=フィリピン)の敗戦(ティモシー・ブラッドリー=米国=に判定負け)に関してです。

しかし、私のそんな、ものわかりの良い? 知ったふうが、アッという間に打ち砕かれ、生臭い現実を叩きつけられたのは、直後にかかってきた電話、ボクシング好きの友人からの怒声でした。

〈おいおい、何だよ、この採点は! 誰が見たってパッキャオの勝ちだろ! ジャッジはどこをどう見ると、こんな採点が出てくるんだよ〉

私にそんなに詰め寄られても・・・といった感じでしたが、確かに試合を放送したWOWOW(6月10日午前11時から生中継)の画面からも、会場を埋めた1万6000人観衆のブーイングが聞こえました。出された採点は、3者とも115-113の2ポイント差、そして2者がブラッドリーを支持したのです。

どこをどう見るか・・・採点基準の統一を

展開を振り返ってみましょう。

2人は序盤の主導権争いから、緊迫感あふれる果敢な打ち合いを繰り広げます。パッキャオはいつも通りに右から左ストレートを叩き込み、対するブラッドリーはジャブを軸に下がらず前進、パッキャオの打ち終わりにパンチを合わせるなど負けていません。

4回を終えての印象は、手数でブラッドリー、的確な有効打ではパッキャオ。WOWOWの解説を務めるいつもの元世界王者・浜田剛史、ジョー小泉両氏の採点は、いずれもパッキャオ支持でした。小泉氏は「パッキャオの左、いつもより踏み込みが浅く、相手の前進を許していることが気になりますね」と話していましたが・・・。

5回を迎えてブラッドリーの動きが鈍ります。打ち合った序盤の消耗が感じられ、一方、パッキャオには、攻撃に“空転”が感じられるものの、攻勢点で明らかに優位を保つ中盤でした。

そして終盤、ブラッドリーが“さすが”だったのは、中盤の劣勢から対等の打ち合いに戻したことでした。となると逆にパッキャオの消耗、攻め疲れが目立ち始めます。ともに微妙な攻防となりましたが、足を使ってかわすブラッドリーには“後退”のイメージがあり、最後は失速気味となったパッキャオでしたが、全体的に有効打はどうか、と見るならやはり、パッキャオの勝利は動かないと思われる展開でした。

が・・・その結果は・・・。敗れたパッキャオは、リング上でのインタビューに「いいファイトができていたし、いい試合だったのではないかと思うよ。ダメージ? 別に受けてはいない。彼(ブラッドリー)の戦い方は、よく知っていたし、アグレッシブを通していたね」と答え、感心させられたことは、判定に対する不満は少しも出さないことでした。

ここ数年、階級を超えた数々の名勝負を繰り広げ、パウンド・フォー・パウンドの称号を勝ち取ったパッキャオの敗戦は、実に約7年3か月ぶりの出来事となり、連勝は「15」でストップしました。

当然、浮上してくるリマッチに対し「私自身は問題ない。やるならやるよ」とパッキャオは答えていました。勝ったブラッドリーも、不透明なジャッジに手放しで喜ぶわけにはいかず、リマッチに向けては「もちろんやるよ。ファンがこの結果に満足できないなら、またやりたい」と覚悟を決めた様子です。

因縁の一戦は、パッキャオの出直し戦として、また注目を集めることでしょうが、再び採点問題が起きないよう、ジャッジ連中は猛勉強が必要、管轄団体も指導を徹底してやってくれなければ、戦う選手たちが気の毒ですね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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