重責を背負ってなお勝つ凄さ!

“無欲の勝利”という言葉は、しばしばスポーツ記事の中に見かけます。

プレッシャーがかかる勝負にあって、いかに平常心を保てるか、日々の練習でして来たことをそのまま、普通に出すことが出来るか、それが出来れば勝利は後からついてくる、という選手の心理が“無欲”という言葉を口にさせます。

まあ、しかし、実際は“無欲の勝利”などは簡単に出来るものではなく、選手が“そうありたい”と自分に言い聞かせて平常心を喚起させるための言葉でもあるようです。

女子レスリングの55キロ級・吉田沙保里(30=ALSOK)が08年1月、中国・太原で開催された国別対抗戦(団体戦)「女子W杯」で敗れ、それまで続けていた連勝記録が「119」でストップしたとき、悔しさで号泣した吉田は「連勝の数字は、常に頭の中にあり、意識していた」と話しました。

つまり、吉田にとっては勝利、それも勝ち続けることを戦いのモチベーションとし、次への活力につなげる、決して無欲などではない、勝利に向けた激しい気概を内に秘めていました。

だから、連勝記録に対して「いつかは負けるもの。(連勝の)記録はいつかは途切れるもの・・・」などという“無欲”的な思考は、彼女の中になかったのでしょう。

昨年9月のレスリング女子「世界選手権」(カナダ・ストラスコナカウンティ)で同選手権10連覇を達成した吉田は、五輪3連覇(04年アテネ、08年北京、12年ロンドン)と合わせて世界大会13連覇の偉業を達成させました。

16年リオ、20年東京までも・・・

“霊長類最強戦士”と呼ばれたレスリング男子グレコローマン・スタイル130級のアレクサンドル・カレリン(ロシア=引退)は、世界大会12連覇を保持していましたが、これを抜いた吉田は、男女を通じて世界ナンバーワン・レスラーとなり、カレリンに代わる“霊長類最強女子”の称号を獲得しました。

そして、先に終了した今年の「世界選手権」(ハンガリー・ブダペスト)でも、圧倒的な強さを見せて優勝。同大会連覇を「11」に、世界大会も「14連覇」に伸ばし、まさに無敵“霊長類最強女子”の面目躍如となりました。

この大会、吉田の役割はやはり「勝利→優勝」以外になく、徹底して「勝利を意識」した戦いだったことと思います。なぜなら、レスリング競技を取り巻く、このところの過酷な情勢が、ドッと吉田の双肩にかかってきたからです。

昨年秋、その功績を称えられて国民栄誉賞を授与されました。とともに東京五輪の招致大使にも就任、重責を担います。が、今年2月、IOC(国際オリンピック委員会)の理事会で、20年五輪からレスリング競技が除外される危機に陥り、激動の日々を余儀なくされます。

五輪の招致活動に、レスリング競技の存続活動に、マット外の活動が多忙を極めつつも、吉田が試合で絶対に負けることは許されない状況に、さすがの“霊長類最強女子”もヘトヘトになったようです。

が、その甲斐あってか、20年五輪の東京招致決定、レスリング競技の存続も決定、とすべてが好転・・・その矢先の「世界選手権」での吉田には、優勝が義務付けられたようなものだったでしょう。

それにしても・・・です。無欲の勝利ではない意図的な勝利を掲げて勝ってしまう吉田の凄さ、精神面の強さには、ホント、脱帽といったところです。

この10月5日で31歳、02年の全日本選手権以降、ずっと保ち続けている、吉田の代名詞でもある「55キロ」級のウエート、これらは厳しい自己管理なくして成り立たないものでしょう。

16年リオ五輪、そして20年東京五輪・・・そこでも吉田は主役であってほしいものです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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