敵地に乗り込む王者は何と戦う?

ホーム&アウエー方式で戦うサッカーの、特に国際試合で乗り込む敵地での戦いは、何でもアリ! と覚悟を決めるのが、アウエー側の心得なのだそうです。

つまり、試合でのホームタウン・デシジョン(地元有利の判定)だけでなく、試合に備えて提供された練習場の不備だとか、あるいは予定されていた時間の(意図的とも受け取れる)急な変更とか、敵地に乗り込む側は、これらをひっくるめて“アウエーの戦い”と、理不尽な厳しさを受け止めることが必要となります。

最近の日本代表陣は、不利なアウエーの試合でも、胸のすくような勝利を収めて帰国してくれるようになりましたが、まだ記憶に残るちょっと前まで、とにかく決定力を欠いて観客をイラつかせていた彼らは、アウエーでしてやられ、有利なはずのホームの試合でも、妙に優等生過ぎてゴールに突っ込めず、乗り込んで来た敵側に逆にホームのような試合をされて、見る側を悔しがらせたものでした。

こんな試合を見せられた後、立腹した私の友人は、決まって“日本の平和ボケ”を口にし、持論をこう繰り広げたものでした。

〈だってそうだろ! フェアプレー精神は絶対だと思うよ。だけど、乗り込んできた相手に対して地元の利を生かす“策略”くらいはあっていいだろう。ダーティーなプレーも含めて相手に恐怖感を与える気迫、言葉が悪いというなら、プレッシャーを与える気迫、地元の意地がほしいよね〉

まあ、これはサッカーの話ですが、確かに国の威信が懸かるW杯などでは、予選・本戦を通して各国の代表チームは、まさにケンカ腰の激しい削り合いを展開し、日本人選手の戦い方には、どうにも“気後れ”が感じられた時期があったものでした。

さて、次はプロボクシングの話です。WBC世界スーパーフライ級王者の佐藤洋太(29=協栄)が大型連休ド真ん中の5月3日、V3戦に臨みますが、これが何と挑戦者シーサケット・ソールンビサイ(タイ)の母国で行われるのです。

KO勝利が欠かせないアウエーの戦い

王者が敵地タイに乗り込むなんてナゼ? と首を傾げる方も多いことと思いますが、この出来事は、プロボクシング界で慣例となっている、興行権を所有する側の支配、オプションの問題からきています。

佐藤は12年3月、王者スリヤン・ソールンビサイ(タイ)から王座を奪取していますが、興行権はまだ、前王者のスリヤン陣営が保持しており、今回の佐藤の防衛戦は、その権利権の行使で王者側をタイに呼び、相手陣営がリベンジすべく、系列の挑戦者を用意した、ということなのです。

冒頭でサッカーの国際試合におけるアウエーの厳しさを記しましたが、ではプロボクシング界では、敵地タイに乗り込む佐藤には、どんな厳しさが待ち受けているのでしょうか。

以前にジムの関係者から聞いた話ですが、敵地に乗り込む際は、空港に降りたときから「神経が張り詰める」とのことでした。

つまり、空港から乗ったタクシーが、わざと道を間違える、遠回りする、などでイライラさせられる、やっと到着した宿舎となるホテルでは、お湯が出ない、出された食事にも油断がならない、など、もうこの段階で神経戦が始まっている、と覚悟が必要になるのだそうです。

ご立腹のサッカー・ファンの友人が指摘した「地元の利を生かす策略」を、今度は逆に“受ける側”となるわけですが、国際マッチメーカーで評論家のジョー小泉氏によると、アウエー側の要チェックは体重測定の秤(はかり)なのだそうで、同氏は過去、体重の利を生かしたい地元選手用に目盛りを細工した秤を何度も目撃しているとのことでした。

ムチャなことがまかり通った時代は去り、段取りも整備され、今回の佐藤がとんでもない目に遭う危機はないとは思いますが、秤の細工のような嫌がらせとか、ジャッジのホームタウン・デシジョンは、当たり前のこととして覚悟しておかなければならないことでしょう。

今回のチャレンジャーが、磨きのかかった佐藤の変則スタイルを上回るとは思えませんが、王者側はまず、万全の体調でリングに上がることが第一、そして第二は、何よりも地元採点が通用しないよう、難しいことですが、KO勝利が欠かせない試合ですね。WBCが採用している「公開採点」制もしっかり実施してもらいたいものです。

佐藤には、アウエーの餌食(えじき)にならないよう、幸運を祈るばかりですね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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