続・“奇才”の死に思うこと

1月15日に肺炎のため死去した映画監督・大島渚さん(享年80)の通夜(1月21日)、葬儀・告別式(同22)が、いずれも東京・築地本願寺で営まれ、最後まで既成に挑み続けた故人の遺産の大きさが偲(しの)ばれました。

それに先駆けて1月19日夜に開催された、私が住む地域(神奈川県藤沢市)の、映画ファンが集まる「カワマタ・キネマサロン」の新年第1弾も、急きょ、大島さん追悼の場となり、松竹ヌーヴェル・ヴァーグで大島さんとコンビを組んだ、日本を代表する名映画カメラマンと謳われた川又昂氏(85=大島さんとともに藤沢市在住)も駆けつけ、簡単には語りつくせない思い出に触れてくれました。

“戦メリ”こと「戦場のメリークリスマス」(1983年公開)に出演した坂本龍一が、感謝の言葉を綴った弔辞を読み上げた葬儀・告別式の模様を報じたスポニチ本紙の記事中に、ジャーナリスト・田原総一朗氏の「昭和が生んだ最大の芸術家。それも闘う芸術家」という言葉がありました。

テレビ朝日の“激論”番組「朝までテレビ!」で司会を務める田原氏は、出演した大島さんの激高を再三、見届けており、それが“闘う芸術家”という、大島さんにピッタリの表現を生んだのでしょう。

が、川又氏はこう言いました。

〈大変な情熱家というか、自分の立場を無視してケンカっ早い一面もあった。世間ではいろいろと問題を起こし、誤解を生んだ男だが、周りが集中して大島イジメに走るので、あのような怒る男になったのか。本当は優しい男であり、小山明子(夫人)に惚れてしまうウエットな男なのだ〉

1959年(昭34)に松竹は、助監督(当時)だった大島さんを抜擢して処女作「鳩を売る少年」(「愛と希望の街」に改題された)をつくらせます。女性メロドラマ&庶民的人情の路線で全盛時を築いた松竹ですが、曲がり角に差しかかって路線変更を余儀なくされた時代です。

大ヒットした大島さんの第2作「青春残酷物語」さらに「太陽の墓場」「日本の黒い霧」(いずれも1960年公開)・・・大島さんと川又カメラマンは次々に先鋭的に挑んでいきます。

“強面”の男が内面に秘めた熱い情

その当時、大島さん、篠田正浩、吉田喜重らの監督と接触を深めていた「週刊読売」の記者・長部日出雄氏(現・評論家)が、その作品群を「松竹ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)」と命名します。

川又氏が振り返ります。

〈大島クンは、その命名を嫌っていましたね。確かに会社にも、つくり手にも、そういう意識はなかった。結果的に何か変わったものをつくっているな、という印象を与えてはいましたが・・・〉

川又氏は昨年、神奈川新聞に連載した「わが人生」の中で、松竹ヌーヴェル・ヴァーグに触れ、こう記述しています。

〈私は大島渚監督らとともに松竹ヌーヴェル・ヴァーグをリードする人物とみなされた。(略)そこで従来にはない新鮮な撮影手法を試した。その意味では、ヌーヴェル・ヴァーグの一員であることに異論はない。しかし、私には、若い監督たちが主張するイデオロギーがよく分からなかった〉

そして・・・大島さんは、若者が抱える社会への怒りを表現しようとした作品「青春残酷物語」について「これはオレの敗北史のようなものだ」と話していたそうです。

事件は「日本の夜と霧」の扱いで起こりました。松竹が大島さんに無断で自主的に上映中止にしたことに大島さんは抗議し退社を決めます。

川又氏によると、そのとき、東京・新宿の松竹の定宿に集まった大島組の面々は、松竹に残るべきか、大島さんと行動を共にするべきか、徹夜のディスカッションが激しく行われたのだそうです。

川又氏も覚悟を決めた中、しかし、大島さんは「松竹に残っても十分、一人で生活できる力を持っているのだから・・・」と川又氏を引きとめ、これにより川又氏は松竹に残留します。

川又氏は「わが人生」でも、この出来事に触れており「大島クンは私の家庭の事情をすべて知っている。厳しくなるのがわかっている外の世界に私を連れて行きたいとは言えなかったのではないだろうか」と記述しています。

戒名となった“強面”の「大喝無量居士」が内面に秘めた「情」・・・何よりも「小山クン(明子夫人)が偉かったなァ」と川又氏は、寂しそうに追悼の意を表していました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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