あの日の悪夢から4年・・・!

思いもかけなかった「油断の敗戦」が、これほどまでの長~い道のりを歩ませました。

ひとつの負けが、その後を大きく左右してしまうプロボクシングの世界はつくづく、厳しいなァ、と改めて思い、そこに生きるボクサーたちの忍耐力、自立-この場合は自律といってもいい-気概には、頭が下がる思いです。

今や無敵のWBC世界バンタム級王者・山中慎介(30=帝拳)のV5戦(11月10日=東京・両国国技館)が決まり、このほど発表(相手は同級8位のアルベルト・ゲバラ=メキシコ)されましたが、ダブル世界戦のもうひとつは、待望の、といってもいいホルヘ・リナレス(28=帝拳)の世界挑戦となりました。

いったいリナレスは、あの日の悪夢から、どれだけの苦悩と試行錯誤を強いられ、我慢をしていればいつかまた、きっとチャンスが来るだろうことを信じて、この世界に身を置き続けていたのでしょうか。

17歳のリナレスがベネズエラから来日、帝拳ジム(本田明彦会長=東京・新宿区)に入門したのは02年のことでした。

同年12月のプロデビュー戦を1回45秒の“秒殺”KO勝利。以後、この“天才”“エリート”は、連戦連勝の無敗で07年7月、WBC世界フェザー級暫定王座を獲得(正規王座へ移行)し、08年11月には、WBA世界スーパーフェザー級王座決定戦に勝ち、2階級制覇を達成させました。

まさに日の出の勢い! です。そのスピードと華麗なるテクニックを聖地ラスベガスが放っておくはずがありません。オスカー・デラホーヤ氏が目をつけ、自身が主宰する「ゴールデンボーイ・プロモーション」と契約を交わす順風満帆ぶりです。

が、直後の09年10月10日、久々の日本での試合となった東京・国立代々木第二体育館でのV2戦、リナレスは、日本のファンにいいところを見せようと、自分を見失うほどに張り切り過ぎていました。

幅を広げた復活世界戦に期待!

ゴング! まだ1分もたっていないとき、挑戦者ファンカルロス・サルガド(メキシコ)の左フックがこめかみに飛んできました。ダウン。何が起きたか分からないまま、立ち上がったリナレスに浴びせられた連打の嵐。1回1分13秒、観客が声もなく静まり返る、信じ難いリナレスのTKO負け、初黒星でした。

あの日の悪夢から・・・実に4年です。その間、リナレスは8戦を行って今に至っています。8戦6勝2敗。2つの黒星は、WBC世界ライト級王座決定戦と同挑戦者決定戦に敗れたもの。このとき、リナレスはもう終わったのでは? という非情な声も聞こえてきたものでした。

私が久しぶりにリナレスの試合を見たのは、今年8月13日、ロンドン五輪男子ミドル級金メダリストの村田諒太(三迫)がプロデビュー戦を行った東京・有明コロシアムのリングで、でした。

ライト級8回戦に登場したリナレスは、ウエートを上げたこともあって迫力ある攻撃を展開、2回に相手のベルマン・サンチェス(ニカラグア)から2度のダウンを奪って追い詰め、3回に左から右のフックでTKO勝利を挙げました。

この勝利で健在をアピールしたリナレスは、周辺の“どうした?”の疑問符を払拭、帝拳・本田会長も「ホルヘは今、絶好調だよ」と満足そうな言葉を口にしていました。

それを受けて今回の世界挑戦が組まれたのでしょう。リナレスにとっては、2度目の3階級制覇挑戦となりますが、本人も言う「結構、長い時間がかかった」という中で得たものは何でしょうか。

何ごともそうですが、渦のど真ん中にいたときには見えなかったものが、そこから外れて俯瞰(ふかん)して見たとき、見えるようになる、と言われます。

それは故障など、さまざまな理由で一時、最前線を離れたボクサーが、以前よりも幅を広げて復帰してくることなどに象徴されます。

リナレスも、あの連戦連勝で華やかな声援に包まれていたときより、ガケっ淵に追い込まれて這い上がってきた今のほうが、いろいろなことが見えているのでは? と思います。

そして・・・我慢の4年を経て迎える「11・10」のリナレスには、そうしたことが感じられる、重厚な試合を見たいと思います。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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