日活ロマンポルノの時代を振り返って・・・

手元に一冊の本があります。

寺脇研氏(映画評論家・京都造形芸術大学教授・NPO法人ジャパン・フィルムコミッション理事長=同書の筆者プロフィールから)著の「ロマンポルノの時代」(光文社新書刊)です。

その冒頭「はじめに」の書き出しは、こう記述されています。

〈日活(注=1978年に「にっかつ」に社名変更)ロマンポルノがスタートしたのは1971年の11月末(注=20日)だから・・・(略)実質的に昭和最後の年になる昭和63年=1988年に終わる(注=6月10日終焉)まで約16年半わたって、夥(おびただ)しい数の作品を送り出してきた〉(注釈は筆者)

つまり、日活ロマンポルノの、記念すべき第一作として記憶に残る、白川和子主演の「団地妻 昼下がりの情事」(西村昭五郎監督)と「色暦大奥秘話」(林功監督)の2本立ては、17年前(約)のちょうどこの時期、衝撃的に世に出されたのでした。

振り返ると1971年(昭46)は、私が社会人となって2年目の年、27歳のころでした。新聞記者稼業は結構、待ち時間が長いときが多く、そんなとき、時間潰しのため、仮眠のため、しばしば映画館に飛び込んだものです。

日活ロマンポルノの出現以前、独立映画プロダクションによるパートカラー、つまり、絡みのシーンになるとカラーに変わるピンク映画が、繁華街の片隅の映画館で低料金、3本立てなどで上映されており、私もよく(訂正! “よく”ではありません)利用させてもらっていたものです。

このパートカラーのピンク映画は、よくしたもので、ストーリーのつまらなさに、うつらうつらと仮眠していても、カラーに変わると閉じたマブタ部分が明るくなり、その“信号”により、いい場面? を見逃すことは、概してありませんでしたっけ・・・。

そこで目にした悩ましき白川和子が、日活ロマンポルノの第1号女優、主役となって登場、言い換えれば日活起死回生への救世主となって登場するのですから、少なからず驚かされたものです。

反体制に支持された知的成人映画

以後、終焉までの16年半の間、この成人映画シリーズは、実に1100本が公開されたというのですから、確実に日本の映画史にとどめておかなければならない出来ごとなのでしょう。

日活は今年9月、創立100周年を迎えました。節目となる記念イヤーの中で、ロマンポルノ路線の再認識は大きなテーマとなったようで、WOWOWなどでも特集されることにより、そのシリーズを再び、懐かしさとともに目にする機会を与えてくれたことは嬉しいことでした。

日本映画界が、黄金期から斜陽期へと下降線をたどる中、日活のロマンポルノ路線は、生き残りへの苦肉の策として誕生したことは周知のことです。映画へのファン離れは、さまざまな要因がある中、最も大きなことは、カラーテレビの普及などに見られる娯楽の多様化により、わざわざ映画館に足を運ぶ必要がなくなったことによる、と言われています。

日活のロマンポルノ路線が、苦肉の策で他に選択肢もないまま、さほどの準備もなく発足した以上、それに対するノウハウが確立されていたわけではないでしょう。初めて制作に関わった監督はもちろん、カメラマンもスタッフも、ポルノ路線などは初めてのことであり、何をどうしたらいいのか皆目、見当がつかなかったことを、WOWOWが放送した特集番組の中で語っていたことを耳にしました。

何しろ「10分に1回、絡みのシーンを入れること」と「モザイクやボカシは入れないこと」との2点を基本的な約束事項として、他の部分はある意味、自由奔放につくられた作品群は、成人映画としての問題点を、社会に刺激的に振りまきながらも、一方、若者層には反体制の旗手的な要素をもアピールする“知的成人映画”の不思議さを持つジャンルともなったようです。

わいせつ物陳列罪として摘発された、あの「日活ロマンポルノ裁判」にあって注目を集めた女優・田中真理などは当時、反体制の象徴、革命戦士、として学生たちの圧倒的な支持を受けたものでした。

日活ロマンポルノは、日本映画界の栄枯盛衰にさらされた徒花(あだばな)だったかもしれませんが、創立100周年を迎えて今、内外に見直されているのだそうだ、などという話を聞くと、苦肉の策だろうが何だろうが、咲かせた花は、いつかはきっと実を結ぶものなのだ、と、記憶にとどめておくべき記念の11月20日、第一作に真剣に、大真面目に取り組んだ監督、カメラマンらスタッフ、白川和子ら女優陣の試行錯誤、努力に拍手を送りたくなる気持ちです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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