小津映画「東京物語」の勲章

先月(8月)の出来事ですが、日本映画の名作「東京物語」にまた一つ、輝かしい“勲章”が加わったことを新聞各紙が報じていました。

記事内容は、英BBC放送によると(同作品は)英国映画協会(BIF)が発行する「サイト・アンド・サウンド(Sight&Sound)」誌が発表した「映画監督が選ぶベスト映画」の1位に、また「批評家が選ぶベスト映画」でも3位に、それぞれランクされた、というものでした。

資料によると、この「サイト・アンド・サウンド」誌のランキングは、10年に1度、映画50選を発表するもので、今回の「映画監督が選ぶ・・・」には世界の監督358人が投票、また「批評家が選ぶ・・・」には世界の批評家846人が投票した、とのことでした。

ちなみに「映画監督が選ぶ・・・」の2位には「2001年宇宙の旅」(スタンリー・キュービック監督)と「市民ケーン」(オーソン・ウェルズ監督)の2作品が入り「批評家が選ぶ・・・」の1位は「めまい」(アルフレッド・ヒッチコック監督)、2位は「市民ケーン」、そして3位「東京物語」の順となっていました。

小津安二郎監督作品の「東京物語」(松竹=1953年製作・公開)は、国際的に評価が高く、英BBCの「21世紀に残したい映画100本」に選出され、1992年に「サイト・アンド・サウンド」誌が発表した「映画史上最良のベスト10」の3位にも選ばれています。

公開されてから実に59年が経つ今、依然としてこの作品が輝きを放ち続けるのは、なぜなのでしょうか。

時代を超えた永遠のテーマが・・・

尾道(広島県)に住む平山周吉(笠智衆)と平山とみ(東山千栄子)の老夫婦は、ある日、ふと思いついて、東京で暮す子供たちを訪ねてみよう、と話し合い、列車に乗り込みます。

長旅を終え、開業医の長男・幸一(山村聡)の家にたどりついた平山夫妻は、美容院を経営する長女・金子志げ(杉村春子)もそこに駆けつけて「暑い中、大変だったでしょう」「元気で過ごしてますか」「さあ、ゆっくり休んで、東京見物にも・・・」など、決まり文句の大歓迎を受けますが、それも到着した一日だけのこと。翌日からは、それぞれが日常の忙しさの中に入って行き、東京見物も言葉だけでなかなか、実現までに至りません。

長男一家の2階に追いやられる形となり、平山夫妻は“孤独感”を味わわされることになるのですが、用意された熱海旅行も、行ってみればただ、他客の騒々しさに眠れない夜を過ごすだけとなってしまいます。

そんな寂しさの中、戦死した次男の未亡人・紀子(原節子)の優しさだけが、年老いた平山夫妻の胸に響く、東京での唯一の救いでした。

老夫婦と再婚もせずに一人、頑張って生きる紀子の、心温まるひとときの交流には「孤独感」が共通項としてあり、それが共感となって双方を覆っているように感じます。

ハッと気がつくことは、1953年(昭28)に鋭利に示唆された今の社会の形、です。作品が公開された昭和28年は、日本にテレビ放送が開始された年です。社会が高度成長へと向かう中、家族の絆、ありかた、などにも微妙な変化が起こり始めます。田舎から東京に出てきて老夫婦が直面したことは、核家族化の冷たさであり、老いゆく者の不安、だったのでしょう。

この作品が時代を超えて注目され、そのたびに評価されるのは、それらの“先取り”が含まれていたからなのでしょう。

「東京物語」には、撮影助手として参加したカメラマンの川又昂氏(藤沢市在住)は、神奈川新聞に連載された「わが人生」の中でこの作品に触れ、こう話しています。

〈日本が世界に誇る映画監督、小津さんの名作「東京物語」は、世界でもっとも評価の高い日本映画のひとつとして、日本のみならず世界中の映画監督に影響を与え続けている。(中略)私は「東京物語」を国宝だと思っている〉

さすが! の言葉です。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR