映画「幕末太陽傳」の面白さ

映画好きに加えて落語に造詣が深い友人から「『幕末太陽傳』はどうだい?」と声がかかりました。

私が住む藤沢市(神奈川県)の、JR東海道線「藤沢」駅から下って3駅目が「平塚」駅です。同市内にある映画館「シネプレックス平塚」で、過去の傑作を選び、全国展開で上映する「新・午前十時の映画祭」を行っており、目下、上映中なのが「幕末太陽傳」なのでした。

日活製作のこの映画は、1957年(昭32)7月に封切られています。公開時、私は13歳にあと1カ月の年齢とあって、映画館では観(み)ていませんが、後にテレビのリバイバル上映か何かで観た覚えがあるものの、余り記憶に残っておらず、いいネ、行こうか、と出向きました。

道すがら、友人のザクっとした説明によると、この川島雄三監督の作品は、落語の「居残り佐平次」「品川心中」などから、人物や場面を拝借しているんだよネ、ということで、フ~ン、落語を知っていればなお、面白くなるかもネ~、など話し、多少の先入観を持ちつつ、入場料1000円で椅子に座りました。

・・・で開始です! モノクロ画面の導入シーンは、東京・品川区の八ツ山陸橋あたりから東海道線を俯瞰(ふかん)しつつ、旧品川特飲街(昭和32年当時)の風景を映し出して行きます。そして・・・時代はさかのぼり、東海道五十三次の最初の宿場町・品川宿の遊郭「相模屋」へ-。(この導入シーンは良かったですねェ)

ときは江戸末期、あと5年で明治維新となる文久2年(1862年)の出来事。この「相模屋」を舞台にせわしく立ち回る遊女や客がコミカルに、あるいはシニカルに描かれていきます。

川島世界の凄さに触れた110分!

いやはや、スゲー、達者だねェ~、と感心させられたのが、居残り佐平次のフランキー堺でした。

ある夜、仲間3人と「相模屋」に繰り出したフランキー“佐平次”堺が、芸者を上げ、飲めや歌えのドンチャン騒ぎを繰り広げ、豪遊の後、仲間を帰らせ、自らは文無し! を打ち明けて店に居残ります。

そこで下働きなどをしつつ、しかし、この男はめげることなく、相模屋中を駆け回りながら、とんでもない異能を発揮します。

女郎たちが、言い寄る客への説得用“恋心証明書”? ○○サマ命! とする恋文の代筆業、心中の相談係、さらには駆け落ちの手助けも・・・。そのたびに口八丁・手八丁、手間賃の請求を絶対に忘れず、あげく「相模屋」の2枚看板、女郎の左“おそめ”幸子、南田“こはる”洋子の、こちらはホンモノの恋心をくすぐってしまう、食えない男の面目躍如です。

フランキー“佐平次”の標的はまた、やはり「相模屋」に長逗留している勤王の志士、石原“高杉晋作”裕次郎に及びます。ここに集まる志士たちは、建設中の異人館の焼き討ちを目論んでおり、最初、チョロチョロ動き回るフランキー“佐平次”を幕府のスパイか? と怪しみますが、どうしても手に入らない異人館の見取り図をフランキー“佐平次”が手に入れ、石原“高杉晋作”をも手玉に取って長逗留の宿代や駄賃をせしめてしまいます。

さらに・・・父親の借金のカタに「相模屋」で女中として働かされている芦川“おひさ”いづみが、ついに女郎として店に出されそうになる危機に瀕(ひん)して「相模屋」の放蕩息子との駆け落ちをもフランキー“佐平次”は、手伝ってしまうに至ります。

「相模屋」という遊郭を舞台に、そうしたさまざまな出来事がテンポよく、スピーディーに、観る側を飽きさせずに展開され、フランキー“佐平次”の歯切れのいい“江戸っ子”弁も小気味よく、あっという間の110分でした。

そして、あの最後の場面-。

南田“こはる”に熱を上げる千葉のお大尽、市川“杢兵衛”俊幸にフランキー“佐平次”は「こはるは死んだ」と偽の墓地に案内、バレて罵る市川“杢兵衛”の声を背にフランキー“佐平次”は、品川の海沿いの道を一目散に走って逃げるシーンで「エンド」となります。

江戸から明治へと時代が変わる節目。幕末の品川色街の様相。映画が公開された昭和32年は、翌33年に売春防止法が施行され、これまでの合法的売春営業地域の灯が消えました。こちらも時代の変わり目です。

映画の中の「相模屋」は、実在する旅館であり、実際に高杉晋作らが逗留した、とも言われているそうですが、そうした時代背景とともに描かれた川島雄三世界の面白さに大満足の形で映画館を出た次第でした。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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