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あれから12年の本音・・・

手元にスクラップ・ブックがあります。

私がこれまでに書いた記事やコラムなどを含み、その都度、目を引いたさまざまな切り抜きが、ベタベタと貼られているものですが、06年(平18)のページに「楽しむことは力を出し尽くすこと」という見出しがつけられた、私のコラムがありました。

昨今、オリンピックなどの国際舞台で、競技を終えた選手たちの口から「楽しめた」という言葉が頻繁(ひんぱん)に聞かれるようになったことに着目した記事。〈そうした言葉が聞かれるようになったのはいつごろからだろうか〉で始まるこのコラムは、こう続けられます。

〈記憶に新しいところでは、1996年アトランタ五輪・競泳女子の千葉すずがいる。92年バルセロナ五輪でメダルに届かなかった、当時16歳の千葉は「メダルを獲らないと評価されないような空気がプレッシャーとなり目的を失った」と話した。だからアトランタでは「とにかく楽しみたい」と思い「気持ちよく泳ぐことができた」とコメント。しかし、同五輪での競泳陣はメダルなしに終わったこともあり、主将の立場にあった千葉の言葉には、少なからず違和感があった〉

10月8日にTBSテレビ系で放送された番組「壮絶・・・なぜ私はやめたのか? 伝説の引退スペシャル」(午後9時~)は、興味深いものがありました。

元競泳選手の千葉すず(現姓・山本すず氏)、元プロ野球・巨人軍投手の江川卓氏、大相撲の元横綱・千代の富士(現・九重親方)の、引退に至る背景をそれぞれ、本人が語る「今だから話せる」式の秘話で構成したものです。

番組の中の映像・・・天才少女としてメキメキ頭角を現した15歳の千葉は、屈託のない無邪気な笑顔を振りまいていました。が、注目されるがゆえのマスコミ攻勢で次第に芽生える不信感。今、振り返って「愛想よく、いい加減にでも答えられればよかったのだろうけどできなかった」と苦笑いを浮かべ、16歳で臨んだバルセロナ五輪でそれはピークに達します。

「楽しみたい」の裏にあったもの

200メートル自由形で6位入賞。「ほめてもらえると思った」(千葉)この力泳を、しかし、周囲の質問は、メダルを獲得できなかったことばかりに終始します。「結果ばかり求められて・・・。そこに至るまで皆、血のにじむような努力を重ねているのに・・・。そこを見てほしい。メダルだって獲りたくないわけがないのに・・・」(千葉)

20歳となって迎えたアトランタ五輪。10代の選手が多く代表となって年長者となった千葉は、主将の立場となったことから、自分の発言が若い後輩たちに影響力を与えることを知り「オリンピックを楽しもう」という激の飛ばし方、プレッシャーのやわらげ方をします。

そして・・・この五輪で競泳陣は惨敗します。周囲の厳しい目に反発した千葉は、現地と東京のスタジオを結んだテレビ朝日の報道番組で「楽しめた」「そんなにメダルメダルというなら自分で獲ればいい」と過激なコメント。日本国中のバッシングを受けることになり、私にしても、この番組を見るまでは、コラムに書いたような印象を千葉に抱いていたのです。

“生意気な娘”のレッテルを貼られた千葉は、アトランタ五輪後、一時引退しましたが復帰、00年シドニー五輪を目指します。しかし、国内の選考会で代表となり得る資格を得ながら代表を外され、これを不服とした千葉は、日本水泳連盟を相手どり「スポーツ仲裁裁判所」に提訴(結果は却下)するなど物議をかもし、体制側にとっては、最後の最後まで扱いにくい“問題児”であり続けました。

00年10月に引退。それから12年・・・結婚し、2児をもうけ、37歳となった千葉は、しかし、番組の中でまだ、目を赤くうるませて当時を振り返っていました。

千葉のしたことは何だったのか? それは、ただひたすら、自分が“おかしい”と思ったこと、納得できないと思ったこと、への疑問、反発、抵抗・・・天才水泳少女の純真さ、がもたらしたもののように感じます。

もっと“大人”であったなら、あるいは“大人”であれよ、は体制側、既成の大人の都合の良い「逃げ」でもあるでしょう。

対応する側は、取材者も含めて、千葉が言う「楽しめた」の裏にあるものにもっと、気がつけたなら、とも思いますが、この相互理解は、なかなか、というより、とことん、難しい問題ではあります。

そのあたりを今、大人になった千葉自身が、どれだけ理解できているか。そうあってほしいもの、と思います。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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