「人類最強」から「霊長類最強」へ

さあ、出撃! です。「霊長類最強女子」がいよいよ「霊長類最強男子」超えに挑みます。

ロンドン五輪のレスリング女子55キロ級で、アテネ(04年)北京(08年)に続く五輪3連覇を飾った吉田沙保里(29=ALSOK)が、現地時間9月27日に開幕する「女子世界選手権」(カナダ・ストラスコナカウンティ)で同大会10連覇の偉業達成にチャレンジします。

昨年の世界選手権で9連覇達成の吉田は、今夏のロンドン五輪での五輪3連覇達成で、世界大会計12連覇を達成しました。これは男子のグレコローマン・スタイル130キロ級で圧倒的な強さを誇ったアレクサンドル・カレリン(ロシア)が、1988年から1999年の10年間に達成した五輪3連覇、世界選手権9連覇の世界大会計12連覇に並ぶものです。

「人類最強」と呼ばれたカレリンが、あまりの強さから、それを超えた「霊長類最強」の異名を持ち、彼の記録に並んだ吉田も、もはや「霊長類最強」の戦士でしょう。

ちなみに「霊長類」とは「哺(ほ)乳類の一目(一項目)。人間、類人猿などを含む、最も頭脳の発達した動物」-と辞書にありました。

ところでカレリンが「霊長類最強」と命名されたのは、私の記憶では日本のスポーツ新聞各紙によってではなかったか、と思います。

カレリンが来日したのは1999年の冬でした。格闘技団体「リングス」を率いた前田日明(当時40歳)の引退試合(同年2月21日=神奈川・横浜アリーナ)の相手をカレリン(同31歳)が務める、というビッグマッチが実現したのです。

知的ファイターだったカレリンに敬意

私も当時、グレコローマン・スタイルで公式戦12年間負けなし! の伝説的怪物を「人類最強の男」として、来日中は連日追いかけ、記事にしまくりましたが、試合を離れた日々のカレリンは、いかつい外観とは対照的に静かで紳士的、常に書物を手にしている、知性的なアスリートとでした。

前田との試合では、会場を埋めた1万7000人観衆にまず、カレリンは「正直言ってビックリした。凄いプレッシャーだった」と素朴に話し、五輪や世界選手権では経験したことのない重圧に押しつぶされそうになったそうですが、勝負ではしっかりと、代名詞になっている「カレリンズ・リフト」(俵返し=サイド・スープレックス)を決めて前田にダメージを与え、見応えのある攻防の末に判定勝ちを収めました。

それまで「人類最強」だった、このロシアの怪物が「霊長類最強」に変わったのは、彼が漂わす知性的ファイトに、ヒトを含む哺乳類全体への敬意を感じざるを得なかったから、かもしれません。

カレリンの「カレリンズ・リフト」は立ち技のグレコローマンならではの投げ技ですが、吉田がカレリン超えを狙う技は、やはりタックルでしょう。

吉田のタックルは、レスリングを始めた3歳時から元全日本覇者の父・栄勝さんに伝授された、いわば“伝家の宝刀”ですが、頂点に君臨すればするほど、打倒を狙う各国の刺客の戦略は厳しく、タックルも研究され尽くされ、吉田は、タックル返しという紙一重の勝負に、ときには連勝街道をストップさせられる痛恨事にも遭ってきました。

カレリンの「カレリンズ・リフト」つまり、サイド・スープレックスは、軽・中量級では普通に繰り出される技だと言われます。が、130キロの重量級で放たれることが常識的ではない、ということで、それがカレリンの強さを生んでいました。

吉田の“伝家の宝刀”タックルも、相手に研究されても追いつかない進化、来ると分かっていても掛けられてしまう進化、こそが生命線です。前に出る気迫、高速度、さらにタイミング・・・吉田流に磨きがかかっていることは、ロンドン五輪の戦いで証明済みです。

吉田が今回の世界選手権で優勝すれば、世界大会計13連覇の偉業達成となり、ついにカレリン超え、という前人未到の域に入り、押しも押されもしない「霊長類最強女子」の称号を獲得します。

歴史的ともいえる、その瞬間を見たいものです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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