延長50回の激闘に思うこと

“もう一つの甲子園”と呼ばれる軟式野球の全国高校選手権で繰り広げられた中京(東海・岐阜)vs崇徳(西中国・広島)の準決勝戦、実に4日間に及んだ延長50回の勝負を、皆さんはどう感じたことでしょうか。

友人が言いました。

〈いかにも高校野球!って感じだよね~。それも点が入りにくい軟式のね〉

別の友人が言います。

〈そうだね。3日間無得点。49回も両チーム、点が入らないことにビックリだよね。でも高校野球らしい激闘は、感動していいんじゃないの〉

さまざまな受け取り方があり、さまざまな意見があって当然でしょうね。なにしろ近年のスポーツ各界の、特に五輪採用種目などの最重要テーマは、柔道にしろレスリングにしろ、テキパキした早期決着であり、そうした「枠」を外れたダラダラには“指導!”が容赦なく突きつけられる時代に入っているのですから。

今回の激闘も、ともに一人で4日間を投げ抜いた中京・松井大河投手の709球、崇徳・石岡樹輝投手の689球、腕も折れよの力投は、称えられるべきものであっても、大会を管轄する日本高野連側にしてみれば今後、高校生の健康管理面で対策を講じざるを得なくなる問題となりそうです。

早期決着が求められる傾向の中・・・

延長戦になった場合、タイブレーク制(走者を置いた状態で始め早期決着を図る)を導入するなどの課題もまた、この試合で再びクローズアップされそうです。

が、一方、そうしたものを取り入れれば、1979年の夏の甲子園で展開された、あの箕島(和歌山)vs星稜(石川)の延長18回の死闘など、高校野球史に残る伝説的な名勝負のようなものが今後、失われてしまうリスクを覚悟しなくてはならず、運営サイドにしてみれば“痛し痒(かゆ)し”といったところでしょうか。

これらの問題との比較は無理ですが、以前、総合格闘技の試合でテレビ放映を軸とする「格闘技興行の枠」を外れた試合形式が求められ、話題になったことがありました。

「PRIDE」のリングが華やいでいた2000年5月、グレイシー柔術のホイス・グレイシー(ブラジル)が“グレイシー・ハンター”の桜庭和志(高田道場=当時)と対戦したときです。

この試合に臨むにあたり、ホイス陣営が、1ラウンド15分の無制限ラウンド、判定決着なし、のルールを求めたのです。

格闘技を興行として観客に見せる大会主催者側にとって、ルールによる制約などの「枠」は欠かせませんが、この“常識”にホイス陣営が、果たし合いの論理を突きつけたのです。

つまり、柔術本来の姿と競技化の真っ向対立! この要求を実験的に受諾した大会主催者は、選手の安全管理、テレビの放送時間枠など、諸問題を背負い込む、苦渋の決断となりました。

ホイス陣営の「私たちは、日本の柔術家から教えてもらった柔術で強くなった」という言葉は、言外に競技最優先化されたスポーツ柔道への批判を含んでいたかもしれません。

注目されたこの試合は、6回終了TKOで桜庭が勝ちました。

が、勝負の結果はともかく、無制限で判定決着なし、というホイス陣営の言い分は、ルールに縛られた「枠内」の試合を嫌ったものであり、その意味では、今、スポーツ各界で盛んな、早期決着を求めるルールに警鐘を鳴らしていたのかもしれません。

ともあれ、競技の本質を、行き過ぎたルールで曲げるようなことは避けたいものです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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