バンタム級に感じる歴史の重み

プロボクシングのバンタム級(リミット53・52キロ)における歴代世界王者群を見回すと、歴史に名を刻む日本人選手の顔ぶれには、錚々(そうそう)たるものがあります。

同級の日本人世界王者第1号が、ファイティング原田(当時・笹崎)で1965年(昭40)5月18日、あのエデル・ジョフレ(ブラジル)に初黒星をつける“奇跡の勝利”で勝ち取った2階級制覇でした。

以降、六車卓也(大阪帝拳)、辰吉丈一郎(同)、その辰吉と死闘を展開させた薬師寺保栄(松田)、さらにV10の長谷川穂積(真正)が続き、そして今、WBC王者が山中慎介(30=帝拳)、WBA王者が亀田興毅(26=亀田)、WBO王者が、この8月1日に新王者となった亀田和毅(22=亀田)で、主要4団体の同級王座を日本人3選手が占めています。

ちなみに・・・余分ではありますが「あしたのジョー」の矢吹丈もバンタム級の選手です。

さて、破壊力満点の“神の左”で日本のエースにのし上がった山中が、8月12日(東京・大田区総合体育館)でV4戦を行います。相手は同級7位のホセ・ニエベス(32=プエルトリコ)ですが、山中は11年6月の王座奪取後、過去3度の防衛戦をすべてKO勝ち、しかも、すべて強者相手に戦っていることもあり「同級最強」の評価を得ています。

引退した西岡(元WBC世界スーパーバンタム級王者=帝拳)以降のプロボクシング界は、ファンが何を求めているか、を含めて、単なる防衛戦に勝てばいいだけではなく、統一戦など誰とやって王座を死守したか、に価値が移行しており、その意味では亀田兄弟も、そろそろ覚悟を決めなくてはならないときを迎えているのではないかと思います。

“黄金のバンタム”を継承するのは誰?

さて、このクラスには“黄金のバンタム”という、いまだに色褪(あ)せない、ボクシング好きをワクワクさせるフレーズが生きています。「ガロ・デ・オーロ」(黄金のバンタム)は、そう、生涯プロ戦績78戦72勝(50KO)2敗のエデル・ジョフレに命名されたものです。

私たちの先輩記者であり、ノンフィクション作家だった佐瀬稔氏(故人)は以前、あるボクシング専門誌にこんな記事を書いています。

〈(略)天分だけでは支えきれない、破綻する、努力しただけでは成功しない、小さな体で偉大を目指すには、知と技の苛烈な練磨、緊迫の決意、人格の拡大を必要とする。倒すのは腕力ではなく磨き上げた技術、知の力、バンタム級とはそういう世界なのだ。(略)・・・そしてそれは、ジョー・メデル(メキシコ)やエデル・ジョフレが、ファイティング原田と戦って勝ち、負ける過程で2人は「バンタムとは何か?」を語りかけたのである〉

“黄金のバンタム”ジョフレが、生涯に喫した2敗は、いずれも原田に敗れたものですが、原田が観客を魅了する、持ち前の無尽蔵のスタミナ、エンドレス・ラッシュで築いたバンタム級への、佐瀬流で言うなら“問いかけ”は、やがて1994年(平6)12月4日の正規王者・薬師寺保栄(松田)vs暫定王者・辰吉丈一郎(大阪帝拳)の、歴史に残るWBC世界バンタム級王座決定戦へと受け継がれていきます。

この試合、薬師寺が繰り出したパンチが、実に1155発、辰吉のそれが681発、の壮絶な乱打戦となり、試合後の薬師寺が「“これ以上の試合をやれ”といわれても、2度と無理」という、ともにすべてを出し切った死闘となり、薬師寺が判定勝ちを収めました。

バンタム級は、軽量級でありながら、そうした意味でやはり、歴史の重さをズシリと感じてしまいます。近づくV4戦での山中に期待しつつ、亀田兄弟も今後、このタイトルをどう生かしていくのか、ギネス認定などで満足せず、偉業に向けて立ち向かってもらいたいものです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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