2020年東京五輪開催への課題

1964年(昭39)10月10日の東京五輪開催から、この10日で節目の「50年」を迎えることになり、2020年の2度目の東京五輪開催を視野に入れた、さまざまな回顧がなされています。

テレビ各局もそれぞれに趣向を凝らした五輪関連の特番を用意しているようですが、そんな中、ああ、やっぱり出してきたな、と思わせたのが、フジテレビで10月11日(午後9時~)に放送されるドキュメンタリー・ドラマと銘打った「東京にオリンピックを呼んだ男」です。

私の書棚に一冊の古ぼけた、もう何回も読んで表紙がボロボロになってしまった文庫本「祖国へ、熱き心を~東京にオリンピックを呼んだ男」(高杉良著=講談社文庫)がありますが、その男=日系二世のフレッド・ワダ氏(和田勇氏=2001年2月没)は、最初の東京五輪招致に多大な功績を残した最大の功労者でした。

ちなみにテレビでは、その主人公・和田氏を大沢たかおが演じます。

同書の解説(筆者=佐高信)で著者・高杉良の和田氏に関する記述がこうありました。

〈1990年4月23日付の「産経新聞」で、高杉はこう語っている。『書きながら、泣いた場面もありました。(略)戦後すぐに“日米友好の架け橋”となった人がいたんです。(略)スポーツの面だけがクローズアップされていますが、和田さんこそ“現代日本の恩人”・・・(略)』〉

実業家の和田氏とスポーツの最初の関わりは、日本の敗戦から4年後の1949年夏、米ロサンゼルスで開催された「全米水泳選手権」に日本から古橋広之進、橋爪四郎ら6選手が出場することになったことから始まります。

日本選手団は渡米後、旧敵国とあって待遇は悪く、そんな中、和田氏は自宅を宿舎として提供、家族ぐるみで遠来の日本選手団に暖かい手を差しのべています。

あの時の熱さをどう甦らせるか?

そんな好意に応えるように古橋&橋爪は、1500メートルで大健闘を演じ、世界新記録で優勝した“フジヤマのトビウオ”古橋は、レースの優勝もさることながら、それ以上に敗戦で打ちひしがれていた日本人に勇気と希望を与えることになりました。

同書の解説に大会後、和田氏邸で行われた内輪の祝賀パーティでの和田氏の挨拶が、こう記述されています。

〈大会が無事に終わり、皆さんが大変活躍されて、こんな嬉しいことはありません。先ほど監督さんが、新聞社との電話で、在留邦人が理解してくれたお蔭だ、と言うてくださいました。しかし、本当にお礼を申し上げなければならないのは、わたしたち日系人なんです。古橋さんたちの活躍によって、ジャップと呼ばれていたのが、一夜にしてジャパニーズとなり、みんな胸を張って街を歩けるようになりました。(略)〉

こうした感動が、敗戦からの復興の象徴としての東京五輪開催に向けて和田氏を熱くさせます。

1958年、日本は東京五輪招致に向けて本格的に動き出し、それを受けて和田氏は、集票のカギを握る中南米各国との交渉の旅に出掛けます。旅費は自己負担-。

中南米各国の情勢は、敗戦国の日本より、ほとんどが経済的に恩恵をこうむる米国に傾いており、説得の旅は、容易ならざる事態だったろう、と思いますが、結果として、この和田氏の熱意が功を奏して東京開催が決定しています。

1964年10月10日、東京五輪の開会式に臨んだ和田氏の心境を、同書はこう記述しています。

〈和田は、涙がこぼれてならなかった。『日本はこれで一等国になったのや』(略)『戦争に敗れて四等国になったが、よう立ち直った。日本人は皆、よう頑張った』(略)〉

東京五輪開催は、日本人の心を変え、東京の景観をも変えた、と言われています。

海外からの客に備えたホテルの建設、東海道新幹線の開業、首都高速道、地下鉄の建設・・・そして何よりも、敗戦からの復興、戦後は終わった! との意識を日本人の心に実感として植えつけたイベント。それは和田氏が、古橋の激闘で“ジャッブからジャパニーズ”と変わったことと同等のものだったかもしれません。

・・・そして2020年。2度目の東京五輪開催-。

最初の東京五輪開催を支えた、日本国民全体が持っただろう復興への熱意に変わる何かを再び、新たに持てるかどうか、あのときの熱気をどう甦(よみがえ)らせるか、それが大きな課題となりそうです。
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プロフィール

佐藤 彰雄

Author:佐藤 彰雄
◆生年月日 
1944年(昭19)8月生まれ
◆出身 
神奈川県
◆プロフィール
スポーツニッポン新聞社在職中は運動部記者として大相撲、野球、ゴルフ、ボクシング、格闘技などを幅広く取材・執筆。
現在はフリーの立場でボクシングを中心に取材活動を続けている。
ゴルフのマスターズなど海外取材経験も豊富。

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