まず「ケツを探せ!」から始まった

新聞社に勤務していたときも今も、知人と話していてよく言われることは、記者っていう人は、なぜ、そんなに簡単に文章を書いてしまうのかねェ~、ということでした。

まあ、それを職業としてやってきており、なぜ? などということもないのですが、確かにプロ野球のナイトゲームにしてもプロボクシングの試合にしても、夜に行われるイベントのときは、新聞各社が設定する締め切り時間との厳しい戦いを強いられることが多く、担当記者たちは、ときには試合が終わらなくても記事を8割方、仕上げておき、試合終了と同時に即、送稿! なんてことも簡単に(・・・でもありませんが)やってのけ、日ごろ、手紙を書くのさえ四苦八苦で、などという筆不精の知人にしてみれば、私たちがやることは信じ難い、別世界の出来ごとのようです。

毎朝、自宅に配達されてくる各社の新聞を、読者の皆さんは、普通に開き、記事の内容に目を通していると思いますが、あまり関知されない新聞のレイアウトについて言うと、文字は1行に11~12字が収まっており、記事の大小は、その行数で決められます。

例えば、縦148mm、横100mmの官製はがき(現・郵政はがき)で言うと、このハガキのスペースには、新聞サイズで言うなら、縦44字、横20行、の計880字が詰め込んで入り、私たちの間では、約ですが「80行(1行11字)」のスペースという言い方となります。

スポーツ新聞を例に取ると、以前の各紙は、1行15字で100行~120行にわたる長い記事が、当たり前のようにありました。今、振り返って当時の新聞を目にすると、とにかく活字が小さく、それがびっしりと紙面を埋めているなァ、という感じを受けます。

そうしたときを経て次第に“読みやすさ”“見やすさ”が求められ、大きい活字の多用、それに伴い1行13字の時代、さらに12字、そして今の11字~12字に至っています。

活字が大きくなり、1行の字数も少なくなってくると、読み手にとっては、読みやすく、見やすく、言うことはないと思われますが、書き手の記者たちにしてみれば、まとめ方の工夫が強く求められるようになってきます。

短いほど難しい文章

つまり、同じ80行の原稿でも、1行15字時代は「1200字」の分量があったのに今、1行11字時代では「880字」の分量しかありません。

知人と話していると「長い文章はどうも・・・」などという言葉が頻繁(ひんぱん)に出てきますが、実は長い原稿は比較的、書きやすく、短くなればなるほど、まとめ方が難しくなるものです。

その代表が、新聞記事でもっとも読みやすいとされる「40行(1行11字=440字)」の原稿であり、この書きにくく、まとめにくい分量を、いかにうまく書きこなせるかどうかが、ある意味、新聞記者の腕の見せどころともなるのです。

この分量は、分量の基本とされる400字詰め原稿用紙の1枚分に相当します。また、前出のハガキも、新聞の活字ではなく、私たちの手書きの文字では、400字入るかどうか、といったところで私自身、いつも思うことですが、ハガキに書く文章の簡潔なまとめ方は、本当に難しいものです。

新聞社に入社当時、先輩記者から口やかましく言われたことは「ケツを探せ!」でした。ン、ケツ? ケツって何? 

日々、時間に終われ、忙し過ぎる世界ゆえに何ごとも言葉を短く、はしょってしまう“裏”の「新聞用語集~言葉編」があり、これもその種類かと思って戸惑いましたが、こちらはまともに「起承転結」の「結」でした。

先輩が言います。朝起きました。顔を洗って歯を磨きました。朝食を食べて出かけました。そんなインパクトのないダラダラ原稿なんか誰も読まないだろ。まず「結句」を探せよ。それを前に出して読み手の興味を誘え! といった具合です。

・・・そして私たち新人駆け出し記者は、記者(汽車)以前のトロッコとしてどこへでも神出鬼没、ケツを求めてさまよったのでした。

先輩が言う、朝起きました・・・の類は、確かにダラダラといくらでも長く引き延ばすことが出来ます。が、もっとも求められる「40行」をビシッと決めるには、結句の大切さ、に加え、意表をつく転句の面白さにあるのではないかと思います。

それには、起こった出来事を幅広く見る目、どう料理しようか、の工夫こそが必要! と今でも頭を痛めている次第です。知人が言うように「なぜ、そんなに簡単に・・・」などということは、とてもとても、まず、ありえないことです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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