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衝撃的な勝利の裏で・・・

リングサイドの記者席に旧知のボクシング・ライターがいて久々に会話を交わしました。

8月25日夜、東京・有明コロシアムで開催された、ロンドン五輪ボクシング男子(ミドル級)金メダリスト・村田諒太(27=三迫)の、注目のプロデビュー戦(体重73キロ契約=6回戦)です。

「どうだろうかねェ」との私の問いかけに彼が言いました。

〈村田、村田、とほとんど皆、村田有利、村田勝利、を前提に話をしているんだよね。本当にそうなのだろうか? というのが正直な気持ちなんだけどね。柴田は侮れないと思うよ〉

確かにその通りです。村田の相手を務める柴田明雄(31=ワタナベ)は、この8月でキャリア10年となり、その間、日本王座(スーパーウエルター級)東洋太平洋王座(同級)を奪取しては陥落、またしぶとく返り咲き、現在、バリバリの東洋太平洋ミドル級王者(東洋太平洋王座は2階級制覇、日本王座は返上)なのです。

〈ボクシングに“絶対”はないからね。ワンパンチが戦況を変える。ボクは村田が負けた後、どうするのか、ということばかりが気になっているよ〉

単純にアマチュアの五輪王者とプロの東洋太平洋王座2階級制覇王者とは、果たしてどちらが強いのか、と聞かれたとき、どちらに傾くでしょうか。別に彼が指摘するように、誰もが村田有利などと見ているわけではなく、しかし、村田はこの試合、絶対に負けるわけにはいかないだろう、というところで外野は、あ~だ、こ~だ、と言っているわけで、では負けたらどうするんだ! という重大事は、そのときはそのとき、と棚上げされているのが正直なところです。

やがて・・・試合開始が近づきます。花道からリングに向かう村田は、大声援に応えて手を振り、何と笑顔まで見せています。ボクサーにとってリングに上がってしまうまでが“一番イヤな時間帯”なのだそうですが、村田にその気配はなく、さすが五輪の修羅場をくぐり抜けた男、場慣れを感じます。

凄い村田と歴戦のプロ戦士へのブーイング

いやはや、ホント、広げたノートへのメモも忘れ、びっくりしてしまいました。村田の戦いぶりに、です。

いきなり初回、高いガードで顔を固め、前進、またジワリ前進、柴田との距離を詰めていきます。近づいて左アッパー、武器の右ストレート! 繰り出すパンチの威力に加え、強烈な圧力を受けて柴田は、後退、また後退、を余儀なくされ、なすすべもありません。そこへ右ストレートが炸裂し柴田は吹っ飛ばされてしまいました。

村田の所属は「三迫ジム」(三迫仁志会長=東京・練馬区)ですが、日々の練習などは、村田を支援する「帝拳ジム」(本田明彦会長=東京・新宿区)で行っており、村田を見続けてきた元世界王者の浜田剛史氏(帝拳プロモーション代表)は、昨年夏のロンドン五輪から今に至る1年間の村田の変貌に驚きを隠せない様子でした。

浜田氏が言います。

〈アマの村田のスタイルは、ガードを固めて接近、ボディーから顔へとパンチを打ち分ける、いってみればワンパターンでした。それが、接近するためにはどうしたらいいか、の工夫がなされています。プロともなればパンチもきつく、簡単には中に入れさせてくれないわけですが、指導されたものを短期間で自分のものにし、それをデビュー戦でやってのけてしまうことは、並みの選手では出来ない凄いことです〉


結果は2回2分24秒、レフェリーストップによるTKO勝利、柴田の持ち味を封じ、何もさせない圧勝で村田がデビュー戦を飾りました。

浜田氏は〈心技体、すべてにおいて村田が上だった〉と言いましたが、私の素直な驚きは、歴戦のプロの、それも現役の東洋太平洋王者より「すべてにおいて」五輪金メダリストのほうが上なのか、ということに対してでした。

村田が勝ったことに文句などあるわけもなく、ただひたすら、その戦い方のド迫力に圧倒された試合でした。この勝利により明るく開けたこれからにも、大きな期待が懸かります。

が、試合終了時、私の耳に入ってきた「だらしネ~ぞ! 柴田ァ~!」の怒りの野次が、途中で村田への大声援にかき消されてしまったことが、気になる出来事として残りました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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