感動的だった「最善を尽くした」敗戦

圧倒的に不利! さまざまな角度から見て勝ち目がない!

こんな試合に臨むとき、当該選手は何を考え、何をどう対処するのでしょうか。

9月5日に行われたプロボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチ(東京・代々木競技場第二体育館)での同級王者・八重樫東(31=大橋)です。

この試合まで39戦全勝(33KO)を誇る“怪物”ローマン・コンザレス(27=ニカラグア、帝拳 )を迎え撃つ八重樫に対する下馬評は「圧倒的不利!」と容赦のないものでした。

試合前の会場で、スポニチ本紙の世界戦評論でおなじみの元世界王者・浜田剛史氏をつかまえ、八重樫がどういう戦法を取るかどうか、予想を聞いてみました。

浜田氏「(八重樫の)勝機を探すとすれば、打ち合わずに下がりながら、軽いパンチでもいいから、とにかく手数を出してポイントを稼ぎ、判定に持ち込む戦い方でしょうね。しかし、これも最後まで続けられれれば、の話ですが・・・」

“ロマゴン”が強打を武器に出てくるのは分かっています。それに対して八重樫が、打ち合うのか、足を使って離れるのか、どちらを選択するのか、は勝負のカギを握る大事なことです。

とはいっても、試合に備えた日々の練習の中で“参謀”の松本好二トレーナーともども、あらゆる角度からさまざまな策を練っており、しかし、それらから何を生かすかは、やはり、試合が始まって相手の出方を待つしかないことでしょう。

自らが選んだ打ち合い

そして・・・試合開始!

注目の初回。八重樫は足を使って距離を取り、ポンポンと軽いジャブを放ち、浜田氏が指摘した戦い方を選択したかに見えました。

が、2分過ぎ、出てきたゴンザレスと打ち合い、早くも応戦の形となります。

初回の攻防-。八重樫は何を考えたことでしょうか。粘って1ポイント差でも勝ちは勝ち。引き分けでも防衛は防衛。逃げるか、打ち合うか。初回の3分間、前半と後半の戦い方の違いに方向性が揺れているようにも見えました。

が、結局、八重樫は2回以降、相手の土俵に飛び込んでいきます。

そうなれば、ゴンザレスにとっては、もっともやりやすい戦いとなるわけですが、ここでしっかりと確認しておかなければならないことは、この形は八重樫自身が自分の意思で選んだものであり、決して相手に巻き込まれたわけではない、ということです。

公開採点では4回終了時、2人がゴンザレスにフルマークの40-35、1人が39-36、8回終了時は、1人がゴンザレスにフルマークの80-71、2人が79-72、八重樫には応戦を選択した厳しい結果が突きつけられました。

その結果は、9回に連打を浴びて3回に次いで2度目のダウンを喫し、立ち上がろうとしたところをレフェリーが止め、TKO負けとなりました。

それにしてもゴンザレスは、スキがなく、幅も広く、強いですね。「攻防一体」という言葉はよく聞きますが、打たせたら強く、守らせたら巧い、という表現がピッタリの感じでした。他の選手がこの選手とやりたくない気持ちはよく分かりますね。

八重樫の負けは負けとして浜田氏は、その戦い方を「昔のボクシングを見た感じ」と言って“あっぱれ!”とほめていました。

どう考えても勝機の薄い試合に臨むにあたって八重樫が選択した「最善を尽くしての敗戦」は、やはり“激闘王”の面目躍如だったなァ、とちょっと胸が熱くなってしまいました。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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