映画「事件」を観て-

私の好きな場所のひとつに「鎌倉市川喜多映画記念館」(神奈川県鎌倉市雪ノ下)があります。

この記念館は、映画の発展に大きく貢献した川喜多長政・かしこ夫妻の旧宅跡に、鎌倉市の映画文化の発展を期して開設されたものです。

ここの4月上旬から6月下旬にかけての企画は「女優王国・松竹大船撮影所物語~名作を生んだ夢の工場」と題し、鎌倉ゆかりの松竹大船撮影所が生み出した数々の名作を上映してくれるものでした。

過日、配布されたパンフレットを見ていると、公開時(1978年=昭53=製作・公開)話題となった大岡昇平原作の「事件」(野村芳太郎監督)を上映しており、この作品で「清純派を脱皮した」と評された松坂慶子を観(み)たかったこともあり、映画好きの友人と鎌倉に向かいました。

1952年(昭27)年7月20日生まれ。現在61歳の松坂は、最近、相変わらずの美しさを保ちつつも、年相応に豊かになった体格を揺すらせて、コミカルなところも見せてくれていますが、この「事件」が製作された当時は25歳です。

駅前スナックの美貌のママ役として“挑戦的”というか“戦闘的”というか、真紅のルージュとか真紅のマニキュアとかが似合う、とがった風貌は、好みによりますが、なかなかのもの、と感じました。

神奈川県の相模川沿いの雑木林の中から、若い女性の刺殺体が発見されたところから物語は始まります。

その女性は、厚木(神奈川県)の駅前でスナックを営んでいた松坂“坂井ハツ子”慶子と判明、数日後、容疑者として未成年の19歳工員、永島“上田宏”敏行が逮捕されます。

法廷で暴かれる隠れた人生模様

そこから舞台は法廷へと移行。検察官の芦田“岡部検事”伸介と弁護人の丹波“菊地弁護士”哲郎の息詰まる攻防により、単純な刺殺事件と思われた出来事が、次第に複雑な三角関係、それも松坂“ハツ子”の妹である大竹“坂井ヨシ子”しのぶによる姉妹の愛憎劇が表に浮かんできます。

法廷ものの面白さ、あわせ持つ残酷さ、は、裁判長の佐分利“谷口裁判長”信を含む裁く側が、それぞれに真実を追求する、というより、証拠の積み重ねにより、真実の輪郭に迫るうち、隠されていたものが容赦なく浮かび上がってくる、暴(あば)かれる、というところにあるのかもしれません。

大竹“ヨシ子”は、既に永島“宏”の子供を身籠(ごも)っており妊娠3カ月。それを知った松坂“ハツ子”が、中絶を迫ったのは、永島“宏”への愛情と妹・大竹“ヨシ子”への嫉妬・・・。

その末に-。

雑木林での刺殺事件に、果たして永島“宏”の「殺意」はあったかどうか、の展開。調べはやがて、永島“宏”が「牽(けん)制のために」構えた登山ナイフに松坂“ハツ子”が自ら身を投げ出した、という動きが濃厚になり、佐分利“谷本裁判長”は、死体遺棄のみの犯罪として、判決の言い渡しを「2年以上4年以下の懲役」とするのでした。

この「事件」を解説した(公開当時の)パンフレットには、こう記述されていました。

〈犯罪は、事件としてわれわれの運命を変える。それは罰せられる被告だけでなく、裁判官、検察官、弁護人、そして証人とその家族、つまり事件にに関わりを持つ、すべての人間の隠された人生を暴いていく〉と-。

最後のシーンは、膨らんだお腹をさすりながら一人道を歩く、大竹“ヨシ子”の姿でしたが、その“してやったり”の顔に観る側は、苦笑いとならざるを得ませんでしたが・・・。

それにしても、ナイフに向かって自ら身を投げる松坂“ハツ子”の、希望をなくした寂しげな顔にはシビれました。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
ランクアップにご協力下さい
↓↓↓↓クリック↓↓↓↓
QRコード
QR