見る側を凍りつかせた壮絶KO劇

顔から前のめりにバタンと崩れ落ちる倒れ方は、衝撃を受けたその瞬間に失神状態に陥ったということでしょう。

それほど“この男”の「左」は、戦慄(りつ)的で、破壊的で、また凄(すさ)まじく、見る側をも凍りつかせるものがありました。

11月3日、宮城・仙台市(ゼビオアリーナ仙台)で行われたプロボクシングのダブル世界戦の一つ、WBC世界バンタム級タイトルマッチです。

“この男”とは王者・山中慎介(30=帝拳)のこと。驚きの瞬間は7回の怒涛の5連打。とどめの一撃となった左ストレートで挑戦者は瞬時に失神、病院送りとなる、王者の過激な勝利でした。

相手のトマス・ロハス(32=メキシコ)は、元WBC世界スーパーフライ級王者です。今回の試合、もちろん必勝を期して来日。2階級制覇をもくろむ、山中にとっては難敵とされていました。

帝拳の世界王者勢は、WBC世界スーパーバンタム級名誉王者の西岡利晃が敗れ、続いてWBC世界スーパーフェザー級王者の粟生(あおう)隆寛も王座を明け渡しました。

帝拳が抱える4人の世界王者のうち2人が消える悪い流れ・・・それが、今回のダブル世界戦に臨んだ残りの2人、山中とWBC世界フライ級王者・五十嵐俊幸(28=帝拳)に重圧を与えないはずがありませんが、両王者は見事にそれをはねのけてくれました。(五十嵐はネストール・ナルバエス=アルゼンチン=に判定勝ちで初防衛に成功)

さて、過激な勝利で2度目の防衛に成功した山中の試合を振り返ってみましょう。

序盤の攻防を見て、山中と同じサウスポーのロハスという選手は、独特のリズムを持っていることが分かります。つまり、1回にいきなり見せた、飛び込んで放つ左ストレートがあると思えば、下がりながらもパンチを出したり、また、巧みに距離を取って相手のパンチを遠ざけたり、山中にしてみれば、どう攻めようか? と迷う面も出てきそうな相手でした。

西岡後継! 踏み込みが生む恐怖の左

WBCが実施している4、8回に公開される採点では、4回を終えた時点で1人が38-38のドロー、2人がともに39-37で山中の優勢としていましたが、1人が出したドローが証明しているように「(ロハスは)ポイントを取ることが難しい選手」(元世界王者・浜田剛史氏)でもあったようです。

が、そんな相手に山中は中盤から果敢に攻め込み始めます。5回に右フックでぐらつかせ、6回は左ストレートを命中させて腰を落とさせます。そして7回・・・当てる距離をつかんだ山中の恐るべき攻撃が始まりました。

グクッと踏み込んで接近! まず右→左ストレートのワンツーでぐらつかせ、間髪を入れずに右アッパーから左を叩き込みます。ここでロハスは右を振ってきましたが、すかさず左ストレートのお返し。この一撃がアゴをとらえ、前述のような壮絶KO劇が演じられました。

サウスポーが武器とする「左」は、鋭く踏み込むことが伏線となって想像を絶する威力を生むことを山中が証明してくれましたが、なるほど! と思い出されたのが、西岡のV2戦、敵地メキシコに乗り込んで行われたジョニー・ゴンザレス(メキシコ)戦でした。

西岡は、この試合、3回に左ストレート一撃でゴンザレスをロープに吹き飛ばしてKO勝ちしましたが、その左の切れ味を生んだのが、鋭い踏み込みでした。

帝拳を率いる本田明彦会長は、西岡をノニト・ドネア(フィリピン)と戦わせるという、ついこの間までは“夢物語”だったような交渉を成功させたように、これからの世界王者は、ただ防衛戦を行うのではなく「誰と戦うか」が問題となる、と言います。

山中にしても、初防衛戦(12年4月)の相手がいきなり、元2階級制覇王者のビック・ダルチニャン(オーストラリア)でした。そして今回、またまた難敵のロハス・・・。浜田剛史氏は帝拳プロモーション代表の立場から、この実績が世界で認められれば、と西岡同様、山中の海外進出を期待していました。

その意味で「西岡以降」を背負う後継者は、今回の勝利と今後の可能性を踏まえて山中! にしたいと思います。もちろん、これは私の個人的な見方ですが・・・それにしても凄いKO劇でした。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR