カウンターブローの恐るべき破壊力

プロボクシングの評論家であり、国際マッチメーカーでもあるジョー小泉氏(65)は、自著「ボクシングは科学だ」(ベースボール・マガジン社刊)の中で“カウンターパンチ”の威力をこう記述しています。

〈相手の出てくる力に自分のパンチの力が衝突するのだから破壊力は倍になります〉

カウンターパンチとは、言うまでもなく、相手が攻撃のために前進する瞬間をとらえて放つ迎撃の一撃です。瞬間的に放たれたそのプローは、相手が不用意に、思い切り前に出たために、威力は倍どころか、2倍にも3倍にも増して、その“グシャ!”という衝撃音が、テレビの画面から飛び出してくるかのような凄さがありました。

12月8日(日本時間同9日)に米ネバダ州ラスベガス(MGMグランドホテル)で行われた元6階級制覇王者マニー・パッキャオ(33=フィリピン)vs4階級制覇王者(WBO世界スーパーライト級王者)ファン・マヌエル・マルケス(39=メキシコ)のウエルター級12回戦(ノンタイトル戦)です。
(試合の模様は12月9日正午からWOWOWで生中継されました)

2人の対戦は、今回で4度目です。過去3度の対戦は、パッキャオの2勝1分けですが、いずれも接戦の末の少差判定勝負となり、今回は“因縁の対決”の決着戦とされていました。

試合は初回からパッキャオが積極性を見せます。右をリードに小刻みに体を振りながら前進。手数も多く、その攻勢は2回も続きました。

が、皮肉なものです。先に倒れたのはパッキャオでした。3回、マルケスが繰り出した右のロング・フックでパッキャオは仰向けに吹っ飛ばされるようにダウンを喫しました。引退した元WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃氏をゲストに迎えたWOWOWの解説陣も思わず、アアッ~! と声を上げた場面となりました。

裏目に出たスーパースターの積極性

パッキャオの反撃は5回でした。さすがです。ダウンのダメージが薄らいで動きが元に戻った矢先の攻撃。右から左のワンツーでダウンを奪い返しました。

パッキャオは前回の試合、今年6月9日(日本時間同10日)に行ったティモシー・ブラッドリー(米国)戦で納得のいかない判定負け(疑惑の判定とも指摘されましたが・・・)を喫しており、再起戦となった今回の試合では、その反省を踏まえ、誰にも分かる「明確なポイント」を念頭に置いて積極性を心がけていたのかもしれません。

ダウンを奪い返したパッキャオの攻撃に勢いが出始めます。6回、主導権を握って優位に立ち、残り1分・・・このラウンドが終わる前に、私のメモ帳にはもう「パッキャオの10-9」が書き込まれたそのときでした。

マルケスをロープ際に追い込んだパッキャオの怒涛の攻撃です。残り10秒! パッキャオが鋭く踏み込み、右から左を打ち込もうとした瞬間、マルケスの右ショートがカウンターとなって、グシャと顔にめり込んだのです。

試合後の談話-。パッキャオが「あのパンチは予測出来なかった」と振り返ったのに対し、マルケスは「あそこでワンツーが来ることは分かっていた」と話しましたが、明暗はその差にあったかもしれません。すさまじい衝撃にパッキャオは前のめりに倒れて失神状態となりました。

6回、何と2分59秒(もったいない!)のKO負け。パッキャオにとってのKO負けは、1999年9月、1冠目のWBC世界フライ級王座のV2戦で3回KO負けして以来、通算3度目となりました。

それにしても・・・今回の試合で感じたことは、スーパースターのパッキャオが、こういう衝撃的な負け方をしたショックもさることながら、ボクシングという競技の激しさ、怖さ、です。

マルケスがカウンターパンチを得意としていることは認識していましたが、鍛え抜かれた選手が放つパンチの凄さは、予想を超えたものであることを改めて思い知らされ、私はテレビの前でしばらくの間、ボウ然状態となってしまいました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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