上野駅に響く「あゝ上野駅」のメロディー

JR上野駅の13番線ホームに懐かしい「あゝ上野駅」のメロディーが流れた-と7月29日付朝刊各紙が社会面で報じました。

記事によると、同駅は7月28日、開業130周年を迎えたことでJR東日本が、寝台特急などが発着する13番線ホームの発車ベルを、故・井沢八郎さんの代表曲でもある「あゝ上野駅」のメロディーに変更した、とのことでした。

青森県弘前市出身の歌手・井沢さんの「あゝ上野駅」といえば、上野駅前の広場にその歌碑が建てられているように、1964年(昭39)に発売され、当時運行されていた「集団就職列車」で年々、地方から上京する少年たちの心を支え、共感を生んだ、日本の高度経済成長期を反映させた“応援歌”といえるでしょう。

集団就職列車などの言葉を聞くと、すぐに思い出されてしまうのが、西岸良平原作の漫画「三丁目の夕日」を映画化した「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの中に出てくる、赤いほっぺの“六(ろく)ちゃん”こと、堀北真希の六(むつ)子です。

第1作で堀北“星野六子”は、昭和33年春、青森から集団就職列車で上京、東京の下町「夕日町三丁目」にある「鈴木オート」(鈴木則史社長=堤真一)にやってきます。

自転車の修理と思ってやってきたのに実際、やることは自動車の修理だったり、大企業だと思っていたのに実際、送り込まれたのは、下町の小さい町工場だったり、ユーモラスなやりとりの中にも、集団就職組の理想と現実の違いが描かれ、中でも「私は“口減らし”で故郷を出された」と思う六子の苦悩が、それは六子の勘違いだったことがわかり、見る側をホッとさせるにしても、現実にはそうしてものを胸中にしまって列車に乗った少年・少女は、少なくなかったのではないかと思います。

資料には、集団就職列車が最初に運行されたのは、1954年(昭29)4月5日、午後3時33分青森発→上野行きの臨時夜行列車だった、とありました。

集団就職組の“熱い昭和”があった

日本は1955年(昭30)ころから本格的に高度経済成長期に入って行きますが、その時期を象徴する就職の形が集団就職であり、地方の農家の子供たち、主に中卒後に学校ごと、あるいは地域ごと、といった集団で、とにかく人手がほしい都市部の企業や工場に“金の卵”として送り込まれていった時代です。

そうしたときを経て時代は、やがて安定成長期に入り、求人も高卒者へと移行していきます。1965年(昭40)には、高卒の就職者が中卒を上回り、集団就職列車の運行も、最盛期の昭和40年代から次第に縮小、運行の終了は1975年(昭50)とありました。

社会が“金の卵”ともてはやした中卒者の単純労働力を不要とし始めたころでしょうか。1971年(昭46)に、ある映画が公開されました。大嶺俊順(としのぶ)監督のデビュー作「望郷」(松竹配給)です。

ここでは中卒後、15歳で集団就職した少年・少女たちが、職業を転々としながら5年を経て20歳となり、しかし、先が見えない現状に悩み、苦しみ、もがき、帰るに帰れない故郷を思う気持ちが“絶望的”に描かれています。それも実際にあっただろう集団就職組の悲哀でしょう。

大相撲界が外国人力士たちに侵略されてしまったのは、集団就職列車の運行終了が原因だろう、と指摘するのは、スポーツコラムニストの工藤隆一氏です。

工藤氏は、元日刊スポーツ新聞の記者で私の旧友ですが、現在は物流会社役員として活躍するかたわら、得意のスポーツ分野で健筆を振るってもいます。

同氏は〈なぜ、このような状況になってしまったのかは、力士の供給源の問題が根本にあります。つまり、日本のGNPが世界第2位になり、国の富が地方にも十分に配分されるようになった昭和40年代後半から、従来力士の供給源だった、地方の第一次産業従事者の生活が豊かになったのです。その結果、昭和50年に集団就職列車の運行が終了、地方の進学率も上昇し、いわゆる「田舎の貧乏人」がどんどん減ってしまったのです〉と記述しています。

「北の玄関」上野駅に流れる「「あゝ上野駅」の発車ベルに、さまざまな思いを抱く人たちは多いことでしょう。そして・・・あのタワーに、あの橋に、あの高速道路に、黙々と汗を流した集団就職組の“熱い昭和”があったこともまた、忘れてはならないことだと思います。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR