観客不在の中でプレーヤーは?

プロの試合における観客は、どういう立場であるべきでしょうか。

例えば、プロゴルフのトーナメントに足を運ぶギャラリー(観客)とプレーヤーの関係について、プロゴルファーの岡本綾子は、こう語っています。

〈プロスポーツが観客を対象にしたビジネスだとしても、プレーヤーだからといって観客より一段下の存在ではないと思うのです。トーナメントをひとつのドラマに見立てれば、コースを取り巻く大ギャラリーも立派な「登場人物」なのではないでしょうか。最高の舞台を成功させるためには(略)ギャラリーだって、重要なプレーヤー(役者)のひとりなんです〉(岡本綾子著「メモリアル・グリーン」から)

これは以前、あるトーナメントでアンフェアなギャラリーが起こした、心ない出来事に対しての岡本の“抗議文”ですが、視点を変えれば、良くも悪くも観客の存在は、プロのプレーヤーにとって欠かすことが出来ず、彼らの声援、取り囲んでかもし出す熱気、などが、プロにとっても、持てる力以上のものを引き出す原動力になるようです。

10月2日付のスポニチ本紙は、同1日に愛知・名古屋市内のゴルフ場で行われたテレビマッチの収録に参加した石川遼と池田勇太が、それぞれ「ギャラリーの力を感じた。一緒にゴルフをしているんだと思った」(石川)「俺たちは驚くようなプレーをして、驚くようなスコアを出して、お金を稼いでいる。無観客となってギャラリーの大事さを思い知らされた」(池田)と語ったことを報じ、2人は無観客となって初めて、ギャラリーの存在の大きさを知らされたようでした。

国内男子プロゴルフ・ツアー「コカ・コーラ東海クラシック」(9月30日最終日、愛知・みよし市=三好CC西コース)の最終日、台風17号の接近に伴い、同大会の主催者は同日午前、安全確保のために観客を入れない無観客を決めました。

もっとも影響が出るだろう夕刻の事態に備えた早々の決定とあって、このJGTO(日本ゴルフツアー機構)が1999年に発足して以降、初となる異例の決断には賛否が渦巻いたようですが、何よりも無観客の試合は、ナイススプレーにも関係者の拍手がパラパラと起こるだけの味気なさに各選手とも、やる気が起こらない、といった、張り合いのなさに包まれた中でのプレーとなったようです。

観客の熱気が引き出すプロの力

無観客試合というとまだ、記憶に新しいのがサッカーのW杯ドイツ大会、アジア最終予選での北朝鮮vs日本戦でしょうか。日本にとってはアウエーとなる北朝鮮で行われる予定だったこの試合は、北朝鮮のフーリガン行為のため、開催地が中立国(タイ・バンコク)に変えられ、加えて無観客試合となりました。

また、プロレスの世界では、無観客試合=いわゆる「ノーピープルマッチ」というのが、しばしば行われました。テレビ局のスタジオにリングを設置してテレビ用の試合を行う「テレビマッチ」などもその例ですが、何といってもノーピープルマッチの代表格は、1987年10月4日に山口県下関市で行われた新日本プロレスのアントニオ猪木vsマサ斎藤による「巌流島決戦」でしょうか。

私がプロレスを含む格闘技系ジャンルの取材を開始したのは、もっと後のこと、K-1などが台頭してきたころですが、この当時、何でもアリ! のプロレス界でも、無観客で時間無制限ノールール、とされたこの試合は、果たし合いふうの不気味さがあって結構、迫力があったものです。

無観客といっても、結果を伝える報道関係者は欠かせず、取材に当たった私の先輩記者は後日、小舟で巌流島に渡ったものの、2時間を超える長い試合に疲れ果て、終わっても記事を送稿する手段が手薄で参ったよ! とボヤきまくっていたことを覚えています。

もうひとつ、格闘技系ジャンルで無観客の“裏マッチ”的なものに「道場マッチ」があります。つまり「道場破り」ですね。

これで有名なのが1994年12月7日、米カリフォルニア州ロサンゼルスにあるグレイシー柔術のヒクソン・グレイシー(ブラジル)が主宰する道場に殴りこんだ格闘家の安生洋二です。

安生は「裸締め」で敗戦、の結果が残されていますが、戦う2人の関係者だけが見守る無観客の道場マッチには、途中経過に結果以上のものが感じられ、何か凄惨な試合のイメージを思い浮かべてしまいます。

運営側が入場料収益なしを覚悟して無観客とする理由には、そうせざるを得ない様々な状況があるのですが、やはり、観客なしの味気なさ、には、予想を上回る失望があることが、石川や池田の感想からうかがえます。

ゴルフトーナメントでのギャラリーは昨今、やたらにカメラのシャッター音を響き渡らせるマナーの悪さでひんしゅくを買う出来事が増えていますが、やはり、岡本綾子が指摘するように〈最高の舞台を成功させるためには、ギャラリーも重要なプレーヤー(役者)のひとり〉であることが、これはゴルフのトーナメントに限ったことではありませんが、無観客となって初めて認識されることです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR