引き際に美学があるなら・・・

〈パーセンテージ?・・・というと、ウ~ン、50パーセント・・・今のところ、ハーフハーフです〉

ソチ冬季五輪の日本代表勢が一斉に帰国した2月25日、日本外国特派員協会(東京・千代田区)で記者会見したフィギュアスケート女子・浅田真央(23=中京大)の今後(進退)に関する発言は、一線級アスリートの胸中を素直に表していて、さまざまなことを考えさせられました。

4年に一度の五輪に臨む競技者たちは、誰もが高みを目指し、今度こそが自分のしてきたことの集大成、最後と思って退路を断ち、全力をぶつけようとします。

その覚悟は、例えばプロボクシングの世界にある、やっとめぐってきた世界挑戦に“負ければ辞める”という強い覚悟を決め、自分を奮い立たせるのと同じことです。

浅田もソチ冬季五輪を一年後に控えた昨年春、この五輪を集大成としたい旨を口にし、周囲には、五輪後には“引退かも”とその可能性を強く漂わせていました。

第一線で活躍するスポーツ選手にとって「引き際」というものは必ず訪れ、避けては通れないものですが、その決断は相当に難しいものです。

体力の限界、気力の衰え、後進の台頭などなど-。

岐路に立った自分を冷ややかに見つめられる、もう一人の自分がいないと、なかなか踏み切れない問題だけに、揺れる心との戦いはやっかいです。

自分で自分に断を下す勇気

プロボクシング界を例に取るなら、元世界王者の浜田剛史氏(帝拳プロモーション代表)は、自らの経験を踏まえ「悔いを残しているかいないか」が、引退を決断するひとつのモノサシとなるでしょうね、と言います。

長い間、多くのボクサーたちに接してきた帝拳ジムのマネジャーを務める長野ハルさんは、こう言いました。

〈負けたとき、負けた理由が分かって、それが希望につながるなら「再起」すると思います。つながらなければ「絶望的(=引退)」となるのではないですか〉

ジャンルが違うし、競技性も異なるので何とも言えませんが、浅田の場合はどうだったでしょうか。

最初のショートプログラム(SP)で浅田は、自ら「取り返しがつかないことをしてしまった」というほどの失敗をしてしまいました。(この言葉を聞いた人々は皆、マオちゃん、頑張れ! と涙腺を緩めてしまったのではないでしょうか)

が、この失敗は“絶望”につながるものではありません。なぜなら、持てる力を出し切った結果の低迷、ではなかったからです。出し切れなかった不満が、もう一丁! を生むことになることは、当たり前のことです。 

その証拠に開き直って臨んだフリーで最高の演技をやってのけた浅田は「この構成こそ、私がやりたかったこと」と達成感に満ち溢れ、自らこみあげる涙を隠しませんでした。

つまり、失敗はしたものの、SPの内容に“身を引く理由”などはなく、完ペキとなったフリーの演技を最後の花道とする選択肢はあるもののの、しかし、浅田はまだ、23歳です。燃え尽きてしまうには早過ぎます。

だから今、胸中は「ハーフハーフ」なのでしょう。

とはいえ、現役を続けることは、そこからまた、苦行が開始されることを意味します。

浅田にはまだ、世界選手権(3月26日開幕=さいたまスーパーアリーナ)が残っており、その後で自分と向き合いたい、としました。

浅田に限らず、多くの競技者たちが、ある時期にさしかかれば、そうしたこととの内面の戦いが生じてきます。

そして・・・もし、引き際に美学があるとしたら、それは煩悩にのたうつ自分を始末する勇気の出し方、にあるのかもしれません。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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