B・ホプキンスの奇跡

1998年(平10)9月に発行されたボクシング誌「ワールド・ボクシング」の増刊号をパラパラとめくっていたら、こんな記述がありました。

面白いので借用(無断ですがスミマセン)させて頂きます。

〈「ガキの時分から、あんたは16まで生きられないよ、って言われて育ったもんだ。実際、兄貴のマイクは、射ち殺されちまったし、オレも3回、殺されかけた。背中と肺と、心臓のすぐ下を刺されてね。今じゃ、そのころのダチのほとんどは、死んだか、さもなきゃ、ムショの中さ」-100戦に及ぶアマキャリアを積む傍ら、同時にストリートでのキャリアも積み、強盗罪で5年間のムショ暮らし。ムショ内ボクシングで3年間、州チャンピオンだったとはいえ、プロデビューしたときは、もう23歳・・・〉

凄いですね。この人、誰あろう、元4団体統一世界ミドル級王者、米国人プロボクサーのバーナード・ホプキンスなのです。

このところの春風、いやいや、凶暴な強風に乗って外電が伝えてきたものは、恐怖の黄砂でもPM2・5でもなく、それを超える? まさに春の異変! ホプキンスの世界王座奪取でした。

スポニチ本紙(3月11日付)の記事によると、ホプキンスは3月9日(日本時間同10日)、米ニューヨーク州ブルックリンで19戦無敗のIBF世界ライトヘビー級王者タポリス・クラウド(31=米国)に挑み判定(3-0)勝ち、実に48歳2カ月の史上最年長記録で戴冠した、ということでした。

さっそくボクシング好きの友人から、電話が入ってきます。

〈ねえねえ・・・こういうのってアリなのかねェ。ホプキンスがスゲーのか、相手がダメなのか、そのあたりは、よく分からないけど、このトシで世界王者ってのは信じがたいよね〉

長寿ボクサーの代表格だったのが、あのジョージ・フォアマン(米国)でした。引退→伝道師→復帰の出入りを経て1994年11月、45歳9カ月の世界奪取最年長記録でWBA&IBF世界ヘビー級王座を獲得しました。それを更新したのが11年5月、46歳4カ月でWBC世界ライトヘビー級王座を獲得したホプキンス。今回は、自身が持つその記録を更新したことになります。

プロデビューが遅かった分、だとしても・・・

スポーツ各界は、道具の進化や自己管理の進化などにより、現役選手としての寿命が延びている傾向が、確かにあります。が、ボクシングは、使う道具があるわけではなく、身一つだけの過酷な競技です。年齢的な体力の低下は防ぎようもなく、それを補うものは「技術と経験」といったところでしょうか。

日本のボクシング界での最高齢奪取記録は、1976年2月にWBA世界ウエルター級王座を獲得した輪島功一(三迫)の32歳9カ月でしたが、それを超えた内藤大介(宮田=WBC世界フライ級王座獲得時)の32歳10カ月、さらに越本隆志(FUKUOKA=WBC世界フェザー級王座獲得時)の35歳24日、などの例があります。

国内では規約により、ボクサーライセンスの年齢制限は36歳まで、とされています。特例は現役世界王者や元世界王者らに適用されるものの、まあ、プロボクサーの第一線での寿命は、頑張って「30歳半ば」くらい、が一般的であることは、妥当なところではないでしょうか。

ちなみに“遅咲きチャンプ”の代表である西岡利晃(帝拳=WBC世界スーパーバンタム級王者)は、32歳で王座を獲得、36歳で現役を引退しています。

評論家であり、国際マッチメーカーでもあるジョー小泉氏は、実際の年齢とは別の“ボクサー年齢”がある、と言います。

例えば元統一世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)が1987年8月、21歳でヘビー級を統一したとき、プロデビューからそれまでの約2年間で30試合を消化しており、小泉氏によれば、消耗度が含まれるボクサー年齢は、とても21歳のものではない、ということでした。

さまざまな面から見ても、ホプキンスの50歳に手が届く年齢での世界王座奪取には、奇跡的なものが感じられます。

ホプキンスのプロデビューが、冒頭に記したように23歳と遅く、本人が“その分、現役は長く”と心がけ「50歳まで引退はしない」と明言しているにしても、やはり鉄人、いや、普通ではない“超・鉄人”が、この世界にはいるものだなァ、とつくづく思います。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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