とめてくれるな、監督さん!

9回160球を投げた翌日に登板!-プロ野球・楽天の“絶対エース”田中将大投手(25)の男気には、鳥肌が立ち、脱帽させられました。

巨人と渡り合い、3勝3敗で迎えた「日本シリーズ」の第7戦です。楽天が3点をリードした最終9回、7回から登板した好投のリリーフ・則本に代わって田中がマウンドに向かい、最後の1イニングを打者5人、2安打を浴びながらも2三振を奪い、無失点で締めくくり、チームの勝利に貢献しました。

「男気」という言葉は、辞書に「犠牲を払って人のために尽くしてやる気性(気立て)」(旺文社・国語辞典)とあります。

球団創設9年目にして初のリーグ優勝を飾り、初の日本一にも輝いた楽天が、この日本シリーズで観(み)る側に感動を与え続けたのは、震災で希望を失った東北に少しでも勇気を与えることが出来れば・・・という男気を、星野監督以下、全員が背負って戦っていたからでしょうし、その象徴が、常識ではまず、あり得ないだろう、田中の連投だったでしょう。

田中が出てきたとき、雨に濡れたKスタ宮城は、大歓声に包まれ、中継するテレビの映像は、球場に入れなかったファンのため、隣接する仙台市陸上競技場に設置されたパプリックビューイングで、球場内のファンに負けずに熱狂するファンの姿をも映し出しました。

そうした光景を見て思うことは、ああ、ここで展開されていることは、まぎれもなく「日本の野球」なんだなァ、そして、日本人はやはり「日本の野球」が大好きなんだなァ、ということでした。

日本の野球がまだ、本場・米国のベースボールにパワーとスピードで大差をつけられていた時代、シーズンオフに来日して親善試合を行った米国チームには、日本の野球に対して「ヤキュウ?」と首を傾げる場面が、結構多く、あったものでした。

そうしたときから、長い年月を経て日本の野球は、WBCで優勝したり、また昨今、MLBに移籍した日本人選手の大活躍があったり、むしろ、ベースボールがヤキュウに習う、といった逆転現象が起きてきたり、もしています。

日本人が大好きな「ヤキュウ」だった

確かにワールドシリーズを制覇したレッドソックスの立役者となった日本の上原浩治投手(38)の頑張りなど、米国選手には見られない「男気の守護神」といった気概がありますし、ベースボールの徹底した合理性が、ヤキュウが持つ、言葉は悪いですが、理不尽性に食われつつある傾向も感じられます。

が、田中のような連投は、スポニチ本紙のMLB担当記者に言わせれば、ベースボールでは絶対にあり得ない、ことだそうです。投手の投げる球数は、しっかりと管理されており、それはいかなる場面をも超えて最優先されるからです。

だから第6戦、田中の160球も普通、MLBではあり得ないことでしょうし、その翌日の第7戦での登板など、MLBに言わせれば、あきれ果てる、といったところだったでしょう。

田中は第6戦での敗戦に責任を感じ第7戦、ベンチ入りを志願、役に立てる場面があれば投げる、という覚悟を決めていた、とのことでした。

指揮官は「今の時代に・・・」と当然、あきれたことでしょうが、かくいう星野監督だって人のことは言えず、現役時代は熱く燃え、巨人戦ともなれば、打倒を目指して男気の戦いを演じてきた人です。田中の内面は、痛いほど分かっていただろうと思います。

最終9回の登板に関して、星野監督は後に「1点差なら出さなかった」と語っていました。そして「大丈夫だろうな」という念押しを3回繰り返し、田中の「大丈夫です」をしっかり聞き出してマウンドに送り出したとのことでした。

学生運動華やかなりしころ、東映映画の任侠路線が大人気だった時期がありましたっけ。全共闘は「とめてくれるな、おっかさん、背中のイチョウが泣いている」と酔い、高倉健は「義理と人情をハカリにかけりゃ、義理が重たい男の命」とドスのきいた声を響かせ、人々をしびれさせました。

男・星野が、男・田中の“殴りこみ”(?=登板です)に目をつぶったのは、田中の胸中に、前日チームにかけた迷惑を返したいという“筋”を感じ、何とか役に立ちたいという気概を感じたからでしょう。

そうです。「巨人さんに恨みはありませんが、義のために死んでもらいます!」-。

これはまぎれもなく「ヤキュウ」の世界です。そして日本人は、男気が溢れる、そうした「日本の野球」が大好きなのですね。

あのころ・・・映画館を出た観客が皆、高倉健になっていたように、この夜、球場を後にして帰路についた人々は皆、田中のカッコ良さに酔い、オレもああなりたい! と思ったことでしょう。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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