警戒し尽くされた左で倒す凄さ

どのジャンルにも共通して言えることですが、スポーツ各界でも、頂点に立ったとき、喜びは一瞬、直後から“打倒”のターゲットに立たされ、これまで以上に厳しい日々が始まります。

特にプロボクシング界は、その傾向が強く、元世界王者の浜田剛史氏(帝拳プロモーション代表)は、こう言います。

〈世界王座を獲得した瞬間から、新王者は世界中のチャレンジャーの標的にされ、徹底的に研究され始めますね〉

つまり、新王者に求められるのは、いつまでも王座を奪ったときのままではない「進化」であり、それなくして多くの防衛などはあり得ないわけです。

4月23日、大阪城ホールで開催されたダブル世界戦。WBC世界バンタム級王者・山中慎介(31=帝拳 )のV6達成につくづく、それを感じました。

9回開始早々、右を放った後のワンツー、鋭く踏み込んで、まるでサンドバッグに突き刺すように放ったボディーへの左ストレート。これで試合を決めた(9回11秒 TKO勝ち)山中が、リング上での勝利者インタビューに答えました。

〈左、左と、これだけ警戒されている左で倒せたことは良かった。やはり強い左なんでしょう〉

挑戦者のシュテファーヌ・ジャモエ(24=ベルギー)は、タフな相手でした。ベルギーで初の世界王者を狙う意気込みも、しつこい粘りに拍車をかけていたでしょうか。

山中は序盤の2回、顔をしっかり固めた相手のガードの隙間に左ストレートを突き刺し、最初のダウンを奪います。

左を生かすために欠かせない右の工夫

帝拳ジムの先輩世界王者である浜田氏に言わせると「早い回にダウンを奪ったことで、その後、狙いすぎ、力みすぎていた」とのことでした。

確かに4回終了時の公開採点では、3人のジャッジとも「40-35」と山中にフルマークをつけ、山中自身も、力の差、格の差を見せつけながらも、しつこく前進を続けて接近戦を挑むジャモエを攻めあぐむ場面も結構、ありました。

とはいえ、8回に左ストレートをボディーへ、顔へ、と放って2度のダウンを奪い、9回の決着まで計4度のダウンは、すべて左で決め、山中の“神の左”は健在、大阪のファンを喜ばせました。

が、それ以上にある意味、感動的だったのは、冒頭に記した、これだけ警戒されている、それこそ世界中のチャレンジャーが、これだけ研究し尽くしている「山中の左」を結局、最後には決めてしまう凄さです。

ジムの先輩である元世界王者の西岡利晃氏は、山中の左を「予想以上に伸びてくる左、威力的には、捻じれて入ってくる“コークスクリュー”の凄さでしょうね」と話していました。

浜田氏は、西岡氏の現役時代もそうでしたが「左を生かすための右」を強調します。

威力のある決め手の左を警戒されるのは当たり前であり、その左を生かすには、右をどれだけ効果的に使えるかにかかってくる、ということです。

まさに、昨日の山中の左は、今日の山中の左ではないぜ! といったところであり、敗れたジャモエにしてみれば「右も強かった」ということなのです。

これで世界戦、5試合連続KO勝利です。進化する山中に“敵なし”といった感じですが、山中の目標には「ラスベガス」があり、それが達成されるまでは負けるわけにはいきません。

このクラスには、WBAスーパー王者のアンセルモ・モレノ(パナマ)やIBF王者のスチュアート・ホール(英国)、さらにWBO王者には亀田和毅(亀田)らが名を連ねます。

彼らとの統一戦などがラスベガスで行われることになれば、山中もまた、西岡に続く“レジェンド”となることでしょう。

頑張れ! ですね。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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