ああ無常! です

プロボクシングの元世界王者・浜田剛史氏(帝拳プロモーション代表)は、ジュニアウエルター級(現スーパーライト級=リミット63・50キロ)で活躍した現役時代、日ごろ77キロ前後の体重を約13キロ減量する苦行を常に強いられていました。

試合が決まると約13キロを45日間で落とす減量計画が開始されますが、どうしても落ちなくなったときは「絶食」など最後の手段を敢行します。そうなると「夜、眠れなくてウトウトしながら見る夢は、水道の蛇口をひねるとオレンジジュースが出てきたり・・・ともう、精神状態はまともではありません」となるそうです。

しかし、この時代、ボクシング以外にもレスリング、柔道など体重制限のある各種スポーツに臨む選手たちは、多かれ少なかれ、この種のきつさから逃げるわけにはいかない覚悟がありました。

“あの頃”と比較して“今は・・・”と浜田氏が苦笑いを浮かべます。というのも、最近のジムの更衣室には、各種サプリメントの空箱が散乱しているのだそうです。

減量に伴う空腹感はあるにしても、栄養やスタミナなどをカバーする豊富な種類のサプリメントの出現によって、減量の代名詞でもあったボクシング界も、もう浜田氏が味わったような苦行は、過去のものとなりつつあるのかもしれません。

とともに「若い選手への指導の仕方も変わりましたね」と浜田氏は言います。つまり、かつては常識的だった「練習中に水飲むな!」が「どんどん飲め」となり、足腰鍛錬の代表格だった「うさぎ跳び」も今、ひざや腰への負担の多さから、百害あって・・・に変わってしまう時代です。練習を行うに際し、鍛錬の一つのモノサシ(指針)としてあった常識的な事柄が、ときを経て、変わってきたり、あるいは揺らいできたり、では、指導者の苦慮も分かろうというものです。

そうして見ると今の時代、かつて常識とされていたものが非常識になっているケースは結構、あるものです。

今の常識は世に連れ・・・非常識に変わる

今はもはや、当たり前となっていることですが、例えば銀行内のATMコーナーやファストフード店の注文カウンターなどへの「並び方」は、その顕著なものでしょうか。特別にその種の指示がない駅構内などの公衆トイレにしても、混雑しているときは皆、暗黙のうちに出入り口周辺に一列に並び、順番に空いたところに向かう形が約束事として出来ています。

そうした中で時折、高齢者の方々がスッと前に立つ、以前は当たり前だったケースも見られますが、近くの人が「並んでいますから」と教えるように声を掛けてあげる姿も、この形が今、常識的ルールとして浸透していることの裏付けでしょう。

先日、テレビを見ていて「歯の正しい磨き方」を専門家が解説していました。それもまた、私たちの年代が以前、教わったものとは、まったく違ったもので驚かされました。

例えば、歯磨きをしたあとのゆすぎ方ですが、あの周辺についた歯磨き粉をブクブク・ガラガラと徹底的に洗い流すのが、誰もが普通と思っていたはずです。が、専門家の指導では、それではせっかくのフッ素効果が消えてしまいます、軽くブクブクだけでいいですよ、とのことでした。

つくづく「変わったなァ」と感じるのが、固定電話での応対の仕方です。今、必要な事柄はほとんど、携帯電話の方にかかり、固定電話の方は、さまざまなジャンルの営業関係の内容が多いのですが、従って私自身、固定電話にかかってきたとき、名前など言わず、冷たい口調の「ハイ」だけから始まります。

それは何も私だけではなく、例えば私が固定電話で友人に電話したときも、電話口に出た夫人はやはり、固い口調でまず「ハイ」だけです。固定電話にかかってくる内容は昨今、強引な営業を含めて振り込め詐欺の種類もあり、皆が用心しているのでしょう。

思い起こせば、電話は顔が見えない分、相手に不快感を与えないよう丁寧に、必ず「ハイ、○○です」と名乗って、などと教えらたものでした。まさに隔世の感がある、電話に関する昔の常識、今の非常識、です。

そう言えば、摂津茂和氏著の「不滅のゴルフ名言集」にこんな言葉が掲載されていました。1965年に英国のゴルフライターであるドナルド・スティール氏が、道具や技術の進歩を題材としたエッセイで書いたものです。

〈100年後には、昔、アーノルド・パーマーというプロが、わずか7000ヤードしかない短いコースで65もの多くのスコアを出したといって、みんなが不思議がる日が来るかもしれない〉

まったく! です。かつての常識は、世に連れ・・・なのでしょうが、その変化が年々、早まっていることは“どうなっちゃうのだろう”と怖くもあります。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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