“地域密着型”興行に感じる希望

富士市(静岡県)でプロボクシングの日本ミニマム級タイトルマッチ(王者・原隆二=大橋=がV2達成)が行われた6月2日、茅ヶ崎市(神奈川県)では、同市内にジムを持つ「ピストン堀口道場」(堀口昌彰会長)主催の恒例「第23回青少年育成湘南ボクシング」が開催されました。

5月29日に梅雨入りが宣言されたものの、茅ヶ崎在住の友人2人とともに「まるで雨が降る気配がないねェ」などと話しながら、この日も梅雨らしからぬカラッとした、気持ちのいい風に吹かれながら会場に向かいました。

大会は4回戦6試合、6&8回戦各1試合の計8試合、と若手選手中心の小規模なもの。ピストン堀口道場が主催する興行ながら、メーンの8回戦で同道場に所属する選手のカードが組めず、選手育成の苦しさが垣間見える内容でした。

が、私がなぜか、年に1回のペースで開催される、この小規模興行に惹(ひ)かれるのは、リングに上がる選手たちの真剣な姿勢を、少しでも多くの人たちに、生で間近に見てほしい、という堀口会長の気持ち、地域への密着志向、が熱く感じられるから、かもしれません。

私が前回、この興行に足を運んだのは、2年前の11年6月5日に開催された「第21回・・・」でした。このとき、日本ミドル級1位まで上り詰め、ピントン堀口道場の重量級を背負った鈴木典史選手の引退セレモニーが行われています。

鈴木選手は10年2月20日、2度目となる日本ミドル級王座にチャレンジして判定負け、その後、網膜剥(はく)離が発覚して引退を余儀なくされました。

不思議と言えば不思議、世間は狭いと言えば、ホント狭すぎる、とでも言いましょうか。これには後日談があります。

しばらく経ったある日、この興行を一緒に観戦した友人たちと、辻堂(神奈川県藤沢市)の海岸近くに店を構える「だんじり」という飲み処(どころ)に初めて、歩いていたら目の前にこの店があった! というだけの理由でブラリと入ったのです。

友人たちと乾杯、歓談が続き、落ち着いたところで店内を見渡すとアレレッ! 壁にリング用のガウンが掛かっているではないですか! 偶然、まったく偶然のことです。女将さんに話を聞くと、何とこの女性は、鈴木選手の母親! であり、彼女が切り盛りする店だったのです。

選手育成の難しさに直面しつつも・・・

・・・リング上では、ひときわ体格のいい入澤和彰(ピストン堀口道場)が、ムハマド・イマム(インドネシア)を相手に奮闘しています。セミファイナルのミドル級6回戦。昨年のミドル級東日本新人王は、意地の判定勝ちで会場の大歓声を浴びました。

オッ、やるじゃないか! 鈴木選手の後継者がちゃんと育っている! 入澤の勝利に笑顔を見せた堀口会長も「鈴木がね、手取り足取り、引っ張った選手なんですよ」と満足そうでした。

試合の合い間、堀口会長の父親・昌信さん(ピストン堀口の長男)と話をする機会を得ました。話題はやはり、昨今の選手育成の難しさに及びます。

昌信さんが言いました。

〈もちろん皆、日本チャンピオン、あるいは機会があれば、世界へのチャンスと、前向きの希望を胸中に秘めていますよ。でもね、それに向けての頑張り方が、昔と今とでは違うんですね。昔、当たり前だった指導が今、まったく通用しない時代ですからね。その中でどうするか・・・〉

言いたいことは、よく分かります。それは、ピストン堀口道場、いやボクシング界、もっと広げてスポーツ各界に共通して当てはまることでもあるのです。

ただ、このジムが他と違う点は、ピストン堀口という“拳聖”の名血を、長男・昌信さん→孫・昌彰会長、と3代に渡って受け継いでいることでしょう。

〈ピストン堀口〉“拳聖゜と呼ばれたプロボクサー。本名・堀口恒男。1914年(大正3年)10月12日、栃木県宇都宮市生まれ。旧制真岡中卒業時の昭和7年、日本拳闘倶楽部に入門。翌8年、早大政経学部に入学。在学中にプロボクサーとしてデビューした。果敢なラッシュ戦法で連戦連勝を続け、不滅の47連勝を記録するなど活躍した。1950年(昭和25年)10月24日、東海道線平塚駅近くで下り列車にはねられ、36歳で他界した。138勝の最多勝利記録、82の最多KO勝利記録などを保持した。

その名血が軽いわけはなく、指導者の内面に常に重く、ズシリとのしかかっていることでしょう。

しかし、帰り道、私は思いました。

派手さはなくても、地道に続ける“継続こそ力”です。今、選手不足もあって後楽園ホールでの興行を休止しているというピストン堀口道場が、地元開催の地域密着型興行の中から、何かを生み出し、いずれは、底辺を支える少年たちに何かをもたらしてくれるのではないか、と・・・。

もたらされたものは、看板通りの“ラッシュ戦法゜を持ち味とする選手かもしれない、と・・・。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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