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“既成”の壁に阻まれた破竹の勢い

若さが持つ“勢い”は、世代交代の旗をひるがえし、常に現状の打破、新時代の構築へと、怖いもの知らずに向かいます。

プロ6戦目の日本人最速記録で世界の頂点に立った、プロボクシングのWBC世界ライトフライ級王者・井上尚弥(21=大橋)もそうでしょうし、国内女子プロゴルフ・ツアーで15歳293日の最年少優勝記録を樹立したアマチュアの勝みなみ(鹿児島高1年)もまた、そうでしょう。

・・・が、そうした“勢い”の前に立ちふさがる“既成”という名の壁は、ときにして動かしがたく、また、とてつもなく重く、彼らの行く手を阻みます。

5月7日(大阪・ボディメーカーコロシアム)に行われたプロボクシングのIBF世界フライ級タイトルマッチに、勢いだけではどうしようもない、動かしがたい厚い壁を見た思いでした。

元2階級制覇王者の井岡一翔(25=井岡)が、王座を返上してチャレンジャーに戻り、井岡家の悲願でもある3階級制覇に挑みます。相手は1979年12月生まれ、34歳のアムナト・ルエンロン(タイ)です。

井岡とは9歳の差。2人の戦いはどうだったでしょうか。試合を振り返ってみましょう。

ゴングが鳴らされて初回-。

アレレ? と思ったファンは多かったのではないでしょうか。井岡が高いガードで顔を固め、手出しをせずに様子を見ているのです。

対するアムナトは、パワフルな右をうならせ、リーチの差9センチを生かして自分の距離を取り、井岡の接近に対しては、アッパーを突き上げます。

何もさせてもらえなかった屈辱!

井岡の高いガードは、こうしたアナトムへの対策だったとは思いますが、結局この態勢が、井岡の本来の姿である柔軟性、左ジャブを起点とする多彩なコンビネーションを阻んでしまうことになりました。

この形で思い出されるのが、かつての亀田興毅(亀田)です。ジャブがなく、高いガードで顔を固めて前進、接近してフックの形・・・。この態勢には限界があり、亀田興には、ジャブの重要性を多くの専門家たちが指摘したものでした。

井岡が“亀田化”してしまっては、言葉もありません。

王者の距離感に惑わされ、強引に入ればアッパーが放たれ、固いガードで手数も出ず、これといった打開策もなく、ズルズルと後半戦に入ってしまいました。

相手のスタミナが消耗する後半戦は、井岡にとっては、反撃するチャンスでもありましたが、このパターンは延々と続き、終盤は足を使い、逃げに入ったアムナトの巧みなクリンチ、機を見てスイッチと、元ムエタイ王者の老獪(ろうかい)という言葉がピッタリの攻防の前に、若い井岡の勢いは、まったく意気消沈してしまいました。悔しい判定(1-2)負け・・・。

プロ7戦目の最短記録(当時)での世界王座(WBC世界ミニマム級)奪取。八重樫東(大橋)との死闘でWBC&WBAの世界ミニマム級王座統一。さらにプロ11戦目の最短記録で2階級制覇(WBA世界ライトフライ級王座)を達成。井岡の破竹の勢いの前には、確かに困難のほうが道を開けている状態でした。

これまでは・・・です。

アナムト戦で何もさせてもらえなかった井岡は、何を感じたことでしょう。クリンチばかりでヤツの戦い方は汚いじゃないか! となじったところで、世界にはいろいろなファイターがいて、これもまた、世界の戦いなのです。

こんなところで終わってもらうわけにはいきません。アナムトへのリベンジ戦も視野に入れ、この経験を貴重なものとして再起、なお幅を広げてほしいもの、と思います。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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