独善的男乃着物考其ノ拾参

私が住む藤沢市(神奈川県)片瀬の「江の島」周辺の海岸は、この季節、空飛ぶ“音無しのギャング”ことトビの天下です。

冬場の静かな海と澄みきった空気も心地良く、砂浜でさあ、お昼を・・・などノンビリ構えていると、このギャングどもは、見事なまでの背後からの一点集中攻撃で食べ物をカッさらっていきます。

私も以前、小さな和菓子を手に持った瞬間、背後から気配もなく迫ってきたトビに、スパッと和菓子だけ鮮やかにさらわれ、ウ~ン、敵ながらあっぱれ! と、その完ペキなまでの“職人芸”に舌を巻いたことがありました。

〈トビ(鳶=トンピ)〉「タカ目タカ科の鳥。市街地や海辺に多い。背面はいわゆる鳶色で翼の下面に白斑がある。主に死んだ小動物を食べる。“ぴいひょろろ”と鳴く」(広辞苑)

※ウィキペディア参考=滑空中のトビは、主に上昇気流を利用して輪を描くように滑空し、尾羽で巧みに舵をとり、羽ばたくことは少ない。視力が非常に優れていると言われ、上空を飛翔しながら餌を探し、餌を見つけるとその場所に急降下して捕らえる。


オッと恨み骨髄・・・の天敵! つい夢中になりました。今日はこの鳥のトビを書くつもりはありません。新春を迎えてなお、寒さはこれからが本番のこの季節、和装に欠かせないコートをテーマに書こうとしていたのでした。

実は3年ほど前、私の先輩に当たる元出版社のカメラマンだったK氏宅を訪ねたとき、着物好きのサトーくん、こんなの着てみるかい? と、奥の納戸から取り出してきたのが、懐かしの「インバネス・コート」でした。

トンビ=インバネス
(愛用のレトロ調トンビ)

これがまた、定番ともいえる黒のウール地の、重量感たっぷり(着てみると実際、かなり重さを感じました)の昔ながらのモノ、私、思わず目を輝かせてしまったことは言うまでもありません。

インバネス・コートは、スコットランドのインバネス地方で生まれたとされているため、こう命名されているのだそうです。コートにケープを合体させた形は、土地柄もあったと思いますが、荒天に強く、防寒に優れた、実用性に富んだコートとして人気があったようです。

資料によると日本には、1800年代後半に欧州からもたらされ、明治後期から大正、昭和初期にかけて、和装にも洋装にも合うコートとして流行(はや)った、とありました。

「インバネス・コート」はまた、さまざまな呼び名があり「トンビ」(こちらは憎き! ではなくエレガントな、ですが・・・)「二重回し」「二重マント」などとも呼ばれています。それによる形状の違いは、厳密にはこう分類されるのだそうです。

インバネス・コート=袖ありでケープ付き
二重回し&二重マント=袖なしでケープ付き
トンビ=袖なしでケープとコートが背中部分で固定
(※ウィキペディア参考)


私は、着物用のコートとして「角袖(=角袖外套)」は、既に持っていました。角袖は寒い季節、大変に重宝しますが、身につける長着や羽織によっては、袖口からハミ出てしまうものもあり、それが気になるところでした。

が、その点、インバネス・コート、私が先輩から頂戴したものは「トンビ」の形でしたが、コートに袖がない分、ハミ出しの心配がなく、また何よりも、コートを着たまま(コートのボタンを外す必要がないまま)中に簡単に手が入るため、帯の直しなどがスムーズに出来、加えてポケットも大きく、それらを含めて動き易さという実用的な面でなかなかよく出来たもの、と感じました。

新春の街を歩いても、男の和服姿などまず、お目にかからず、今の時代、着物そのものが“消え行く運命”にあるものなのでしょうが、そうした中での「トンビ」などは、さらに目に触れる機会もなく、大正ロマンの遺物でしかありえないのかもしれません。

私が先輩から譲り受けた段階では、この貴重品は、実は裏地がボロボロでした。が、それを張り替えると、見事によみがえりました。丈夫な生地は、まだまだ十分に使えそうです。

私が今どき、男の着物に関心を持つ理由の一つに「消え行くものへの郷愁」があることは確かですが、これはずっと大事にしたいこと、と毎年冬、重々しいインバネス・コートを取り出すたびに思っています。

(注=「独善的男乃着物考」シリーズは「日常」の項に収めています)
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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