映画「雪国」を観て・・・

JR&江ノ電(江ノ島電鉄)の「鎌倉駅」(神奈川県鎌倉市)を東口側に出て正面、駅前のロータリーを真っ直ぐ進むと、南北に走る「若宮大路」にぶつかります。左方向(北側)が鶴岡八幡宮、右方向(南側)は海です。

鶴岡八幡宮に向かって左側、若宮大路と並行している道が、土産物店が並び、いつも賑わいを見せている「小町通り」ですが、この道を八幡サマに向かってしばらく(約10分ほど)歩き、左折したところに「鎌倉市川喜多映画記念館」(鎌倉市雪ノ下)があります。

映画ファンの方々は、先刻承知のことですが、この記念館は2010年(平22)、日本映画の発展に大きく貢献した川喜多長政・かしこ夫妻の旧宅跡に建てられたもので、映画資料の展示、映画上映などを行っています。

この時期は「東宝映画のスターたち~Part2」(10月27日まで)が企画されており、9月26日は、池部良と岸恵子の「雪国」(豊田四郎監督=東宝)が上映されていたので“これは見逃せない!”と、茅ヶ崎市在住の例の映画好きの友人と足を運びました。

川端康成氏(故人)原作の、あまりにも有名な小説「雪国」はこれまで、東宝と松竹でそれぞれ映画化されていますが、今回の東宝作品は、1957年(昭32)4月に公開されたモノクロ映画です。

ちなみに松竹作品(大場秀雄監督)は、1965年(昭40)4月に公開されたカラー映画、木村功と岩下志麻の「雪国」でした。

東宝の「雪国」が初公開された昭和32年といえば、私はまだ13歳の中学生であり、小説の「雪国」は読んでいても、映画における“思春期の衝撃度”としては、昭和31年公開の日活映画「太陽の季節」や「狂った果実」での石原裕次郎のほうが、よほど大きいものでした。

・・・といったようなことを思い出しているうちに映画が始まりました。

誰もが知っている小説の書き出し-「国境の長いトンネルを抜けると・・・」のフレーズを、映画の豊田「雪国」は冒頭、こんなシーンにしていました。

岸“駒子”の激しさと悲しさ

〈トンネルに入った汽車。憂いを帯びた池部“島村”良の顔。汽車の窓の曇りを手で拭くと、そこに浮かび上がった八千草“葉子”薫の姿・・・〉

いやはや、これは凄い出だしです。

日本画家の島村は以前、写生の旅でこの雪国を訪れ、逗留した温泉場で知り合った岸“駒子”恵子が忘れられず、再びこの地を訪れます。ときを経て今は芸者になっていた駒子との再会のシーン。コタツに入った2人が、以前の出来事を懐かしげに話しながら、指が君を覚えているよ、どっち(の指)だっけ、こっちだよ、などと言いながら、駒子が島村の左手の人差し指を噛みます。

冒頭のシーンとグッとくるこのシーンが立て続けに出てきて、見る側をスクリーンに引きずり込みます。そしてこれらは、島村と駒子の仲、それを憎しみを持って見つめる駒子の義妹・葉子を交えた三角関係を示唆するものでした。

島村が、どんなに駒子との仲を深くしても、東京に家庭を持つ男としては、あくまで“フリ”でしかなく、一方の駒子は、そんな島村相手に“結ばれぬ恋”と知りつつ、ダメだろう、でももしかしたら、と期待とあきらめの狭間(はざま)で、もがき、苦しみ、どうしようもない女の重さにのた打ち回ります。

島村は、葉子の「東京に連れて行って」の言葉に承諾するものの、その後、火災で葉子が顔に火傷を負って人前に出られなくなると、背を向けてしまいます。

結局、島村は、ここに来ないことこそが謝罪、と男の身勝手で雪国を後にします。男のズルさと女の悲痛なまでの無力さ・・・借金を背負う駒子はまた、葉子の面倒をも背負いつつ、一人とぼとぼと豪雪の中をお座敷に向かうことを余儀なくされるのでした。

この豊田「雪国」を見終わって思ったことは、ストーリー性よりも、モノクロが迫力を持つ雪国の情緒、女心をさまざまな角度から激しく、悲しく演じ切った岸“駒子”恵子の名演技、そして池部“島村”良との間で交わされる、川端文学ならではの言葉の妙、でした。

映画好きの友人は、木村功&岩下志麻の松竹作品版「雪国」を観(み)ていたとのことで最初、池部良&岸恵子の東宝作品版「雪国」は、日本的情緒面でどうだろうか? との違和感を覚えていたようですが、どうして岸“駒子”の激しく燃え、揺れる内面に感動、オレが島村だったらどうするか、と目を遠くに泳がせていました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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